【感想】『YUKARI』鈴木涼美|映す鏡によって、変わる女のカオ

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YUKARI|鈴木涼美

ケイチャン

ケイチャン

【2024年35冊目】

今回ご紹介する一冊は、

鈴木涼美 著

『YUKARI』です。

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【感想】「映す鏡によって、変わる女のカオ」

歌舞伎町文学

ホステスからの手紙
そこに綴られるは
嘘と誠
源氏物語にインスパイアされた
実験的な作品です

女の手紙を真に受けてはならない

歌舞伎町のホステス、紫(ゆかり)さん
名前からして源氏物語に縁(ゆかり)があり
本作のコンセプトを明らかにしています
それが現代版の文(ふみ)です

本作は結婚を間近に控えた
歌舞伎町のホステス、紫さんが
かつての恩師へ
夫となる人へ
関係を持った人たちへ
手紙を送るという形式になっています

電子メールが一般的な現代で
手書きの手紙を便箋何枚も
送られるなんて・・
もう呪いですよね笑

その手紙に綴られるのは
自らの心体を武器にして
夜の歌舞伎町を生き抜いた
ホステスの手管です

相手によって言葉が変わる
女の多面性に
男は成す術なく
手玉にとられる運命なのだ

「映す鏡によって、変わる女のカオ」

雅な宮廷恋愛を描いた源氏物語

本作では舞台を高級クラブとし
そこで働く紫さんが語り手となり
疑似恋愛を売りものとし
心と体で稼ぐホステスの
姿が語られてゆく

それは華やかなようで
乾いた風が吹くような
厳しい世界です
でもここでしか生きられない
人たちが確かにいるんだ

気の合わない継母から逃げ
高校を中退して歌舞伎町の
住人となった紫さんの
生き越し方が描かれてゆく

若さと初心さに値打ちが付く世界

ホステスたちが
日々目減りしてゆく
自分たちの値打ちに
焦る気持ちが悲しい

男たちが払う金以上の
対価を求めたがる姿が
あさましい
お金で心が買えるはずないのに・・

相手によって書かれることが
異なる紫さんの手紙は
そんな身勝手な男たちを
あざ笑うかのようでした

水商売や風俗嬢、AV女優など
性を切り売りする女性目線で
世界を描く鈴木涼美の作品には
男性本位の世の中に
鋭い一撃を与えるパワーがある

強かに生きる彼女たちの姿に
僕はちょっと憧れました
女をモノにするなんて言い方
もう言えないな・・
彼女たちは自由なんだ

作品紹介(出版社より)

婚約者との結婚を控え、何の不自由もなく暮らしていた紫。あるダンサーとの過ちを機に、高校時代に惹かれた柿本先生に手紙を出すことに。そこで綴られるのは、幾度となく先生が話してくれた『源氏物語』のことだったーー。

作品データ

タイトル:『YUKARI』
著者:鈴木涼美
出版社:徳間書店
発売日:2024/2/1

作家紹介

鈴木 涼美(すずき・すずみ)

1983年、東京都生まれ。 慶應義塾大学環境情報学部卒業、東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。 大学在学中にAV女優としてデビューし、東京大学大学院修士課程修了後、日本経済新聞社に勤務。 東京本社地方部都庁担当、総務省記者クラブ、整理部などに所属。
著書に『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『おじさんメモリアル』『オンナの値段』『女がそんなことで喜ぶと思うなよ』、『可愛くってずるくっていじわるな妹になりたい』、『すべてを手に入れたってしあわせなわけじゃない』など。近著に『非・絶滅男女図鑑』がある。

鈴木 涼美の作品紹介

『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』 2013/06/24
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 2014/11/26
『愛と子宮に花束を ~夜のオネエサンの母娘論~』 2017/05/25
『オンナの値段』 2017/12/08
『女がそんなことで喜ぶと思うなよ ~愚男愚女愛憎世間今昔絵巻』 2019/06/05
『ニッポンのおじさん』 2021/04/21
ギフテッド』 2022/07/12
グレイスレス』2023/1/14
浮き身』2023/06/29
YUKARI』2024/2/1

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