『アンダーウォール』神津凛子 あらすじと感想|そして惨劇の夜がやってくる


【2026年109冊目】
今回ご紹介する一冊は、
神津凛子 著
『アンダーウォール』です。
クローズド・サークル(逃げ場のない閉鎖空間)のヒリヒリする心理戦が好きな人
あらすじと感想
安全なはずの鳥かごは、お互いをつつき合う屠殺場だった?
封鎖された学園のなかで不安が募り、苛立ちが殺意となるスリリングな物語です
ニワトリもお魚も、友のことなぞ考えない
高潔な理想と共に設立された私立高校がある
長野県の森のなかに孤立する城塞のように建てられた、堀と塀のある名門校・架純(かすみ)学園が舞台です
カリスマ学園長のもと文武両道を誇る人気校なのだ
強力な感染症が発生!
生徒たちを守るために学園長は『学園封鎖』を行う
感染ゼロが続き思い切った対策は賞賛されていたが、封鎖された学校の内部では生徒や教職員たちの不安や不満そして苛立ちが募っていたのだ
封鎖はいつまで続くの?
そして事故(事件か?)が起こってしまう
一つのほころびからこの名門校は、ガラガラと音を立てて崩れ落ち、ついには燃え上がることになるのだ・・
教師や生徒たちそれぞれの視点から語られる…群像劇としてストーリは進みます
僕たちは1つの事柄を多角的に見る、俯瞰した視点でこの物語を見つめることになります
青春には暗黒面がある
思春期が美しいなんて、誰が言った?
期待と不安でドロドロのグチャグチャ

高校生の思いなんて、こんなもんですよね
そしてそれは大人である教師も変わりないのだ
学園閉鎖となったあと教師や生徒たちがじょじょに苛立ちを募らせ、だんだんと不安定になってゆく過程が、リアルです
守られているが、囚われている、に転化する状況は、コロナ禍で僕たちも感じた思いではないでしょうか
人はそれぞれの物語がある
例えば野球部レギュラーの3年生、准斗(じゅんと)は、新任女教師から見ると、機転の利く明るい生徒だが、同級生の女子から見ると、利己的でわがままな問題児
そして寮で同室の野球部の後輩から見ると・・どんな物語となるのか?
野球部1年生の古平(こだいら)の死から、ストーリは急流を降るような勢いで進んで行く
次々と起こる事件に疲弊する教師たちと、混乱し狂気に染まってゆく者たちに、ゾクゾクとしちゃいます
そんな中でも他人を思いやり、自己犠牲をいとわない者もいる
陸上部3年の瑞月(みづき)や、いじられキャラの勇人(はやと)の勇気ある行動は、物語の清涼剤となっています
この2人の明暗を分けた運命も、本書の読みどころのひとつです
そして恐怖のひと夜となる・・
まさにホラーナイト!
同じくひと夜の恐怖の学園モノを描いた名著

貴志祐介『悪の教典』を読んだ衝撃がよみがえりました
圧倒的なカタルシスに僕は、シビレました
閉鎖空間がもたらす混乱と、人それぞれの思惑が交差するスリル
思春期の光と影を描く、暗黒面が大爆発する物語でした

自信をもってオススメできる、スリラーミステリー好きにはたまらない傑作です

あなたは閉鎖空間が苦手じゃないですか?
作品紹介(出版社より)
生徒と教師が殺し合う一夜の惨劇。
閉鎖された名門校で一体なにが起きたのか?未曾有の感染症下、長野県にある名門校のカリスマ学園長が下した「全寮制高校の完全封鎖」。日本中がウイルスに怯える中、外界から断絶され、感染ゼロを実現する理想郷は拍手喝采を浴びた。だが、高潔な規律の裏側で、少年少女の心は腐敗していたのだ。野球部エースの精神崩壊と下級生への苛烈ないじめ、新任教師の禁断の恋、裏口入学の罪。そして、狂信的な偶像崇拝。出口を失った「苛立ち」は「憎悪」へと変質し、一夜にして惨劇の幕が上がる。
生徒が教師を屠り、友が友を斬り裂く。日本中を震撼させる、究極のサイコホラー!神津凛子が、あなたの理性を抉り取る。
作品データ
タイトル:『アンダーウォール』
著者:神津凛子
出版社:講談社
発売日 : 2026/8/19
作家紹介
神津 凛子(かみづ・りんこ)
1979年長野県生まれ。歯科衛生専門学校卒業。
第13回小説現代長編新人賞を受賞し、2019年「スイート・マイホーム」でデビュー。
長野県在住。
神津 凛子の作品紹介
『スイート・マイホーム』2019/01/06
『ママ』 2020/01/08
『サイレント 黙認』2021/07/14
『オイサメサン』2023/9/6
『アンダーウォール』2026/8/19


