【本の感想】『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』長谷敏司|人の尊厳は、どこに宿るのか?

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長谷敏司『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』

ケイチャン

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【2025年71冊目】

今回ご紹介する一冊は、

長谷敏司 著

『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』です。

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【本の感想】「人の尊厳は、どこに宿るのか?」

第53回星雲賞

SFヒューマンドラマ

義足のダンサーの共演者は
AIのロボットダンサー!?
近未来人の生活と悩みを描く
挑戦的なエスエフ小説です

ケイチャン

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実はなんと介護小説なのだ

時は2050年
主人公のコンテンポラリーダンサー
護堂恒明(ごどう つねあき)さんが
バイク事故で片足を失うところから
物語はスタートします

ダンサーの右足が無くなってしまった

しかしこの近未来では
AI制御のりっぱな義足があります
恒明は義足のダンサーとして
リスタートすることとなる

しかも劇団員の仲間から
ロボットたちと共演する
新しい舞台に誘われる
・・これでダンサー復活!
と喜ぶ恒明に思わぬ方向から
障害がもたらされるのだ

「人の尊厳は、どこに宿るのか?」

物語の前半は、懸命にリハビリをし
ロボットダンサーズとの共演に望みを託す
恒明さんの復活への努力が描かれます
・・恋愛相手のヒロインも登場するよ

ところが中盤から、思わぬ困難が追加される
尊敬するダンサーである恒明の父親が
自身の自動車運転ミスで大事故を起こし
同乗していた母親は死亡
自らは重体となった上に
認知症となってゆくんだ

介護小説のスタートです

中盤から後半にかけては
父親の介護に苦労する様子が描かれてゆく
敬愛する父がオムツとなり排泄を介助し
10分前のことを忘れて、駄々をこねる
これではまるで大きな赤ちゃんじゃないか

介護のよって疲弊する様子が
辛い

ケイチャン

ケイチャン

着々と熟練度を上げてゆく
ロボットダンサーと
肉体は衰えて、記憶も曖昧となる
父親との対比が、悲しい

人としての尊厳を失う父親に苦悩し
しかしロボットとのダンスに希望し
介護と仕事の両立に苦闘しつつも
恋人との未来に、愛を見だす

エスエフ小説とは思えないほどの
いくつもの感情が入り乱れる
人間ドラマが展開します

ケイチャン

ケイチャン

ずっしりとした読みごたえは
良く焼いたステーキを噛みしめるような
歯ごたえと味わい深さがありました

そして迎えるダンスシーン

ケイチャン

ケイチャン

認知症の父親とのラストダンスに
父子の情愛を感じて震えてしまう

またロボットダンサーズとの舞台も
人と機械との共演に新しい可能性を
感じる素晴らしいショーでした

人とAI
父と子
悩み努力しながら生活する
日々の美しさを描いた傑作でした

ケイチャン

ケイチャン

さて25年後の世界では
僕たちはどんな生活をして
なにを感じているでしょうか・・
あなたには想像が出来ますか?

作品紹介(出版社より)

身体表現の最前線を志向するコンテンポラリーダンサーの護堂恒明は、事故で右足を失いAI制御の義足を身につける。彼は、人のダンスとロボットのダンスを分ける人間性の手続き(プロトコル)を表現しようとするが、待ち受けていたのは新たな地獄だった――。

作品データ

タイトル:『プロトコル・オブ・ヒューマニティ』
著者:長谷敏司
出版社:早川書房
発売日:2022/10/18

作家紹介

長谷敏司(はせ・さとし)

1974年大阪府生まれ。関西大学卒。
2001年、第6回スニーカー大賞金賞を受賞した『戦略拠点32098 楽園』で作家デビュー。
2009年、初の本格SF長篇『あなたのための物語』で「ベストSF 2009」国内篇第2位。
2014年、「allo,toi,toi」ほか4篇収録の作品集『My Humanity』で第35回日本SF大賞を受賞。

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長谷敏司の作品

『戦略拠点32098 楽園』2001/11/30
『あなたのための物語』2009/8/1
『My Humanity』2014/2/21
プロトコル・オブ・ヒューマニティ』2022/10/18