【感想】『デクリネゾン』金原ひとみ|未来なんてない、無限の今を生きるのみ!

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デクリネゾン |金原ひとみ

ケイチャン

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【2022年135冊目】
今回ご紹介する一冊は、
金原ひとみ 著
『デクリネゾン』です。

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【感想】「未来なんてない、無限の今を生きるのみ!」

表紙に並べられた肉塊たちが生々しい
鬼才・金原ひとみがコロナ禍の今を描く
挑発的な現代小説です

まず主人公の志絵(しえ)に驚くことでしょう
結婚を2回、離婚も2回
中学生の娘と2人暮らしの
アラフォー小説家です
そしてまだ大学生の彼氏がいる

私の中に猛獣がいるの

物語は志絵の1人称で語られます
が、この志絵が面倒くさい子なんです
抑えがたい激情を時限爆弾のように抱えて
なんとか日々をやり過ごし生きていく

そんな彼女を支えるのが
人と食、です

「未来なんてない、無限の今を生きるのみ!」

離婚しても交流ある元夫たち
何よりも大切な娘
気の置けない同業の女友達
そして若すぎる彼氏

人々との交流が
虚無に流されがちな志絵を支えてくれる

そして食事
本作にはキラキラと輝くような
食事のシーンがふんだんに登場します
やはり食は喜びですね

しかし断絶もある
それがいわゆるZ世代である
若き恋人の蒼葉(あおば)との関係性です

デジタルネイティブな蒼葉は
とにかく人と争うことを嫌います
よって本質的な会話の応酬が出来ない
衝突の気配を感じると
スッス~と引いてしまう

そして自分で考えない
どうするのか?
もちろん全人類の集知の結晶である
Googleで検索するのです
え?議論など時間の無駄でしょ
答えはここに、あるじゃん!

でも自分を慕い、無限の愛を注いでくれる
蒼葉のことは好きでしょうがない
些細なきっかけを理由にして
結婚する2人に未来はあるのだろうか?

未来なんて必要なかったのでした

やがて志絵は気が付く
蒼葉は何も感じず何も考えてなくない
ゆっくりと成長しているのだと
自分が若かった頃とは
世界が変わってしまったんだと

世界観をアップデートした志絵は
自分がきらめくような
喜びの中にいることを知る
そして一瞬の今の輝きを繋ぎ合わせて
生きていこうと思うのでした

些細なあれこれに
グチグチと思い悩む志絵を見て
めんどくせーなと思うあなたは
自分を見ているように思えるからではないでしょうか?

あなたは未来に気を取られて過ぎて
今につまづいてはいませんか

作品紹介(出版社より)

仕事、家庭、恋愛の全てが欲しい女たちとその家族的つながりを描いた最新長編小説。

二度の離婚を経て、中学生の娘である理子と二人で暮らすシングルマザーの小説家、志絵。
最近付き合い始めた大学生の蒼葉と一緒に暮らしたいと娘に告げるが───。
恋愛する母たちの孤独と不安と欲望が、周囲の人々を巻き込んでいく。

「母親と恋愛って、相性悪いよ。ママは無理やり両方こなしてただけじゃん。何だかんだしょっちゅう家空けてたし」
「多くの人はゼロか百かで生きてないんだよ。二、八とか、六、四とかで生きてる。今は世界的にステップファミリーが増えてるし、母親とか父親を恋愛と切り離すのは保守的かつ不自然だよ」
「私はただ、今の生活が心地いいって言ってるんだよ。ママがデートに行くたびにパパたちとかおばあちゃんが駆り出されてるの、なんかちょっとなって思ってたし」
「子供を持ったら恋愛するなって言うの? 別に子供の心地よさを追求してやることだけが親の人生じゃないでしょ。きつかったかもしれないけど、受験勉強をしたから理子は今の中学に入れた。楽な方にいくだけがいいことじゃない」
───本文より

作品データ

タイトル:『デクリネゾン』
著者:金原ひとみ
出版社:ホーム社(集英社グループ)
発売日:2022/8/26

作家紹介

金原ひとみ(かねはら・ひとみ)

1983年東京生まれ。
2003年『蛇にピアス』で第27回すばる文学賞を受賞。
2004年、同作で第130回芥川賞を受賞。ベストセラーとなり、各国で翻訳出版される。
2010年『TRIP TRAP』で第27回織田作之助賞を受賞。
2012年『マザーズ』で第22回Bunkamuraドゥマゴ文学賞を受賞。
2020年『アタラクシア』で第5回渡辺淳一文学賞を受賞。
2021年『アンソーシャル ディスタンス』で第57回谷崎潤一郎賞を受賞。他『パリの砂漠、東京の蜃気楼』、『ミーツ・ザ・ワールド』等がある。

金原ひとみの作品紹介

『ナイン・ストーリーズ・オブ・ゲンジ』2008/10/31
『ハイドラ』2007/04/01
『憂鬱たち』2009/09/29
『マリアージュ・マリアージュ』2012/11/30
『軽薄』2016/02/26
『クラウドガール』2017/01/06
『星へ落ちる』2007/12/05
『オートフィクション』2006/07/05
『AMEBIC 2005/07/06』
『持たざる者』2015/04/24
『アッシュベイビー』2004/04/27
『TRIP TRAP トリップ・トラップ』2009/12/25
『fishy』2020/09/07
『パリの砂漠、東京の蜃気楼』2020/04/23
『マザーズ』2011/07/01
ミーツ・ザ・ワールド』2022/01/05
『アタラクシア』2019/05/24
『アンソーシャル ディスタンス』2021/05/26
デクリネゾン』2022/08/26

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