【感想】『かんむり』彩瀬まる|こんな不確かな時代に、なにを信じればいいのか

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かんむり|彩瀬まる

ケイチャン

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【2022年154冊目】

今回ご紹介する一冊は、

彩瀬まる 著

『かんむり』です。

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【感想】「こんな不確かな時代に、なにを信じればいいのか」

どう生きれば正解なんだろう?
同級生夫婦を描く現代小説です

小中学生のクラスメイトと結婚する割合って
どれくらいなんでしょうかね
ちょっと気になってググってみましたら
0.2%以下らしいです(根拠は不確か)

実は僕も小中学校時代の幼なじみを
妻に迎えています
僕の場合さらに初恋の人という
ポイントが加算されるのですが
この場合の結婚割合は
どれくらいなのでしょうかねww

さて本書の主人公の光(ひかる)と夫の虎児は
中学の同級生であり夫婦です
物語は2人が子を持った結婚生活から語られるが
冒頭のセックスに対する温度差がそのまま
2人の噛み合わなさを描いているようです

結婚生活が上手くいっている間は
目をつむることができた違和感ですが
ひとつ歯車が噛み合わなくなると
無視することが出来なくなる
それが夫の失業でした

特に男性にとって仕事というものは
自らのアイデンティティーとも言うべき
拠り所です
自らの非でないリストラでしたが
虎児のプライドは大きく傷つく

そして光にとっては家計の負担が
自分の稼ぎだけとなるプレッシャーとなる
ちょうど転職のチャンスが訪れるのだが
その賭けに乗ることが出来なかった
夫のせいでないのはわかっているが
このチャンスを逃したことが痛い・・

「こんな不確かな時代に、なにを信じればいいのか」

本書の大きなテーマに価値観の相違があります
男は強くたくましくあれ!
昭和では当然であったマッチョな考えは
平成ではヘロヘロに廃れ
令和では死んだ

女の子は可愛いもの
そんな価値観にずっと違和感を持っていた光は
時代が変わっていくことに期待を持っていました
しかしそれに乗れなかった
無念の思いはチャンスを逃す原因となった
夫への恨みに変ります

そして光の子供が成長するにつれて
親の価値観を否定するようになる
それはまさに光が父母と距離を置く
ようになったことをなぞるようでした

夫のことがわからない
子も離れてしまった
寂しさの中にしかし
光は自由を感じるのでした

妻でなくなり
母でなくなったことから
プレッシャーもなくなり
解き放たれたのでしょう

愛する者を失って
得られるものも
あるのかも知れませんね

作品紹介(出版社より)

「私たちはどうしようもなく、別々の体を生きている」
夫婦。血を分けた子を持ち、同じ墓に入る二人の他人。
かつては愛と体を交わし、多くの言葉を重ねたのに、今はーー。
夫が何を考え、どんな指をしているのかさえわからない。

「私のかんむりはどこにあるのか」
著者四年ぶり書き下ろし長編。

作品データ

タイトル:『かんむり』
著者:彩瀬まる
出版社:幻冬舎
発売日:2022/9/14

作家紹介

彩瀬まる(あやせ・まる)

1986年千葉県生れ。上智大学文学部卒。
小売会社勤務を経て、
2010年「花に眩む」で「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞しデビュー。
著書に『あのひとは蜘蛛を潰せない』『やがて海へと届く』『朝が来るまでそばにいる』『くちなし』『森があふれる』『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』など。五感を刺激する柔らかでうつくしい文章と、どんな境遇の人にも寄り添う平らかな視点から紡がれる物語で読者を魅了。他に東日本大震災の被災記『暗い夜、星を数えて―3・11被災鉄道からの脱出―』がある。

彩瀬まるの作品紹介

『暗い夜、星を数えて– 3・11被災鉄道からの脱出』(2012年2月)
『あのひとは蜘蛛を潰せない』(2013年3月)
『骨を彩る』(2013年11月)
『神様のケーキを頬ばるまで』(2014年2月)
『桜の下で待っている』(2015年3月)
『やがて海へと届く』(2016年2月)
『朝が来るまでそばにいる』(2016年9月)
『眠れない夜は体を脱いで』(2017年2月)
『くちなし』(2017年10月)
『不在』(2018年6月)
『珠玉』(2018年12月)
『森があふれる』(2019年8月)
『さいはての家』(2020年1月)
『まだ温かい鍋を抱いておやすみ』(2020年5月)
『草原のサーカス』(2021年2月)
川のほとりで羽化するぼくら』(2021年8月)
新しい星』(2021年11月)
かんむり』(2022年9月)

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