ケイチャン
【2022年85冊目】
今回ご紹介する一冊は、
新庄耕 著
『夏が破れる』です。
もくじ
【感想】「南国は監獄で、地獄であった！」
怖いもの、異常なものが好きな方におススメです
冒頭は国家公務員としてタイ国に赴任した主人公の描写から始まる
幼い少女に過去の幻影を見て、抑えきれない情動にトイレへ駆け込む主人公
激しい自慰から始まる展開に不穏しかおぼえません
そして過去のトラウマを巡るストーリが語られます
イジメから不登校になった、中学男子の進（すすむ）クン
将来に不安をおぼえた母親は荒治療をすすめる
それが沖縄の離島で2カ月過ごすことでした
内向的な性格だが激しいところもある気質の進クン
やんちゃなクラスメイトに目を付けられ
むら気ある女性の担任教師に嫌われて
学校での居場所を無くしてしまいます
不登校となり、ただスマホの画面を見つめる日々に
自分でも危機感を覚えるのでした
気乗りしない沖縄入りだったが
美しい南国の海に心躍り期待します
ここで僕は変われるかも知れない・・と
滞在するハウスを見て戸惑う進クン
高い壁に鉄条網、そして理不尽な内容の誓約書に不安を覚える
美しくも影があるハウスオーナの妻
言葉を話さない黒髪の少女
そして陽気だが高圧的で、目の奥に怖さを湛えたハウスオーナが
進クンを迎えるのでした
ハウスオーナーに酷使される進クン
中学生に自動車を運転させるところから
彼が並みの倫理観から外れたところにいるのがわかる
ここで登場するのが子豚クンたちです
豚の世話もする進クン
エサやりになつき、ブーブーと甘える子豚たちに愛着を覚えます
・・・が、進クンはこの子豚たちと同じ運命なのでした
ゲストを迎え深夜に行われる謎めいた儀式
地下室で拘束され凌辱に泣き叫ぶ妻の姿
おかしい、ここは絶対におかしい！
そして寡黙な少女が消えた時
進はこの場所からの逃亡を決意する
そして明かされる進が飼われていた理由に
あなたの心の暗い部分が
ブルブルと震えることでしょう
陽光溢れる南国の太陽と
淫靡で凄惨な地下室との対比が鮮やかな物語でした
作品紹介（出版社より）
この世界に、出口はあるか。
いじめをきっかけに不登校となっていた中学生の進は、親の勧めで夏の２ヶ月を沖縄の離島で過ごすことになった。美しい海の前に建つ豪奢な家で、つかの間心を癒す進だったが、日々課される「修練」の過酷さは徐々にエスカレートしていく。夜中に聞こえる不可解な悲鳴、儀式に使われたかのような部屋、消えた少女、豚小屋で異臭を放つ肉片。進は命がけの脱走を図るが……。狂気をおびた大人の欲望が、進の運命を歪めていく。底無しの闇に、あなたは耐えられるか。
作家の橘玲氏も大絶賛！積水ハウスの事件をモデルにした『地面師たち』で業界内外を震撼させた著者が、意を決して挑んだ新たなサスペンス・スリラー！中学生の不登校率が過去最多となった今、我々が目指すべき出口は、はたしてこの世界にあるのだろうか！？
作品データ
タイトル：『夏が破れる』
著者：新庄耕
出版社：小学館
発売日：2022/4/25
作家紹介
新庄耕（しんじょう・こう）
京都府京都市出身、2年間の浪人生活を経て慶應義塾大学環境情報学部卒業。 神奈川県川崎市在住。 リクルートに入社するも1年で退職し、ベンチャービジネスや肉体労働などの仕事を経験した後、2012年、「狭小邸宅」で第36回すばる文学賞を受賞しデビュー。
新庄耕の作品紹介
『狭小邸宅』（2013/02/05）
『ニューカルマ』（2016/01/04）
『サーラレーオ』（ 2018/08/23）
『地面師たち』（2019/12/05）
『夏が破れる』（2022/04/25）