【感想】『松雪先生は空を飛んだ 下』白石一文|あの約束の意味を教えて欲しい!

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松雪先生は空を飛んだ 下|白石一文

白石一文『松雪先生は空を飛んだ』上

ケイチャン

ケイチャン

【2023年47冊目】
今回ご紹介する一冊は、
白石一文
『松雪先生は空を飛んだ 下』です。

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【感想】「あの約束の意味を教えて欲しい!」

群像人間ドラマ

なぜ先生は僕たちに
こんな能力をくれたんだろう?
スーパーマンの孤独を描く
圧巻の人間ドラマです

高麗(こま)塾の生徒7人が授かった
飛行能力

この祝福された能力の裏で
塾生たちは松雪先生から
呪いのような言葉と
重い約束を受けます

その言葉と約束に縛られて
生きてきた子供たちの人生は
あまり幸福とは言えないものでした

物語は
塾生たちを追い求めて
調査する若者達と
人生も終盤に差し掛かった
塾生たちが再び集う様子が
描かれていきます

「あの約束の意味を教えて欲しい!」

本書の魅力は
1章が小説1冊分にも匹敵する
濃厚な人間ドラマにあります

下巻では
人間関係がさらに濃密に絡まりあって
さながら曼荼羅を観ているような
登場人物相関図に驚きを隠せません

え?ここで、こー繋がるのかよ!と

そして共通するのが
秘密を持った者の孤独です

誰にも言えない
誰にも知られてはいけない
そんな秘密を持ってしまうと
人は不幸になる

秘密を持たない
太郎と果林の屈託のなさと
秘密を持ってしまった
人たちとの後ろめたさが
鮮やかに対比されます

心にわだかまりを持っていると
人は幸せになれないのかも知れませんね

あなたには秘密を打ち明けられる人が
いますか?

作品紹介(出版社より)

「今日から、きみたちは自由に空を飛ぶことができる」

スーパー・パリットストアの総菜部新入社員、銚子太郎は窮地に立たされていた。発注ミスで野菜サラダのパックが100個も届いてしまったのだ。通常の10倍量のサラダを前に困り果てる銚子太郎だったが、ベテランパート久世さんの「サラダ記念日を絡めたPOPをつける」という名案に救われる。それをきっかけに久世さんと仲良くなった銚子太郎は、ある日木から降りられなくなった猫を助けるために、空中を飛行する久世さんを目撃してしまう――。
既婚者の子供を身ごもり、世をはかなむ糸杉綾音。セスナ機事故で九死に一生を得てから、人が変わってしまったスーパーヤオセーの会長・高岡泰成。描かれる複数の男女の生活と歴史、そして見え隠れする「空を飛ぶ人間」の存在。やがて、空を飛ぶ彼らには「私塾で松雪先生の最終講話を受けた」という共通点が浮かび上がってくる。時を経て、再び最終講話メンバーが集まった時、松雪先生の頭にあった計画とは――

作品データ

タイトル:『松雪先生は空を飛んだ 下』
著者:白石一文
出版社:KADOKAWA
発売日:2023/1/30

作家紹介

白石一文(しらいし・かずふみ)


1958年、福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。
文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。
2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞受賞。
2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。
他に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『草にすわる』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』など著書多数。

白石一文 の作品

『一瞬の光』(2000/01/01)
『不自由な心』 (2001/02/01)
『すぐそばの彼方』(2001/07/01)
『僕のなかの壊れていない部分』(2002/08/01)
『見えないドアと鶴の空』 (2004/02/19)
『私という運命について』 (2005/04/26)
『もしも、私があなただったら』  (2006/04/20)
『どれくらいの愛情』 (2006/11/15)
『永遠のとなり』(2007/06/15)
『心に龍をちりばめて』( 2007/10/01)
『この世の全部を敵に回して』 (2008/04/24)
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下』(2009/01/27)
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上』(2009/01/27)
『ほかならぬ人へ』 (2009/10/27)
『砂の上のあなた』 (2010/09/01)
『翼』(2011/06/18)
『幻影の星』 (2012/01/16)
『草にすわる』 (2012/04/05)
『火口のふたり』( 2012/11/09)
『快挙』 (2013/04/26)
『ほかならぬ人へ〈2巻〉』 (2013/10/01)
『彼が通る不思議なコースを私も』( 2014/01/06)
『神秘』 (2014/04/26)
『愛なんて嘘』 2014/08/22)
『ここは私たちのいない場所』( 2015/09/30)
『光のない海』 (2015/12/04)
『記憶の渚にて』 (2016/06/30)
『一億円のさようなら』(2018/07/21)
『プラスチックの祈り』( 2019/02/07)
『君がいないと小説は書けない』( 2020/01/20)
『恋の絵本 (4) こはるとちはる』 (2020/02/15)
『我が産声を聞きに』 (2021/07/07)
『道』 (2022/06/28)
松雪先生は空を飛んだ 上』( 2023/01/30)
松雪先生は空を飛んだ 下』 (2023/01/30)

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