【感想】『この世の喜びよ』井戸川射子|忙しい時は幸せに気付けない

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この世の喜びよ|井戸川射子

ケイチャン

ケイチャン

【2023年49冊目】

今回ご紹介する一冊は、

井戸川射子 著

『この世の喜びよ』です。

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【感想】「忙しい時は幸せに気付けない」

芥川賞受賞作

純文学

大変だった過去の日々は
思い出す毎に色を変えて
喜びの色彩になる・・
心の色合いの変化を穏やかに綴る
晩秋のような物語です

喪服の販売員

賑やかなショッピングモールの
喪服店で働く主人公と
行き場を見失った女子中学生との
交流を軸に物語は進みます

2人の娘を育て上げて
子育てもひと段落した
主人公の穂賀さん

忙しい日々は去り
心は平穏になるかと思いきや
さざ波のように心を乱すのは
過去の記憶です

「忙しい時は幸せに気付けない」

あなたは・・
ともう一人の自分に
語りかけるような文章が
穏やかで味わい深い

特徴的な文章です

さて物語は中盤から
娘たちとの齟齬について
語られていきます
それが過干渉です

娘の為にと
言ったことや
やったことを
あれは押し付けだったと
今頃になって責められてしまう

僕も親なので
すごいわかります

そして反省しつつも
仲良くなった女子中学生にも
彼女のためにと言ったひとことで
反発されてします

ああ、やってしまった!
しかし、どうしたらよいの?

だがそんな失敗も
いずれ過去となる
記憶の波に洗われて
その出来事もいずれ
幸せの輝きを放つ

思い出が地層のように重なって
大地のように人を支える
そんなイメージが湧きました
大変な日々が喜びの思い出となる
そんな心境にいつか
僕もなるのでしょうか?

作品紹介(出版社より)

第168回芥川賞受賞!

思い出すことは、世界に出会い直すこと。
静かな感動を呼ぶ傑作小説集。

娘たちが幼い頃、よく一緒に過ごした近所のショッピングセンター。その喪服売り場で働く「あなた」は、フードコートの常連の少女と知り合う。言葉にならない感情を呼びさましていく芥川賞受賞作「この世の喜びよ」をはじめとした作品集。

ほかに、ハウスメーカーの建売住宅にひとり体験宿泊する主婦を描く「マイホーム」、父子連れのキャンプに叔父と参加した少年が主人公の「キャンプ」を収録。

最初の小説集『ここはとても速い川』が、キノベス!2022年10位、野間文芸新人賞受賞。注目の新鋭がはなつ、待望の第二小説集。

二人の目にはきっと、あなたの知らない景色が広がっている。あなたは頷いた。こうして分からなかった言葉があっても、聞き返さないようになっていく。

作品データ

タイトル:『この世の喜びよ』
著者:井戸川射子
出版社:講談社
発売日:2022/11/10

作家紹介

井戸川射子(いどがわ・いこ)

1987年生まれ。関西学院大学社会学部卒業。
2018年、第一詩集『する、されるユートピア』を私家版にて発行。2019年、同詩集にて第24回中原中也賞を受賞。
2021年、本書で第43回野間文芸新人賞受賞

井戸川射子 の作品

『する、されるユートピア』 2019/8/22
『ここはとても速い川』 2021/6/1
『遠景』 2022/7/4
この世の喜びよ』 2022/11/9

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