【感想】『みんな蛍を殺したかった』木爾チレン|その美しさが、私の醜さをあらわにするの

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みんな蛍を殺したかった|木爾チレン

ケイチャン

ケイチャン

【2022年161冊目】

今回ご紹介する一冊は、

木爾チレン 著

『みんな蛍を殺したかった』です。

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【感想】「その美しさが、私の醜さをあらわにするの」

あの美しさを憎まずにいられない!
愛憎が葛藤する青春ミステリーです

皆さんは美男美女ですか?
うん私は美人だよ
と言える人の気持ちは
つぶれたアンパンのような顔の僕には
想像がつきません(‘ω’)残念

美しい容姿の転校生が
オタクの集まる生物部にやってきた!
最低カーストの我らの仲間になるなんて
なんで??

想像して下さい
橋本環奈が転校生としてやってくる
そして上層カーストの陽キャたちを差し置いて
『友達になろうよ』とオタクの私に言うんだ
そんなことっておかしいだろう!?

「その美しさが、私の醜さをあらわにするの」

美しいのは容姿だけでない
屈託のない明るい性格
友達を思いやる優しさ
誰にも愛される垣根のなさ

その美しさが
私の心根の醜さを
照らし出してしまうんだ

主人公の生物部の3人のオタクちゃんは
美しい転校生の蛍に
最初は戸惑い
そして歓迎する

しかしその美しさは強烈過ぎた

絶対に比較してはいけない相手なのに
どうしても自分と比べてしまう
そして気が付くんだ
私が醜いのは容姿だけでない
私の心が歪んで醜いのだと・・

そして蛍に対する
好意が殺意に裏返った時
蛍はその美しい身体を
線路上で小間切れに散らすのだった

蛍が轢死するシーンからスタートする本作
なぜ蛍は死ななければいけなかったのか?
その死に隠された秘密とは?
とミステリーの王道をゆく

けっこう強引な展開で『え!?』と
思うところがありますが
そこはエンタメ作品
チカラ技でひっぱられるのも嫌いじゃないです

物語はオタクちゃんたちの目線で進みますが
最終章の蛍の視点でいままでの印象が
ガラッと変わるところも
カタストロフがあります

死ぬことでしか存在証明できない
そんな人生があると
あなたは思いますか?

作品紹介(出版社より)

みんな誰かを殺したいほど羨ましい。

美しい少女・蛍が線路に身を投じる。
儚く散った彼女の死は後悔と悲劇を生み出していく

京都の底辺高校と呼ばれる女子校に通うオタク女子三人、校内でもスクールカースト底辺の扱いを受けてきた。そんなある日、東京から息を呑むほど美しい少女・蛍が転校してきた。生物部とは名ばかりのオタク部に三人は集まり、それぞれの趣味に没頭していると、蛍が入部希望と現れ「私もね、オタクなの」と告白する。次第に友人として絆を深める四人だったが、ある日、蛍が線路に飛び込んで死んでしまう。真相がわからぬまま、やがて年月が経ち、蛍がのこした悲劇の歪みに絡みとられていく

少女の心を繊細に描く名手による初のミステリ作品

作品データ

タイトル:『みんな蛍を殺したかった』
著者:木爾チレン
出版社:二見書房
発売日:2021/6/21

作家紹介

木爾チレン (きな・ちれん)

1987年生まれ。京都府出身。大学在学中に応募した短編小説「溶けたらしぼんだ。」で、新潮社「第9回女による女のためのR‐18文学賞」優秀賞を受賞。
美しい少女の失恋と成長をナ逓た『静電気と、未夜子の無意識。』でデビュー。
その後、少女の心の機微を大切に、多岐にわたるジャンルで執筆し、作品表現の幅を広げる

木爾チレンの作品紹介

『静電気と、未夜子の無意識。 』(2012/08/24)
『殺戮の天使 2 BLESSING IN DISGUISE』(2017/04/28)
『殺戮の天使 3 ONCE IN A BLUE MOON』(2018/04/27)
『わたしのこと、好きになってください。』(2018/09/28)
『これは花子による花子の為の花物語』(2019/03/09)
みんな蛍を殺したかった』(2021/06/21)
『ぜんぶ、藍色だった。』(2021/06/25)
私はだんだん氷になった』(2022/09/21)

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