
ケイチャン
【2025年56冊目】
今回ご紹介する一冊は、
町田そのこ 著
『月とアマリリス』です。
もくじ
【感想】「居場所を失った子羊たち」
山中で見つかった白骨の遺体
事件を追ううちに明らかとなるのが
虐げられた女性たちの姿だった・・
ジェンダー作家が描くミステリーです
手ひどい大失敗を犯して
東京から故郷の北九州に戻った
元記者のみちるさん
地元のタウン誌でライターをしています
そんな彼女に編集者の元カレから
死体遺棄事件の調査依頼が来るが
・・もう、事件の記事なんて
書けないよ・・
一度は断るものの、この事件と
自分自身の関係性から依頼を受けます
そして調査を続けるうちに浮かぶのが
虐げられた女性の姿でした
社会のセイフティーネットから
こぼれ落ちてしまった女性がすがるのは
男です

ケイチャン
・・でもそれは信頼出来る人なの?
甘く、心地良い言葉で
彼女たちを取り込む、男
でも1度、ココロとカラダを許したら
もう逃げられない
まさにクズです
とっとと逃げようよ!
そう忠告したいが、もう遅い
共依存の歪な関係にズブズブと
沈む様子が、悲しい
さてそんな搾取される女性の
様子と同時に進むのが
みちるの挫折と失敗の物語です
・・私の記事が人と傷つけてしまったの
人を殺す記事を書いてしまった
その後悔に心が折れてしまった、みちる
どこで間違ってしまったのか?
ぐるぐると迷路のような悩みの中に
未だ囚われたままです
そんなみちると一緒になって
悩みながら進むのが
自らの性認識に生き辛さを持つ
バディ役の男性、井口さんです
弱い人間の描写に定評があるのが
町田作品の特徴ですが、本作も
何かが欠けた登場人物たちが
苦悩する様子が描かれてゆく
またジェンダーをテーマとし
まだまだ男尊女卑がはこびる
日本社会に対して、それでいいの?と
問題提起をします
ジェンダー作家が描く
女性の挫折と再生を描く
サスペンス&ミステリー

ケイチャン
諦めない尊さがありました
作品紹介(出版社より)
本屋大賞作家の新境地となるサスペンス巨編
声なき声が届くなら、今度こそ記者を諦めない。
『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞後、『星を掬う』『宙ごはん』で同賞に3年連続ノミネート。人間ドラマを中心に執筆してきた町田そのこさん、初のサスペンス巨編!
北九州市の高蔵山で一部が白骨化した遺体が発見された。地元のタウン誌でライターとして働く飯塚みちるは、元上司で週刊誌編集者の堂本宗次郎の連絡でそのニュースを知る。
遺体と一緒に花束らしきものが埋めれられており、死因は不明だが大きな外傷はなかった。警察は、遺体を埋葬するお金のない者が埋めたのではないかと考えているという。
遺体の着衣のポケットの中には、メモが入っていた。部分的に読めるその紙には『ありがとう、ごめんね。みちる』と書かれていた。
遺体の背景を追って記事にできないかという宗次郎の依頼を、みちるは断る。みちるには、ある事件の記事を書いたことがきっかけで、週刊誌の記者を辞めた過去があった。
自分と同じ「みちる」という名前、中学生のころから憧れ、頑張り続けた記者の仕事。すべてから逃げたままの自分でいいのか。みちるは、この事件を追うことを決めた──。
作品データ
タイトル:『月とアマリリス』
著者:町田そのこ
出版社:小学館
発売日:2025/2/27
作家紹介
町田そのこ (まちだ・そのこ)
1980年生れ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。
他著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『星を掬う』などがある。
町田そのこの作品紹介
『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年8月)
『ぎょらん』(2018年10月)
『うつくしが丘の不幸の家』(2019年11月)
『52ヘルツのクジラたち』(2020年4月)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(2020年7月)
『星を掬う』(2021年10月)
『コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―』(2021年12月)
『宙ごはん』(2022/05/27)
『ぎょらん』2023/6/26
『コンビニ兄弟3:―テンダネス門司港こがね村店』2023/8/29
『夜明けのはざま』2023/11/8
『わたしの知る花』2024/7/22
『ドヴォルザークに染まるころ』2024/11/20
『月とアマリリス』2025/2/27