【感想】『事件は終わった』降田天|事件は終わったが、日常はもう戻らない

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事件は終わった|降田天

ケイチャン

ケイチャン

【2022年160冊目】

今回ご紹介する一冊は、

降田天 著

『事件は終わった』です。

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【感想】「才能とは諸刃のナイフ、激しく振れば自分をも切り裂いてしまう」

あの時あの場所にさえ居なければ・・
突然事件に巻き込まれてしまった人々の
その後を描く連作短編ミステリーです

あなたは物語の主人公ですか?
はいそうです!
と言える方は少ないのでは・・
本作はある事件にたまたま居合わせた
モブ(その他大勢)の方々にスポット当てた
私たちにもあり得そうな筋立てになっています

地下鉄で凶行が起こる
通り魔がナイフを抜き
妊婦を切り、止めようとした老人を刺し
車内は大パニックにおちいる

突然の惨劇に
あなたは冷静に対応できますか?
僕はわりと血の気が多いので
やあっ!と立ち向かってしまい
ころっとやられちゃいそーです

老人の活躍で犯人は現行犯逮捕されるが
その一部始終は撮影され
公開されてしまった
我さきに逃げるもの
果敢に立ち向かうもの

その姿に無責任な世間の皆さんの
軽蔑や賞賛が寄せられる
その見えない人の声が
聞こえるんだ

「事件は終わったが、日常はもう戻らない」

無責任な世間の皆さんの声が
巻き込まれてしまった人々に
2次災害をもたらす
怯懦を笑われて引きこもる者
わざと負傷したのではと疑われる者
そして自分の責任では?と
後悔する者

そんなモブの皆さんに事件後
ちょっとミステリアスな現象が起こる
不可思議な現象を機会に
事件を振り返ると
そこには違う風景があったのだ

あの時本当は何があったのか?

事件に巻き込まれて
時が止まってしまった人々が
それぞれ葛藤の末に
又動き出す再生の物語でした

新しい扉を開くのって
勇気がいりますよね

作品紹介(出版社より)

年の瀬に起きた痛ましい〈地下鉄S線内無差別殺傷事件〉。
突然、男は刃物を振り回し、妊婦を切りつけ、助けに入った老人を刺殺した。
時は過ぎ、事件に偶然居合わせてしまった人々には、日常が戻ってくるはずだった───。

会社員の和宏は、一目散にその場から逃げ出したことをSNSで非難されて以来、日々正体不明の音に悩まされ始め……(「音」)。

切りつけられた妊婦の千穂は、幸いにも軽傷で済んだが、急に「霊が見える」と言い出して……(「水の香」)。

事件発生直前の行動を後悔する女子高生の響が、新たな一歩を踏み出すために決心
したこととは(「扉」)。

人生に諦念を抱える老人が、暴れる犯人から妊婦を守ろうとした本当の理由とは(「壁の男」)。
など、全6編。

大注目の『このミス』大賞&日本推理作家協会賞受賞作家が贈る、事件が終わって始まった、少し不思議でかなり切ない“その後”を描く連作短編集。

作品データ

タイトル:『事件は終わった』
著者:降田天
出版社:集英社
発売日:2022/8/26

作家紹介

降田 天 (ふるた・てん)

執筆担当の鮎川颯(あゆかわ・そう)とプロット担当の萩野瑛(はぎの・えい)による作家ユニット。
少女小説作家として活躍後、2014年に「女王はかえらない」で第13回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、降田天名義でのデビューを果たす。
2018年、「偽りの春」で第71回日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。
他の著書に、「偽りの春」が収録された『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』、『彼女はもどらない』、『すみれ屋敷の罪人』、『ネメシスⅣ』、『朝と夕の犯罪』、『さんず』などがある。

降田 天の作品紹介

『女王はかえらない 』(2015/01/09)
『すみれ屋敷の罪人』(2018/12/07)
『偽りの春 神倉駅前交番 狩野雷太の推理』(2019/04/26)
『朝と夕の犯罪』(2021/09/29)
『さんず』(2022/06/10)
事件は終わった』(2022/8/26)

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