【感想】『松雪先生は空を飛んだ 上』白石一文|失敗・失望・失恋、負けの人生にもドラマがある

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松雪先生は空を飛んだ 上|白石一文

白石一文『松雪先生は空を飛んだ』上

ケイチャン

ケイチャン

【2023年42冊目】
今回ご紹介する一冊は、
白石一文
『松雪先生は空を飛んだ 上』です。

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【感想】「失敗・失望・失恋、負けの人生にもドラマがある」

群像人間ドラマ

人は必ず失敗するもの
それをどう克服するのか
その解決策が・・
え!空を飛ぶことですか?

愚かで滑稽な僕たちを描く
圧巻の群像劇です

各章は人の名前になっており
主人公が入れ替わる群像劇と
なっていますが
1つの章の内容が濃いのだ

物語はいきなり仕事で
大失敗を起こすシーンから
始まりますが
周りの人の機転で
事無きを得ます
よかったよかった、はいお終い
とはいきません

空を飛ぶ人がいる!

ニンゲンの飛行シーンが描かれて
物語は不可思議な領域へと
徐々にシフトしてゆく
高麗塾、
松雪先生、
最後の授業、
各章に謎を散り撒きながら
圧巻の人間ドラマが繰り広げられてゆくのだ

「失敗・失望・失恋、負けの人生にもドラマがある」

本作の魅力は入れ替わり登場する
主人公たちの人間臭さでしょう
仕事の失敗
生きがいを失う失望
ままならない恋愛
人生は難しい
しかし悲しいことの中にも
人生の喜びがある

白石作品の登場人物は
あちゃ~っと思う
失敗を自ら犯すような
不完全な人間が多い

その人間臭さに共感を覚えるのです

そして後半はいよいよ
空を飛ぶ人たちに
スポットが当てられる
ミステリアスな展開となります

謎が散りばめられて
下巻に大きな期待を
与えるエンディングでした
次巻が待ちきれない!

作品紹介(出版社より)

「今日から、きみたちは自由に空を飛ぶことができる」

スーパー・パリットストアの総菜部新入社員、銚子太郎は窮地に立たされていた。発注ミスで野菜サラダのパックが100個も届いてしまったのだ。通常の10倍量のサラダを前に困り果てる銚子太郎だったが、ベテランパート久世さんの「サラダ記念日を絡めたPOPをつける」という名案に救われる。それをきっかけに久世さんと仲良くなった銚子太郎は、ある日木から降りられなくなった猫を助けるために、空中を飛行する久世さんを目撃してしまう――。
既婚者の子供を身ごもり、世をはかなむ糸杉綾音。セスナ機事故で九死に一生を得てから、人が変わってしまったスーパーヤオセーの会長・高岡泰成。描かれる複数の男女の生活と歴史、そして見え隠れする「空を飛ぶ人間」の存在。やがて、空を飛ぶ彼らには「私塾で松雪先生の最終講話を受けた」という共通点が浮かび上がってくる。時を経て、再び最終講話メンバーが集まった時、松雪先生の頭にあった計画とは――

作品データ

タイトル:『松雪先生は空を飛んだ 上』
著者:白石一文
出版社:KADOKAWA
発売日:2023/1/30

作家紹介

白石一文(しらいし・かずふみ)


1958年、福岡県生れ。早稲田大学政治経済学部卒業。
文藝春秋勤務を経て、2000年『一瞬の光』でデビュー。
2009年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞受賞。
2010年『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。
他に『不自由な心』『すぐそばの彼方』『僕のなかの壊れていない部分』『草にすわる』『どれくらいの愛情』『この世の全部を敵に回して』『翼』『火口のふたり』『記憶の渚にて』『光のない海』『一億円のさようなら』『プラスチックの祈り』『ファウンテンブルーの魔人たち』『我が産声を聞きに』『道』など著書多数。

白石一文 の作品

『一瞬の光』(2000/01/01)
『不自由な心』 (2001/02/01)
『すぐそばの彼方』(2001/07/01)
『僕のなかの壊れていない部分』(2002/08/01)
『見えないドアと鶴の空』 (2004/02/19)
『私という運命について』 (2005/04/26)
『もしも、私があなただったら』  (2006/04/20)
『どれくらいの愛情』 (2006/11/15)
『永遠のとなり』(2007/06/15)
『心に龍をちりばめて』( 2007/10/01)
『この世の全部を敵に回して』 (2008/04/24)
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 下』(2009/01/27)
『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け 上』(2009/01/27)
『ほかならぬ人へ』 (2009/10/27)
『砂の上のあなた』 (2010/09/01)
『翼』(2011/06/18)
『幻影の星』 (2012/01/16)
『草にすわる』 (2012/04/05)
『火口のふたり』( 2012/11/09)
『快挙』 (2013/04/26)
『ほかならぬ人へ〈2巻〉』 (2013/10/01)
『彼が通る不思議なコースを私も』( 2014/01/06)
『神秘』 (2014/04/26)
『愛なんて嘘』 2014/08/22)
『ここは私たちのいない場所』( 2015/09/30)
『光のない海』 (2015/12/04)
『記憶の渚にて』 (2016/06/30)
『一億円のさようなら』(2018/07/21)
『プラスチックの祈り』( 2019/02/07)
『君がいないと小説は書けない』( 2020/01/20)
『恋の絵本 (4) こはるとちはる』 (2020/02/15)
『我が産声を聞きに』 (2021/07/07)
『道』 (2022/06/28)
松雪先生は空を飛んだ 上』( 2023/01/30)
松雪先生は空を飛んだ 下』 (2023/01/30)

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