【本の感想】『逃亡犯とゆびきり』櫛木理宇|もうひとりのわたし

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櫛木理宇『逃亡犯とゆびきり』とキューバサンド

ケイチャン

ケイチャン

【2025年57冊目】

今回ご紹介する一冊は、

櫛木理宇 著

『逃亡犯とゆびきり』です。

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【感想】「もうひとりのわたし」

サイコサスペンス

『クローゼットの中に骸骨がある』
そんな家庭で育った2人の女性を描く
スリリングな犯罪小説です

離れていても通じ合う人が、いる

30代のフリーライター、世良未散(せら みちる)
鳴かず飛ばずのライター稼業を続ける彼女は
しかし一発逆転の特ダネを持っています
・・わたしには指名手配の友人がいるのだ

逃亡犯の親友

高校時代の友人、古澤福子(ふるさわ ふくこ)
4人を殺害し3年もの間逃亡生活を続けている
そんな彼女から電話が来た
・・世良、事件記事のヒントをやるよ

逃亡犯、福子のアドバイスにより
ライター、未散は注目記事を連発し
知名度を上げます
でも本当に書きたいのは福子のこと
・・そして私は友に、何が出来るのだろう?

「もうひとりのわたし」

事件記事のために、様々な犯罪を調べる未散
それは結果的に、彼女(彼女たち)の過去を
追想し、考え直す、心の旅路でもありました

家庭の犠牲となる、女子たち

男尊女卑の家庭に育ち
男兄弟の陰に埋もれる、女の子

ケイチャン

ケイチャン

親に無視され、搾取される姿が
辛い・・

「Skeleton in the closet(クローゼットの中の骸骨)」

家庭内の秘密や恥をさす、このイギリスの言葉が
本作のテーマとなっています

悪意を拡散するSNS

本作のもうひとりの主要人物が
シリアルキラーの収監囚、最川(もがわ)です
本物の快楽殺人鬼、ナチュラルボーンキラー、
悪意の塊である彼と福子は、何が似ていて
何が違うのだろうか?

・・わたしは殺人鬼じゃない!

終盤で人間性を取り戻し
新たな旅に立つ、福子と
それを見守る、未散との
友愛と共感が、尊い

逃亡犯の苦悩と再生を描く本作
ゴシップまみれのこの世界にも
友情は、ある
犯罪者の遍歴の旅路でした

ケイチャン

ケイチャン

櫛木理宇の犯罪小説は
今、まさに
のりにのってますね!
次作が楽しみな作家です

ケイチャン

ケイチャン

さて
あなたの家の
クローゼットの中には
何が隠されていますか?

作品紹介(出版社より)

親友が、シリアルキラーになった
フリーライターの世良未散のもとに「女子中学生墜落死事件」の執筆依頼が入った。エロやお笑い記事を書きながら、いずれは社会派のルポをと願っていた未散には願ってもない仕事だ。
転落死した15歳の少女・清水萌香は、死亡時スマートフォンを所持しておらず、「あたしは一一七人に殺された」という遺書を残していた。周囲の人間の、萌香に対する評価もさまざまだ。深まる謎に翻弄されつつ書いた記事の「前編」が雑誌に掲載された日、未散のスマホに着信が入る。それは、高校時代、未散にフリーライターとしての基礎をもたらした、親友・古沢福子からだった。「記事、読んだぞ」「2-Aの神崎を思い出したよ」とだけ告げて電話は切れる。しかしその言葉は、萌香の抱えていた闇を明らかにするものだった。
事件の真相に迫る「後編」の記事は評判を呼び、未散はライターとしての知名度を上げる。しかしそれを福子に伝えることは叶わない。なぜなら、福子は4人の男女を殺害した容疑で指名手配中の身だからだ。どこにいるかも、連絡先もわからない。次第に、未散は福子からの電話を心待ちにするようになる。それが、前代未聞の事件の端緒になるとも知らずに……。

作品データ

タイトル:『逃亡犯とゆびきり』
著者:櫛木理宇
出版社:小学館
発売日:2024/12/11

作家紹介

櫛木 理宇(くしき・りう)

2012年『ホーンテッド・キャンパス』で第19回日本ホラー小説大賞読者賞を受賞しデビュー。
同年『赤と白』で第25回小説すばる新人賞を受賞。
『ドリームダスト・モンスターズ』シリーズや、『死刑にいたる病』『209号室には知らない子供がいる』『鵜頭川村事件』『避雷針の夏』や『老い蜂』、映画化を控える『死刑にいたる病』など著書多数。
 

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櫛木理宇の作品紹介

『ホーンテッド・キャンパス』
『お城のもとの七凪町 骨董屋事件帖』(2014/02/20)
『ドリームダスト・モンスターズ』
『チェインドッグ』(2015/07/22)
『赤と白』(2015/12/22)
『侵蝕 壊される家族の記録』(2016/06/18)
『僕とモナミと、春に会う』(2016/12/06)
『避雷針の夏』(2017/07/20)
『死刑にいたる病』(2017/10/25)
『アンハッピー・ウェディング 結婚の神様』(2018/01/09)
『瑕死物件 209号室のアオイ』(2018/11/22)
『少女葬』(2019/05/01)
『世界が赫(あか)に染まる日に』(2019/09/20)
『死んでもいい』(2020/04/16)
『虜囚の犬』(2020/07/09)
『殺人依存症』(2020/10/07)
『鵜頭川村事件』(2020/11/10)
『ぬるくゆるやかに流れる黒い川』(2021/09/09)
『老い蜂(2021/09/24)
『残酷依存症』(2022/04/07)
氷の致死量』(2022/05/10)
『虎を追う』(2022/06/14)
少年籠城 』(2023/05/10)
骨と肉』2024/7/25
死蝋の匣』2024/7/2
逃亡犯とゆびきり』2024/12/11


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