【感想】『夏日狂想』窪美澄|才能とは諸刃のナイフ、激しく振れば自分をも切り裂いてしまう

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夏日狂想|窪美澄

ケイチャン

ケイチャン

【2022年159冊目】

今回ご紹介する一冊は、

窪美澄 著

『夏日狂想』です。

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【感想】「才能とは諸刃のナイフ、激しく振れば自分をも切り裂いてしまう」

文壇時代小説

絢爛たる文化が開いた大正時代から
戦火と荒廃の暗い昭和時代へと
男尊女卑の男社会に立ち向かった
女性を描く物語です

あなたには才能がありますか?
秀でたギフトを持つ人には
あらかじめ定められた人生のレールを
歩くことが出来ないのかもしれません

本書の主人公である野中礼子のギフト
それは美しい容姿と文才であった

豊かな家に生まれ父に溺愛された礼子ですが
思いもよらぬ不幸にまみれ
定められたレールから逃げ出す
礼子が望んだもの
それが女優としての成功であった

が、激しく挫折する

上には上がある
トップ女優を間近に見て
格の違いを思い知る礼子
ああ・・私には才能が足りないのだ

「才能とは諸刃のナイフ、激しく振れば自分をも切り裂いてしまう」

自分の夢を追う礼子ですが
同時進行で恋もします
それが個性的かつ魅力的な
書くことに囚われた文士たちです

その才能にどうしようもなく惹かれてしまう

それが若き天才詩人の水本でした
まだ何者でもない学生ですが
素晴らしい詩文に心撃ち抜かれる礼子
同棲生活が始まる

しかし上手くいかなかった

情緒激しい水本に疲れ
他の男を愛する礼子
緊迫の三角関係が始まる・・
それは礼子の夢と男の遍歴の
始まりでもあった

箱入り娘の礼子は
夢破れ恋に破綻するうちに
したたかに成長します
踏まれて太く育つ麦のごとく

何人もの男と生活を共にし
献身的に尽くすのですが
自分の夢だけは手放さない
粘り強さを身に着ける

何人もの恋人や友人の死を看取り
老境の身にたどり着いたとき
礼子はひとりであったが
その胸には確かな満足があるようでした

胸を張ってひとりで生き抜く
老いた礼子の姿に
自分だけの人生を全うした
美しさを見ました

作品紹介(出版社より)

かけがえのない人間関係を失い傷ついた者たちが、再び誰かと心を通わせることができるのかを問いかける短編集。

コロナ禍のさなか、婚活アプリで出会った恋人との関係、30歳を前に早世した双子の妹の彼氏との交流を通して、人が人と別れることの哀しみを描く「真夜中のアボカド」。学校でいじめを受けている女子中学生と亡くなった母親の幽霊との奇妙な同居生活を描く「真珠星スピカ」、父の再婚相手との微妙な溝を埋められない小学生の寄る辺なさを描く「星の随に」など、人の心の揺らぎが輝きを放つ五編。

作品データ

タイトル:『夏日狂想』
著者:窪美澄
出版社:新潮社
発売日:2022/9/29

作家紹介

窪美澄(くぼ・みすみ)

1965年東京生まれ。
2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。
受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。

窪美澄の作品紹介

『ふがいない僕は空を見た』(2010年7月)
『晴天の迷いクジラ』(2012年2月)
『クラウドクラスターを愛する方法』(短編集)
『アニバーサリー』(2013年3月)
『雨のなまえ』(短編集)(2013年10月)
『よるのふくらみ』(短編集)(2014年2月)
『水やりはいつも深夜だけど』(短編集)(2014年11月)
『さよなら、ニルヴァーナ』(2015年5月)
『アカガミ』(2016年4月)
『すみなれたからだで』(短編集)(2016年10月)
『やめるときも、すこやかなるときも』(2017年3月)
『じっと手を見る』(2018年4月)
『トリニティ』(2019年3月)
『いるいないみらい』(短編集)(2019年6月)
『たおやかに輪をえがいて』(2020年2月)
『私は女になりたい』(2020年9月)
『ははのれんあい』(2021年1月)
『朔が満ちる』(2021年7月)
朱より赤く: 高岡智照尼の生涯』(2022年1月)
夜に星を放つ』(2022/5/2)
夏日狂想』(2022/9/29)

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