【感想】『新しい星』彩瀬まる|禍福は糾える縄の如し

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新しい星|彩瀬まる

けいちゃ

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【2022年26冊目】

今回ご紹介する一冊は、

彩瀬まる 著

『新しい星』です。

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【感想】『禍福は糾える縄の如し』

思いがけないつまずきに
人生を見失う男女の物語

『禍福は糾える縄の如し』

と言いますが
不運のさなかにいる人はそんな達観など出来ず
ただオロオロと戸惑い悲嘆にくれるだけでしょう
そんな4人の男女を描いています

我が子を失った、青子(あおこ)
早産の末2ヶ月で娘を失います
さらに夫とは離婚し実家では親に
再婚をせっつかれ居場所を失う

慟哭し呆然とし立ち止まったままの青子
しかしある日彼女は気づいた
一瞬感じた我が子の温もり
そのギフトは永遠であるのだと・・

乳がんに罹った、茅乃(かやの)
気丈で何事もテキパキとこなす彼女
死の恐怖に怯えますが上手く家族に頼れない
友人の青子に打ち明けて泣く茅乃

片方の胸を失ったのにも関わらず
再発、次第に体力も気力も失ってゆく
気がかりなのは娘・・辛くあったってしまった
申し訳ない

引きこもりになった、玄也(げんや)
最初の就職でつまずき
部屋から出られなくなってしまった
働かねば・・無理だ
自問自答する日々です

そんな玄也を連れ出したのは
大学時代の合気道部の4人
がんになった茅乃と体力作りしようと
久しぶりの稽古に汗流す

そこで気付く玄也
最初の就職先で上手くやれなかったのは
自分がダメだったのではなく
上司に嫌われイジメを受けたのではないか
少しずつ外に出れるようになります

家族を失った、卓馬(たくま)
コロナ禍で実家に帰った妻が返ってこない
すれ違う日々に悶々と悩む卓馬
産まれたばかりの我が子会えないッ!

けれど妻とのすれ違いはコロナ禍より
以前から始まっていたことに思いつく
離婚を受け入れる卓馬
一緒に暮らさなくとも親子だろ

4人の交流を通して
つまずいた者の生きざまを描きます
 
毎日仕事や学校でダルいな!
何もない日々に飽き飽きだぜ!
そう思う当たり前が
実は貴重な幸せであると気がつきました

突然の不幸にオロオロともがくも
しぶとく生きるチカラ強さに
あなたもきっと人の温かさを
感じることでしょう

作品紹介(出版社より)

直木賞候補作、高校生直木賞受賞作『くちなし』から4年――

私たちは一人じゃない。これからもずっと、ずっと

愛するものの喪失と再生を描く、感動の物語

幸せな恋愛、結婚だった。これからも幸せな出産、子育てが続く……はずだった。順風満帆に「普通」の幸福を謳歌していた森崎青子に訪れた思いがけない転機――娘の死から、彼女の人生は暗転した。離婚、職場での理不尽、「普通」からはみ出した者への周囲の無理解。「再生」を期し、もがけばもがくほど、亡くした者への愛は溢れ、「普通」は遠ざかり……。(表題作「新しい星」)

美しく、静謐に佇む物語
気鋭が放つ、新たな代表作

作品データ

タイトル:『新しい星』
著者:彩瀬まる
出版社:文藝春秋
発売日:2021/11/24

作家紹介

彩瀬まる(あやせ・まる)

1986年千葉県生れ。上智大学文学部卒。
小売会社勤務を経て、
2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。
著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『やがて海へと届く』『朝が来るまでそばにいる』『くちなし』『森があふれる』『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』など。五感を刺激する柔らかでうつくしい文章と、どんな境遇の人にも寄り添う平らかな視点から紡がれる物語で読者を魅了。他に東日本大震災の被災記『暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出―』がある。

彩瀬まるの作品紹介

『暗い夜、星を数えて– 3・11被災鉄道からの脱出』(2012年2月)
『あのひとは蜘蛛を潰せない』(2013年3月)
『骨を彩る』(2013年11月)
『神様のケーキを頬ばるまで』(2014年2月)
『桜の下で待っている』(2015年3月)
『やがて海へと届く』(2016年2月)
『朝が来るまでそばにいる』(2016年9月)
『眠れない夜は体を脱いで』(2017年2月)
『くちなし』(2017年10月)
『不在』(2018年6月)
『珠玉』(2018年12月)
『森があふれる』(2019年8月)
『さいはての家』(2020年1月)
『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』(2020年5月)
『草原のサーカス』(2021年2月)
川のほとりで羽化するぼくら』(2021年8月)
新しい星』(2021年11月)

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