【感想】『浮き身』鈴木涼美|安らげる場所を求め、今もなお、さまよっている

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浮き身|鈴木涼美

ケイチャン

ケイチャン

【2023年102冊目】

今回ご紹介する一冊は、

鈴木涼美 著

『浮き身』です。

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【感想】「安らげる場所を求め、今もなお、さまよっている」

さまよえる現代文学

何者でもなかった私は
何にでもない部屋で
何を求めていたのだろうか?
今も何かを求めさまよう
荒涼とした都会の物語です

あなたはかつて
羽目を外したことがありますか?

誰にでも若さゆえ無茶して
あっちゃ~、やり過ぎちゃったなア
と、思い出す記憶が
ひとつやふたつ
あるのではないでしょうか?

物語は、アラフォーの『私』が
大学を休学中の、ある一時期に
よく通ったマンションの部屋を
思い出すところからスタートします

その部屋は
開店前のデリヘル
その部屋に集うのは
様々な女性たちと
名前のない男たちでした

「安らげる場所を求め、今もなお、さまよっている」

風俗業界の近辺に住む
若い女性達が
入れ替わり立ち替わり
その部屋に集う

デリヘルを開業する男達と
毎日どんちゃん騒ぎです
酒、たばこ、ド〇ッグ類
そして、セッ〇ス

性行為の描写が
無味無臭で乾いたように
描かれるところが、鈴木涼美の特徴です
どうしてこんな風に描くのだろうか?

デリヘルで働くわけでもない
用事があるわけでもないのに
なぜあの部屋に行くのだろう?
と『私』は自問しているようです

壊れかけた風俗嬢たち
女をバカにしている男たち
気が合う訳でもないのに
彼らと部屋にいるのは、何故?

群れになって漂う
クラゲの姿を連想しました
考えることもなく
ただ潮の流れにたゆたう、クラゲたち
それは美しも
寂しいような情景です

青春モラトリアム(執行猶予期間)の
只中にあった頃を思い出す
『私』の思いは、懐かしさと
後悔が半ばであるように感じました

ラストシーンで
封を切らないタバコを
捨て去りますが
『私』はタバコと一緒に
何を捨てたのでしょうか?

青春かな?←ちょっと恥ずかしい笑

あなたは年をとり
何を捨てましたか?

作品紹介(出版社より)

かつて、私たちは浮くようにそこに居た。注目の著者による無二の青春小説!
もうすぐ子供を産めなくなる私は、恋人と喧嘩をした翌日、大学時代に暮らしていた歓楽街へと赴く。その道中、「十一階の部屋」の記憶がストロボ・ライトの強烈な映像と共に蘇りーー。デリヘル開業前夜の若者たちが織りなす、酷い匂いの、眩い青春。セッ〇ス・ド〇ッグ・バイオレンス+フェミニズムを描いた無二の小説!

作品データ

タイトル:『浮き身』
著者:鈴木涼美
出版社:新潮社
発売日:2023/6/29

作家紹介

鈴木 涼美(すずき・すずみ)

1983年、東京都生まれ。 慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 大学在学中にAV女優としてデビューし、東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に勤務。 東京本社地方部都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。
著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『おじさんメモリアル』『オンナの値段』『女がそんなことで喜ぶと思うなよ』、『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』など。近著に『非・絶滅男女図鑑』がある。

鈴木 涼美の作品紹介

『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 2013/06/24
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 2014/11/26
『愛と子宮に花束を ~夜のオネエサンの母娘論~』 2017/05/25
『オンナの値段』 2017/12/08
『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』 2019/06/05
『ニッポンのおじさん』 2021/04/21
ギフテッド』 2022/07/12
グレイスレス』2023/1/14
浮き身』2023/06/29

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