ケイチャン
【2023年98冊目】
今回ご紹介する一冊は、
金原ひとみ 著
『腹を空かせた勇者ども』です。
もくじ
【感想】「分かり合えない母娘でも、寄り添え合える」
仲良く食卓で団らんする
中２のレナレナの家族
でもママは不倫中なの・・
それでも朝には腹が減り
元気いっぱいで登校する
そんな勇者の物語です
ママの強烈な個性に、圧倒される
成績はイマイチだが
部活のバスケを熱心に取り組む
明るく元気で、友達が大好きな
中２女子のレナレナ
しかし家庭が歪なの・・
ママが彼氏を作ってしまった！
深刻な夫婦喧嘩の末に
パパが不倫を公認することで
いちおうの安定がもたらされるが
え！公認で不倫なんて・・いいの？
第２の主人公と言うべき
レナレナのママ
バリバリに働くキャリアウーマンで
しかも料理に手抜きはしない
ガンバル母親です
しかし、その感覚が普通ではない
理性的で論理的な思考をする
醒めた人間
自分の恋愛と、家族と幸せを
冷静に天秤に乗せた結果が
パパ公認の不倫生活、なのでした
不倫なんて許せない！
なんて言うなかれ
ママは自分の幸せを優先しつつも
最大限に娘を大切にしていて
その気持ちはレナレナにも
伝わっています
だからって、許すことは出来ないよ！
いっぽうイマイチ存在感のないのが
レナレナのパパ
サレ夫なのに、どこか他人事
自分の殻に閉じこもっていて
家族から距離をとっているようです
真剣味あるママと
どこか緩いパパの
対比が断絶感を表しています
川を挟んで対岸から
会話をしているよう
そんなレナレナの家庭ですが
中学生には中学生の世界がある
それが、学校です
学校に行けば大好きな仲間がいる
弾むような気持ちで
学校に向かうレナレナ
親友の勉強が苦手なヨリヨリや
帰国子女のミナミとの
女子トークが面白いんだ
鬼才、金原ひとみの真骨頂と言うべき
スピード感あふれる会話パートと
高低差ある感情描写が、素晴らしい
僕は金原ひとみの文章がホント好きで
噛みしめるように、読んでしまいました
母親の不倫
友人の悩み
そして
自分の気持ち
外からも内からも
揺さぶられて
子供部屋のベッドから
起こされているような、レナレナ
ですが、暖かい母や友人に囲まれて
前を向いて駆けていくような
レナレナの姿が眩しい
青春小説でした
作品紹介（出版社より）
私ら人生で一番エネルギー要る時期なのに。ハードモードな日常ちょっとえぐすぎん？――陽キャ中学生レナレナが、「公然不倫」中の母と共に未来をひらく、知恵と勇気の爽快青春長篇。
皆が違って複雑で、困難がデフォルトの今を見つめる、
幼くタフで、浅はかだけど賢明な、育ち盛りの少女たち。
『蛇にピアス』から20年、『マザーズ』から12年を経て、
著者が辿り着いた新たなる世界。
作品データ
タイトル：『腹を空かせた勇者ども』
著者：金原ひとみ
出版社：河出書房新社
発売日：2023/6/14
作家紹介
金原ひとみ（かねはら・ひとみ）
1983年東京生まれ。
2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。
2004年、同作で第130回芥川賞を受賞。ベストセラーとなり、各国で翻訳出版される。
2010年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。
2012年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。
2020年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。
2021年『アンソーシャル ディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。他『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『ミーツ・ザ・ワールド』等がある。
金原ひとみの作品紹介
『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』2008/10/31
『ハイドラ』2007/04/01
『憂鬱たち』2009/09/29
『マリアージュ・マリアージュ』2012/11/30
『軽薄』2016/02/26
『クラウドガール』2017/01/06
『星へ落ちる』2007/12/05
『オートフィクション』2006/07/05
『AMEBIC 2005/07/06』
『持たざる者』2015/04/24
『アッシュベイビー』2004/04/27
『TRIP TRAP トリップ・トラップ』2009/12/25
『fishy』2020/09/07
『パリの砂漠、東京の蜃気楼』2020/04/23
『マザーズ』2011/07/01
『ミーツ・ザ・ワールド』2022/01/05
『アタラクシア』2019/05/24
『アンソーシャル ディスタンス』2021/05/26
『デクリネゾン』2022/08/26
『腹を空かせた勇者ども』2023/06/14