【感想】『夜明けのはざま』町田そのこ|自分の気持ちを天秤かける、辛さ

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夜明けのはざま|町田その子

ケイチャン

ケイチャン

【2024年49冊目】

今回ご紹介する一冊は、

町田そのこ 著

『夜明けのはざま』です。

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【感想】「自分の気持ちを天秤かける、辛さ」

ジェンダー小説

男に期待される役目を果たすのが
女の務めなのか?
人生の終着地、葬儀場から見た
女と男の連作群像ドラマです

あなたの次に大切なのが
わたしの人生だなんて
・・失礼じゃない?

まず人生の晴れ舞台である
結婚式の場面から始まります
新婦である親友の意見が通らず
婚家の義父母が上機嫌な様子に
憤る親友のサクマさんたち
・・結婚式の主役は新婦でしょ?
『家』のほうが大切なんてありえない!

そのサクマさんが勤めるのが家族葬
葬儀場『芥子実庵(けしみあん)』です
行き届いた丁寧な対応が好評ですが
運びこまれてきたご遺体は・・え?
親友のなつめじゃない!
・・結婚式で同席したばかりなのに
一体どうして?

親友の死と悩みに
打ちひしがれながらも
務めを果たすサクマさん
自分の仕事の意義を噛みしめ
あらためて、やりがいを感じます

しかしこの気持ちを
解ってくれないのが、彼氏でした
結婚して仕事を辞めてくれよ
だいたい葬儀場で働くなんて
カッコ悪いじゃん

結婚と仕事のはざまで
ゆれ動く、ココロ
物語は葬儀場を中心に
関係する人々を描いてゆく

「自分の気持ちを天秤かける、辛さ」

ハレの結婚式と、ケのお葬式
対照的な2つの場から
物語が始まるところが
本作のテーマを明らかにしています

男女の価値観の違い

男はこうあるべきで
女はこうするべきだ!

未だ根強く残る
男性優位社会に苦しむ
女性たちの姿が物悲しい・・
サクマさんを始め
女性の登場人物たちは、悩みます

町田作品につきものの
身勝手な人々の描写が
辛い・・
自分が正しいと信じ込む人の
醜さよ

そんな中で
自分の気持ちを冷静に
天秤にかけて
進む道を決めるサクマさん

葬儀場で働く彼女にはわかる
死んだら何も残らないし
何も持っていけない
けど残された人の記憶には
残るものがある

その気持ちを大切にしよう!

最後に自分の気持ちを選んだ
サクマさんの決断に
エールを送りたくなりました
自分の人生を人に預けては
ダメですよね

しかし町田その子は
クソみたいな登場人物を描くのが
ホントにうまいな!
読んでいてムカムカと
怒りが湧いてきました

おっと僕もクソみたいな
男にならないように
気を付けなくっちゃ・・
あなたは、大丈夫ですか?

作品紹介(出版社より)

本屋大賞受賞作家が、死を見つめることで、「自分らしく生きること」への葛藤と決意を力強く描き出した、著者渾身の感動作。

『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞!
3年連続、本屋大賞ノミネート!!

自分の情けなさに、歯噛みしたことのない人間なんて、いない。

地方都市の寂れた町にある、家族葬専門の葬儀社「芥子実庵」。仕事のやりがいと結婚の間で揺れ動く中、親友の自死の知らせを受けた葬祭ディレクター、元夫の恋人の葬儀を手伝うことになった花屋、世界で一番会いたくなかった男に再会した葬儀社の新人社員、夫との関係に悩む中、元恋人の訃報を受け取った主婦……。

死を見つめることで、自分らしく生きることの葛藤と決意を力強く描き出す、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した町田そのこ、新たな代表作!

作品データ

タイトル:『夜明けのはざま』
著者:町田そのこ
出版社:ポプラ社
発売日:2023/11/8

作家紹介

町田そのこ (まちだ・そのこ)

1980年生れ。福岡県在住。
2016年「カメルーンの青い魚」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞。
2021年『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞。
他著書に『ぎょらん』『うつくしが丘の不幸の家』『コンビニ兄弟 テンダネス門司港こがね村店』『星を掬う』などがある。

町田そのこの作品紹介

『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』(2017年8月)
『ぎょらん』(2018年10月)
『うつくしが丘の不幸の家』(2019年11月)
『52ヘルツのクジラたち』(2020年4月)
『コンビニ兄弟―テンダネス門司港こがね村店―』(2020年7月)
星を掬う』(2021年10月)
『コンビニ兄弟2―テンダネス門司港こがね村店―』(2021年12月)
宙ごはん』(2022/05/27)
『ぎょらん』2023/6/26
『コンビニ兄弟3:―テンダネス門司港こがね村店』2023/8/29
夜明けのはざま』2023/11/8

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