【感想】『鈍色幻視行』恩田陸|夜の海に投げ出される

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夜の海に投げ出される

ケイチャン

ケイチャン

【2023年93冊目】

今回ご紹介する一冊は、

恩田陸 著

『鈍色幻視行』です。

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【感想】「夜の海に投げ出される」

ミステリー小説

呪われた小説
『夜果つるところ』
映画化しようとするたびに
人が死ぬ・・

その関係者一行を
乗せたクルーズ客船での
航海を描く演劇のような物語です

いわくつきの本に魅せられる

映像化しようとするたびに
事故が起こり人が死に頓挫する
そんないわくつきの本について
惹きつけられたのが
小説家の梢(こずえ)です

関係者一同が乗船する
豪華客船のクルーズへ参加する
こんな絶好の機会などない
かくして梢による
関係者へのインタビューが
行われるのであるが・・

それは深い海の底に
沈み落ちていくようでした

「夜の海に投げ出される」

読書とは何か?
をテーマとする本作
本読み人の皆さまにとっても
興味深いテーマだと思います

人生の追体験
登場人物への自己投射
共感に反発と
さまざまな感情の動きこそが
読書の醍醐味と言えるでしょう

クルーズ船に乗る関係者たち
頓挫した映画の監督
文庫の編集者
漫画家姉妹
そして自殺した脚本家の夫

それぞれの立場から
『夜果つるところ』
に対する思いを語ります
それは深く自分の心の
奥底に降りて行くようでした

この心情描写こそが
恩田ミステリーの醍醐味ですね
登場人物たちに引きずられて
共に海に潜っていくような
心持になります

また小説『夜果つるところ』の作者
飯合梓(めしあい あずさ)は何者か?
というくだりでは
登場人物たちそれぞれの
事情や願望が投影されて
飯合梓について語っているはずが
いつの間にか自分語りに
なっているようなところが
作者と読者の関係性を
考えさせられました

極上のメタフィクションの本作
思考という船が
読書という海の上で
揺られて進む心地良さでした

作品紹介(出版社より)

小説家の蕗谷梢(ふきやこずえ)は、謎の作家・飯合梓(めしあいあずさ)と、
その代表作『夜果つるところ』に関する作品を書こうと決意。
『夜果つるところ』は三たび映像化が試みられたが、いずれも不慮の事故で中止となった
“呪われた小説”だった。
奇しくもその関係者たちがクルーズ旅行への参加を予定しており、
梢は夫の雅春から誘われて、夫婦で乗船することになった。

船上では、映画監督の角替(つのがえ)、映画プロデューサーの進藤、
映画評論家の武井、担当編集者だった島崎、漫画家の真鍋姉妹など、
この小説にひとかたならぬ思いを持つ面々が、梢の取材に応えて語りだす。
次々と現れる新事実と新解釈。

飯合梓は本当に死んだのか?撮影現場での事故は本当に偶然だったのか?
そして、梢には自分の夫である雅春にこそ、本人に聞けないことがあった。
実は彼の前妻は、この小説の映像化に関わり、脚本の完成直後に自殺をしていた…。
旅の半ば、『夜果つるところ』を読み返した梢は、ある違和感を覚える。
2週間にわたる旅の最後に、梢がたどり着いた「真相」とは…?

作品データ

タイトル:『鈍色幻視行』
著者:恩田陸
出版社:集英社
発売日:2023/5/26

作家紹介

恩田陸(おんだ・りく)

1964年宮城県出身。早稲田大学卒。
1992年日本ファンタジーノベル大賞の最終候補作となった『六番目の小夜子』でデビュー。
2005年『夜のピクニック』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞受賞。
2006年『ユージニア』で日本推理作家協会賞受賞。
2007年『中庭の出来事』で山本周五郎賞受賞。
2017年『蜜蜂と遠雷』で直木賞と2度目の本屋大賞をそれぞれ受賞。
ホラー、SF、ミステリーなど、さまざまなタイプの小説で才能を発揮している。
著書に、『三月は深き紅の淵を』『光の帝国常野物語』『ライオンハート』『私と踊って』『夜の底は柔らかな幻』『スキマワラシ』『灰の劇場』などがある。

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恩田陸の作品紹介

『六番目の小夜子』(1998/8/1)
『球形の季節』(1994/4/1)
『不安な童話』(1994/11)
『三月は深き紅の淵を』(1997/10)
『象と耳鳴り』(1999/10/1)
『木曜組曲』(1999/11)
『月の裏側』(2000/3/1)
『ネバーランド』(2000/7/5)
『麦の海に沈む果実』(2000/7/25)
『上と外』(2000年8月)
『puzzle』(2000/10/1)
『ライオンハート』(2000/12/1)
『MAZE』(2001/2/1)
『ドミノ』(2001/7/27)
『黒と茶の幻想』(2001/12)
『図書室の海』(2002/2/22)
『劫尽童女』(2002/4/1)
『ロミオとロミオは永遠に』(2002/10)
『ねじの回転』(2002/12)
『蛇行する川のほとり』(2002/12)
『まひるの月を追いかけて』(2003/9/11)
『クレオパトラの夢』(2003/10/1)
『黄昏の百合の骨』(2004/3/5)
『禁じられた楽園』(2004/4/21)
『Q&A』(2004/6)
『夜のピクニック』(2004/7/31)
『夏の名残りの薔薇』(2004/9/25)
『ユージニア』(2005/2/3)
『蒲公英草紙– 常野物語』(2005/6/3)
『ネクロポリス』(2005/10/13)
『エンド・ゲーム– 常野物語』(2006/1/5)
『チョコレートコスモス』(2006/3/15)
『中庭の出来事』(2006/11/29)
『朝日のようにさわやかに』(2007/3/1)
『木洩れ日に泳ぐ魚』(2007/7/1)
『いのちのパレード』(2007/12)
『不連続の世界』(2008/7/1)
『きのうの世界』(2008/9)
『ブラザー・サンシスター・ムーン』(2009/1/23)
『訪問者』(2009/5/14)
『六月の夜と昼のあわいに』(2009/6)
『私の家では何も起こらない』(2010/1/6)
『夢違』(2011/11/12)
『私と踊って』(2012/12/1)
『夜の底は柔らかな幻』(2013/1)
『雪月花黙示録』(2013/12/25)
『かがみのなか(2014/7/21)
『EPITAPH東京』(2015/3/6)
『ブラック・ベルベット』(2015/5)
『消滅 – VANISHINGPOINT』(2015/9)
『タマゴマジック』(2016/3/1)
『蜜蜂と遠雷』(2016/9/23)
『七月に流れる花』(2016/12/20)
『八月は冷たい城』(2016/12/20)
『終りなき夜に生れつく』(2017/2/20)
『失われた地図』(2017/2/10)
『錆びた太陽』(2017/3/21)
『おともだちできた?』(2017/6/30)
『祝祭と予感』(2019/10/4)
『歩道橋シネマ』(2019/11/20)
『ドミノin上海』(2020/2/4)
『スキマワラシ』(2020/8/5)
『灰の劇場』(2021/2/16)
『薔薇のなかの蛇』(2021/5/26)
愚かな薔薇』(2021/12/23)
なんとかしなくちゃ。青雲編』(2022/11/7)
鈍色幻視行』( 2023/05/26)
『夜果つるところ』( 2023/06/26)

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