『悪い血』鈴木涼美 あらすじと感想|自分が幸福になると思えないんです


【2026年110冊目】
今回ご紹介する一冊は、
鈴木涼美 著
『悪い血』です。
自分の過去や人生の選択について深く考えたい人
あらすじと感想
私は幸福になってはいけない
罰せられるべきなのだ・・
奔放に生きてきた女性が自らの半生を振り返る
悪夢のようなひと夜を描く物語です
悪いのは私なのか?それともこの世界なのか?
クリニックで妊婦検診をうける女性が主人公です
しかし赤ちゃんができて喜ぶようすがないのが気になるところ
逆に戸惑い苛立ちこの状況に不安を抱いているよう・・なぜ?
私の血は汚れている・・
採血された自分の血が検査されることを恐れる、私
その夜、真夜中に目覚めた彼女は衝動的に家を出るのだ
・・検査される前に血液を取り戻す!
クリニックに向かい深夜の街を歩く女性は夢と現実の狭間をさまようのだ
主人公の茜さんは40代の女性です
帰国子女で高校を中退した後は風俗嬢として働き
現在はフリーの通訳者をしています
・・若い頃は無茶苦茶してました
そんな彼女は『自罰』のイメージを抱いています
幸せになるのが怖い、なぜならその幸せを失うかも知れないから
学生の頃から常に間違った選択を繰り返し、現在に至ってきたという
破壊的な人生を歩んできた自覚があります
私が幸せになれるはずない
そんな茜は真夜中の街をさまよう内に不思議な体験をします
かつて身を売った男たちとの過去を追体験し
死んでしまった父親と無かったはずの対話をし
自らの『罪』を再確認するような幻視をするのだ
階段を延々と下っていくシーンはまるで
死者の国へ向かうオルフェウスのよう
後悔するのでもなく反省するようすもない、茜は
全てを諦めているようでもあり
全てに怒っているようにも思えました
さて悪夢のような幻視の中で茜は父親に
背負うべき『罪』などないと諭されます
さらに現実世界での友人の麻子にも
幸せになってもいいと示唆されるのだ
でもどうしても幸せになれる気がしないの・・
流産を思わせる記述とともに
この暗い物語は終わります
幸せを失うくらいなら
ずっと不幸のままがいい
意図的に間違った方へと進む
夜に住む女性の物語でした

自分の人生をどうイメージするかというのは、大切なことかも知れませんね!

あなたは幸福な未来をイメージできますか?
作品紹介(出版社より)
第175回芥川賞候補作
「私がこれまで何も選ばずにいようとしていたのは、選んだその瞬間に過去を罰せられる気がして怖かったからだ」
奔放に生きてきた私の身体に突然つきつけられた衝撃。採取された血を取り戻しに、ビジュー付きのサンダルで病院へと向かう私の中に、過去のさまざまな行いがよみがえる。
圧倒的な「罪と罰」の物語。
作品データ
タイトル:『悪い血』
著者:鈴木涼美
出版社:文藝春秋
発売日:2026/7/7
作家紹介
鈴木 涼美(すずき・すずみ)
1983年、東京都生まれ。 慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 大学在学中にAV女優としてデビューし、東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に勤務。 東京本社地方部都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。
著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『おじさんメモリアル』『オンナの値段』『女がそんなことで喜ぶと思うなよ』、『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』など。近著に『非・絶滅男女図鑑』がある。
鈴木 涼美の作品紹介
『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 2013/06/24
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 2014/11/26
『愛と子宮に花束を ~夜のオネエサンの母娘論~』 2017/05/25
『オンナの値段』 2017/12/08
『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』 2019/06/05
『ニッポンのおじさん』 2021/04/21
『ギフテッド』 2022/07/12
『グレイスレス』2023/1/14
『浮き身』2023/06/29
『YUKARI』2024/2/1
『不倫論: この生きづらい世界で愛について考えるために』2024/9/24
『ノー・アニマルズ』2025/3/26
『典雅な調べに色は娘2025/11/12
『めめSHEやつら 賢くて愚かな私たちを補完する、彼女たちの物語』2025/11/20
『女の子未満』2026/6/25
『悪い血』2026/7/7


