ケイチャン
【2023年87冊目】
今回ご紹介する一冊は、
石田夏穂 著
『黄金比の縁』です。
もくじ
【感想】「優秀な人が会社の役に立つのか？」
優秀な人材を採用するのは
会社の不利益のため？
ニッチな場所から
世界の本質を問う
就活の裏側の物語です
東京ビッグサイトでの
就職フェアからスタートする本作
主人公の小野さんは
会社のためにいい人材を採らなきゃ！
・・とは思っていませんでした
入社２年目で失敗する
もともと会社の花形部門にいた
小野さんだが思いもよらない事から
左遷人事を喰らうハメになる
なんで私が人事部に
飛ばされなきゃいけないの！？
沸々とたぎる不満を飲み込んで
人事部で採用担当する小野さん
以前の上司からオマエは会社に
不利益をもたらしたんだ
と言われた恨みが忘れられない
・・いつか復讐してやる
そのうち小野さんは気が付く
採用担当とは会社にもっとも
ダメージを与えられる
部署ではないのだろうか？
それが中途退職です
多大な労力をかけて
採用し育てた人材が
プイッと辞め転職してしまう
これほど会社がガッカリすることはない
すぐに辞めてしまう人を採用しよう！
これが小野さんの
会社への復讐方法となりました
では中途退職する人は誰だ？
ここで登場するのが
顔の黄金比でした
左右対称な顔
整った顔の条件ですね
長年人事部員として培った
経験と勘で気が付く
美しい顔の人は優秀で
優秀な人から中途退職してゆく、と
優秀な人材を雇うと
会社が損するって！
そりゃ、おかしいだろう？
そう、ここで
パラダイムシフトが起こるのです
会社に有益な人材とは？
優秀な人材を採用しよう！
でも優秀な人はすぐに転職してしまう
さて
３年で辞める秀才と
10年20年働く凡人と
会社にとってどちらが有益なのだろうか？
小野さんは
採用基準を
顔の黄金比のみとします
この人はいいと思う
この人はダメだと思う
なんて軽い選択基準・・
でも選ばれない人にとっては
とても重い人生の悲劇です
選ばれる側と
選ぶ側とのギャップが激しい
しかしこのギャップを
やすやすと飛び越える者がいる
それが
縁故採用です
裏口入社をする
就活の裏切り者に
小野さんが下した
選択とはいかに？
採用人事というニッチな世界から
人が人を選ぶという
とても難しい命題に
チャレンジした本作
大変面白い目の付け所でした
軽妙でコミカルな文体で
現在の会社をシニカルに
描いており
笑いながら
考えされられてしまう
そんな作品でした
あなたは鏡にうつる
自分の顔を見て
会社に必要な人の顔だって
そう思えますか？笑
作品紹介（出版社より）
「会社の不利益になる人間を採る」
不当な辞令に憤る人事部採用チームの小野は、会社への密かな復讐を始める——。(株)Ｋエンジニアリングの人事部で働く小野は、不当な辞令への恨みから、会社の不利益になる人間の採用を心に誓う。彼女が導き出した選考方法は、顔の縦と横の黄金比を満たす者を選ぶというものだった。自身が辿り着いた評価軸をもとに業務に邁進していくが、黄金比の「縁」が手繰り寄せたのは、会社の思わぬ真実だった……。
ボディ・ビルを描いた『我が友、スミス』で鮮烈なデビューを果たした著者が、本作では「就活」に隠された人間の本音を鋭く描く!
作品データ
タイトル：『黄金比の縁』
著者：石田夏穂
出版社：集英社
発売日：2023/6/5
作家紹介
石田夏穂（いしだ・かほ）
1991年埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。
2021年「我が友、スミス」でデビュー、第45回すばる文学賞佳作。
石田夏穂の作品紹介
『我が友、スミス』2022/1/19
『ケチる貴方』2023/1/26
『黄金比の縁』 2023/06/05
『我が手の太陽』 2023/07/13