【感想】『ミシンと金魚』永井みみ|夜寝る時、朝に目覚めないことを願う

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『ミシンと金魚』永井みみ

ケイチャン

ケイチャン

【2022年27冊目】

今回ご紹介する一冊は、

永井みみ 著

『ミシンと金魚』です。

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【感想】「夜寝る時、朝に目覚めないことを願う」

青く渦巻く美しい表紙に
琉球ガラスのようでキレイじゃん
楽しいお話かな♪と読んでみたら・・
重く苦しいシンドイ話でびっくりした笑笑

渦巻く青色は悲しみと苦しみの色なんだね

老婆の今と過去を描く物語です

主人公の老婆カケイさんは
ちょっぴり認知症があるけれど
まだ自力で動くこともできる老人です

ざっくりとした性格で
デイサービスの皆さんをまとめて
『みっちゃん』と呼んで認識してたり
明るくよくしゃべる、おばあちゃんです

「夜寝る時、朝に目覚めないことを願う」

ですがその現状は辛い
医者に露骨に邪険に扱われたり
相続狙いの息子の嫁に遺書を
書かされそうになったり
暴言を吐かれ、叩かれて
・・しんどいしんどい

その過去も辛い
幼少期はイヌの乳を吸って育ち←え!?
継母に丸太でボコスカ叩かれ
妊娠中に旦那さんに逃げられ
艱難辛苦の子育て
・・しんどいしんどい

しかしカケイさんにはミシンがあった
手に職がある人は強い
繊細なレースをほどこしたブラジャー
それは彼女の確かな自信となります

けれどもそのミシンで仕事をしているとき
最愛の娘を失ってしまう
激しく後悔するカケイさん
あの時もうちょっと娘を気にかけていたなら・・

そして迎える死の寸前に
カケイさんに去来した想い
それは娘を失った後悔でなく
短くも美しい娘との記憶だった

困難の多い人生をも
たしかに生きた喜びに変えれるように
僕も生きてゆきたいです

作品紹介(出版社より)

認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。
父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。
そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのに――。
暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。

作品データ

タイトル:『ミシンと金魚』
著者:永井みみ
出版社:集英社
発売日:2022/2/4

作家紹介

永井みみ(ながい・みみ)

1965年神奈川生まれ。
2022年、ケアマネージャーとして働きながら執筆した「ミシンと金魚」第45回すばる文学賞を受賞。

永井みみの作品紹介

ミシンと金魚」(2022/2/4)

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