【感想】『東京都同情塔』九段理江|もう言葉は通じない

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東京都同情塔|九段理江

ケイチャン

ケイチャン

【2024年34冊目】
今回ご紹介する一冊は、

九段理江 著

『東京都同情塔(トーキョートドージョートー)』です。

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【感想】「もう言葉は通じない」

第170回芥川賞受賞作

言葉は呪い、それとも福音?
誰もが羨み住みたがる超高層タワー
「シンパシータワートーキョー」の
建設を描く物語です

え?居住者は犯罪者さま限定って
なんですかそれ!

犯罪者さまは被害者である

え?犯罪者は加害者でしょ!
と思うアナタ
違うんですよ
罪を犯した人は
そうせざるを得ない
環境や事情があっただけ
現代社会から弾き出された
いわば被害者なのです

そんな被害者を
暗く狭い刑務所に入れていいはずない!
そこで計画されたのが
東京のド真ん中の新宿御苑に
超高級なタワーマンション的なの建て
快適に暮らしてもらうとゆー案でした

言ってることは解るのだが
何か根本的に間違っている、この計画・・
だいたい「シンパシータワートーキョー」
ってネーミングが気に入らない!

こう思い悩み
他に変わる名称を考えるのが
建築家の牧名沙羅(マキナ サラ)さんです
だったら東京都同情塔ってのはどう?
そう答えるのが美貌の青年、拓人(タクト)くん

物語はこの2人の目を通して
『多様性』『寛容』『適切』とゆー
フワフワした空気を、読め!
という同調圧力と

逆に1度炎上したら、即退場!
誰もが言葉狩りポリスとなっている
恐怖SNS社会である、現在について
描いていくのでした

「もう言葉は通じない」

犯罪者は被害者であるとゆー
逆転の発想に驚かされました
え?そうなんだ!
と一瞬納得してしまったが
やはりどう考えても、おかしい

また言葉狩りを恐れて
ある言葉が抹消されて
新しい言葉がふわっと
作られていく過程が
無限地獄のように感じました

通じなくなってしまった、言葉

長々と独白し
拓人と会話しているようで
ずっと独り言を述べているような
牧名の姿が物悲しい・・

みんなに寛容であれ!
というディストピアを描く本作
もはや寛容という言葉の意味も失われて
違うものに変わってしまったようです

言葉の言い方なんて
どうでもいいよな・・
って思うことが
あなたもありませんか?

作品紹介(出版社より)

ザハの国立競技場が完成し、寛容論が浸透したもう一つの日本で、新しい刑務所「シンパシータワートーキョー」が建てられることに。犯罪者に寛容になれない建築家・牧名は、仕事と信条の乖離に苦悩しながら、パワフルに未来を追求する。ゆるふわな言葉と実のない正義の関係を豊かなフロウで暴く、生成AI時代の預言の書。

作品データ

タイトル:『東京都同情塔』
著者:九段理江
出版社:新潮社
発売日:2024/1/17

作家紹介

九段理江(くだん・りえ)

1990年、埼玉生れ。
2021年「悪い音楽」で第126回文學界新人賞を受賞しデビュー。
2021年「Schoolgirl」で第166回芥川龍之介賞、第35回三島由紀夫賞候補、2023年3月、同作で第73回芸術選奨新人賞を受賞。
2021年11月「しをかくうま」で第45回野間文芸新人賞を受賞。
2021年12月「東京都同情塔」が第170回芥川龍之介賞候補となる。

九段理江の作品紹介

『悪い音楽』
『Schoolgirl』 2022/1/17
『しをかくうま』2024/3/12
東京都同情塔』2024/1/17

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