ノンフィクション

『異常に非ず』桜木紫乃 あらすじと感想|昭和が咲かせた、あだ花が散る

ケイチャン(サカキ ケイ)

【2026年86冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桜木紫乃 著

『異常に非ず』です。

この小説はこんな人にオススメ

重厚な社会派・実録的ドラマが好きな人

あらすじと感想

犯罪ドキュメント小説

昭和54年大阪、4人の命を奪った銀行立てこもり事件は、どうして起こってしまったのか?
犯人の来歴を追う記者がたどり着いたのは母親と元恋人だった・・
重大事件から男と女の性を問う、重厚な物語です

何者かになるために手段を問わないのは、男の性(さが)か?

主人公は若き新聞記者の海原将志(うみはらまさし)さん
敏腕のベテラン記者の近藤からスカウトされ、北海道から大阪へ転勤してきたばかりで重大事件が発生します

銀行立てこもり事件が発生!犯人の花川清史(はなかわせいじ)は、銃を持ちすでに警官と行員4名死亡しているとのこと
そこへ犯人の母親カヨが香川からヘリコプターで香川からやってくるのだが、説得は不調に終わり、花川は狙撃され命を落とすことになる

なぜこのような事件を起こしたのか・・

将志は近藤の指示のもと、事件の原因を探ることになる
カヨに従い香川を訪れ、また清史が育った広島で調査するうちに、将志はこんな疑問を持つのだ
・・母親と元恋人は清史が事件を起こすことを、知っていたのではないか?と

はたして事件の真実はどこにあるのだろうか?

「昭和が咲かせた、あだ花が散る」

真っ黒な表紙が暗示させるとおりの、重く苦しい内容が続きます
母親のカヨの来歴が辛く、ため息が止まりません
しかし清史の誕生で彼女の生にも意味が出来ます
カヨは『清史の母』という立場を得て、幸福となるのです

子どもが出来て良かった!

しかしその子供は幸福でなかった
貧困家庭で過ごすみじめな環境に、清史は幼少期から鬱屈するのだ
さらに戦後のベビーブームという時代が災いし、清史は人生のレールから外れ、ついには重大事件を起こし、少年院に入ることとなる

貧乏な家に産まれて不幸になった!

やがて保護観察の身でありながら大阪へと出奔した清史は、同じような不幸を身にまとった美しいホステスの亜紀(あき)と出会う
傷をなめ合うような暮らしから、亜紀を傷つけ自らも傷つくという、悪循環の檻のような生活に、ついに行き詰ってしまう

どうしても幸せな暮らしを思い描けない!

清史とカヨそして亜紀、3人の共依存関係がついに破綻し、自爆テロのような、銀行立てこもり事件に至る過程が記者たちの取材で明らかとなります
男は男らしく、女は女らしく、という価値観が追い込んだ
昭和という時代が起こした事件なのでしょうか・・

事件を振り返る将志が自分の内にも、清史と同じ魂があることに気がつくシーンで、この長く暗く重い物語は幕を閉じます
読者を追い詰めるような緊迫の物語でした

令和でいう『無敵の人』がおこす事件のようでした

いつの時代も暴発せずにはいられない人がいるんですね
そんな時に相談できる仲間が必要なのかも知れません

あなたには信頼できる、友だちがいますか?

作品紹介(出版社より)

昭和54年大阪、猟銃を持って銀行に侵入し、四人を殺害して立て籠もった花川清史は香川からヘリで駆け付けた母の説得を拒絶し、射殺された。事件解決後、新聞記者は犯人の生涯を掘り起こし、母は問い直し、愛人は振り返る。『ホテルローヤル』『家族じまい』などで親子、愛憎を描いてきた著者がその究極に迫る長篇小説。 

作品データ

タイトル:『異常に非ず』
著者:桜木紫乃
出版社:新潮社
発売日:2026/4/22

作家紹介

桜木 紫乃(さくらぎ・しの)


1965年、北海道釧路市生まれ。
2002年、「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、2007年、同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。
2013年、『ラブレス』で島清恋愛文学賞受賞。
『ホテルローヤル』で直木賞を、2020年、『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。
ほかの著書に『硝子の葦』『起終点駅(ターミナル)』『裸の華』『ふたりぐらし』など多数。『孤蝶の城』は『緋の河』の第二部にして完結篇である。

桜木紫乃の作品紹介

『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)
ヒロイン』(2023/9/15)
谷から来た女『『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)
ヒロイン』(2023/9/15)
谷から来た女』2024/6/10
人生劇場』2025/3/3
異常に非ず』2026/4/22

ABOUT ME
ケイチャン
ケイチャン
サラリーマン読書家
年間150冊以上の本(主に小説)を読む、名古屋で働くサラリーマン【ケイチャン】です。ミステリー・サスペンス・イヤミス・恋愛小説を中心に、本の感想とおすすめをご紹介しています。「読む本に迷ったとき」の参考になれば幸いです。好きな言葉は「花には水を、人には愛を!」一緒に読書を楽しみましょう!!
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