【感想】『Blue』川野芽生|泡になって消えてしまったら楽なのに・・

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Blue|川野芽生

ケイチャン

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【2024年36冊目】
今回ご紹介する一冊は、

川野芽生 著

『Blue』です。

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【感想】「泡になって消えてしまったら楽なのに・・」

第170回芥川賞候補作

高校の演劇部で
人魚姫を演じるのは
トランスジェンダーの男の娘
悩み多き若者たちを描く
青春小説です

男にも女にもなれない私は
なにものなのか?

物語の前半は
アンデルセンの人魚姫を演じる
高校生たちの姿が描かれます
人魚姫のストーリは大幅に改変され
人魚姫が恋するのは王子さまでなく
王女さまとなっている

私、人魚姫をやりたい!

そう手を上げる、真砂(まさご)ちゃん
演劇部の仲間たちと演出を練ったり
アンデルセン版人魚姫の考察を
ワイワイとするようすが
とても楽しそう

でも真砂ちゃんの性別は
男だったんです

幼少期から性認識は女性だった彼
高校のある時期から女子の制服を
着て過ごすようになる
ホルモン療法で2次性徴もなく
見た目は小柄な女の子です

しかし大学生になった時やって来たのが
コロナウィルスパンデミック

病院に通えなくなった真砂ちゃん
ホルモン剤の服薬も出来ず
2次性徴が出てしまう
身長も伸びて、もう女の子に見えない

物語の後半は
予期せぬ身体の変化に悩み
また恋する相手との関係性に苦しむ
トランスジェンダーの姿が描かれます

本名の真雄(まさお)から
高校で女性名の真砂に変え
大学で眞靑(まさお)とまた男性名にする
自分の見た目に合わせて改名していく
ままならない体と心に
振り回されてゆくのでした

「泡になって消えてしまったら楽なのに・・」

本作のもう一つのテーマが
自己犠牲です

泡となって消える人魚姫は
自己犠牲の最たるものですが
それはホントに相手のため?
自己満足じゃない?
けどやめられない・・と
思い悩む登場人物たち

相手から、世間から、
どう思われるのか
どう見られるのか
悩まない人はいないでしょう

いいや、そうではない
人のことなどどうでもよい
自分がどうなるかは
自分が決めるのだ

そういう在り方をするのが
人魚姫の脚本を書いた
同級生の滝山さんです
自分の承認は、自分ですれば良い

ゴミ屋敷のような
狭い滝山さんの部屋で
しかし眞靑(まさお)くんは
少しリラックス出来たようでした

性的マイノリティの苦悩を描いた本作
思春期に悩まない者はいない
しかし共に悩み、寄り添う
友人がいれば乗り越えられる
煌めくような青春小説でした

男でもなく女でもなく
性的マイノリティなどない
ひとりの人間として見つめる
そんな視点を持ちたいですね

作品紹介(出版社より)

【第170回 芥川賞候補作】

割りあてられた「男」という性別から解放され、高校の演劇部で人魚姫役を演じきった。
そんな真砂 (まさご) が「女の子として生きようとすること」をやめざるをえなかったのは──。

『人魚姫』を翻案したオリジナル脚本『姫と人魚姫』を高校の文化祭で上演することになり、人魚姫を演じることになった真砂は、個性豊かな演劇部のメンバーと議論を交わし劇をつくりあげていく。しかし数年後、大学生になった当時の部員たちに再演の話が舞い込むも、真砂は「主演は他をあたって」と固辞してしまい……。

自分で選んだはずの生き方、しかし選択肢なんてなかった生き方。
社会規範によって揺さぶられる若きたましいを痛切に映しだす、いま最も読みたいトランスジェンダーの物語。

作品データ

タイトル:『Blue』
著者:川野芽生
出版社:集英社
発売日:2024/1/17

作家紹介

川野芽生 (かわの・めぐみ)

1991年神奈川県生まれ。小説家・歌人・文学研究者。東京大学大学院総合文化研究科在籍中。
2018年に連作「Lilith」で第29回歌壇賞、2021年に歌集『Lilith』で第65回現代歌人協会賞受賞。
他の著書に、短編小説集『無垢なる花たちのためのユートピア』、掌編小説集『月面文字翻刻一例』、長編小説『奇病庭園』、エッセイ集『かわいいピンクの竜になる』がある。

川野芽生の作品

『Lilith』2021/2/21
『無垢なる花たちのためのユートピア』2022/6/24
『月面文字翻刻一例』2022/12/16
『奇病庭園』2023/8/4
Blue』2024/1/17

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