ケイチャン
【2023年141冊目】
今回ご紹介する一冊は、
乾ルカ 著
『葬式同窓会』です。
もくじ
【感想】「悩めるエゴイストたち」
高3の担任の葬式で
集まった元同級生たち
話題となるのは
あの日の出来事だった・・
重厚な人間模様を描く、群像劇です
あの時、何があって
今、私たちは何者なの?
前作
『おまえなんかに会いたくない』
『水底のスピカ』に続く
北海道の白麗高校を舞台とした
3作めとなります
『水底のスピカ』が素晴らしい
青春小説だったので
本作も期待していました
世界観を共有していて
前2作の登場人物たちが
ちょくちょくゲスト出演します
卵のパックのように
同じだった同級生たちが
違う形に成長して
集うのが、同窓会だ
高校を卒業して8年
お通夜の後の居酒屋に
集う元同級生たち
しかし優菜(ゆうな)は複雑な思いだった
高1のころ、私を無視した
華(はな)が何食わぬ顔で同卓についている
あんな酷いことを私にしたのに
ふーん、無かった事にするんだね・・
と、モヤモヤが止まらない
いっぽうの華は
作家として芽が出ない現状に
イライラとしています
なんで私が、ダメ人間の優菜と
同じ扱いを受けなきゃならないの?
自分の扱いが悪いと
不満に思う彼女たち
しかし高校時代の『あの日』に
ひとりの人間をみんなが
踏みにじったんだ
高校3年の、あの日
亡くなった水野先生は
1人の生徒を激しく責め
彼はその後、学校に来なかったのだ
だけど私たち同級生は
部屋の空気が入れ替わったぐらいに
なんとも思わなかったんだ
・・それって、イジメより
酷いことだったんじゃないのか?
登場人物たちの思いは
過去と現在を行き来し
自らを問うこととなります
あの時、私はどうすべきだったのか、と
誰しもが、良い面もあれば
悪いところもある、多面的な存在です
複数の視点から、登場人物たちを
浮かび上がらせる描写が素晴らしい
大人とは自分の意見を
ちゃんと主張できる人である
気の弱い優菜が
積年の想いを吐き出すシーンが
胸を打ちます
はっきりと言うことは、難しいですね
誰も皆、エゴイスト
自分が主人公であり
他人はモブキャラですが
だからこそ、他人を
尊重しなければならない
僕はそう感じました
だってみんな自分の物語では
主人公なんですから
あなたは違うストーリーの主人公たちと
ちゃんとコラボ、出来ていますか?
作品紹介(出版社より)
7年ぶりに再会した、北海道立白麗高校3年6組の元クラスメートたち。それは同窓会ではなく、担任だった水野先生の葬儀だった。思いがけず再会した皆は、水野が授業中におこした〝事件〟が切っ掛けで不登校になったクラスメートがいたことを思い出す――。青春群像劇の傑作。
作品データ
タイトル:『葬式同窓会』
著者:乾ルカ
出版社:中央公論新社
発売日 : 2023/10/10
作家紹介
乾ルカ(いぬい・るか)
1970年、北海道札幌市生まれ。藤女子短期大学卒業後、銀行員、官公庁臨時職員などを経て、
2006年「夏光」でオール讀物新人賞を受賞、デビュー。
2010年『あの日にかえりたい』が直木三十五賞候補、『メダル』が大藪春彦賞候補に。
その他の著作に『てふてふ荘へようこそ』『蜜姫村』『六月の輝き』『願いながら、祈りながら』など。好きな作家は筒井康隆、宮部みゆき、重松清、大槻ケンヂ。座右の書は美内すずえ『ガラスの仮面』、理想の女性は同書の登場人物である姫川亜弓。
乾ルカの作品紹介
『夏光』(2007年9月)
『プロメテウスの涙』(2009年4月)
『メグル』(2010年2月)
『あの日にかえりたい』(2010年5月)
『蜜姫村』(2010年10月)
『六月の輝き』(2011年1月)
『てふてふ荘へようこそ』(2011年5月)
『君の波が聞こえる』(2011年7月)
『ばくりや』(2011年10月)
『たったひとり』(2013年1月)
『向かい風で飛べ!』(2013年12月)
『願いながら、祈りながら』(2014年3月)
『モノクローム』(2014年6月)
『青い花は未来で眠る(11月のジュリエット)』(2014年10月)
『森に願いを』(2015年2月)
『ミツハの一族』(2015年4月)
『奇縁七景』(2015年7月)
『花が咲くとき』(2016年3月)
『わたしの忘れ物』(2018年3月)
『カレーなる逆襲!– ポンコツ部員のスパイス戦記』(2018年7月)
『心音』(2019年4月)
『コイコワレ』(2019年6月)
『明日の僕に風が吹く』(2019年9月)
『龍神の子どもたち』(2020年10月)
『おまえなんかに会いたくない』(2021年9月)
『水底のスピカ』(2022年10月)
『葬式同窓会』 2023/10/10