【感想】『孤蝶の城』桜木紫乃|この女のカラダこそ、わたしの武器なんだ

227 views
孤蝶の城|桜木紫乃

ケイチャン

ケイチャン

【2022年89冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桜木紫乃 著

『孤蝶の城』です。

PR

【感想】「この女のカラダこそ、わたしの武器なんだ」

みなさんはニューハーフの方をどう思いますか?
僕は少し恐れを含む憧れって感じかな
歌舞伎町の『黒鳥の湖』に友達と行った時
みんな目を白黒させて喜んでいたのを思い出します

さてこの作品は、今で言うニューハーフの皆さんが
まだブルーボーイと呼ばれていた昭和時代の物語です

冒頭の舞台はモロッコの病院からスタートします
そう!男性の象徴をちょん切る手術を
日本人として初めて受けるのです

「この女のカラダこそ、わたしの武器なんだ」

モロッコで男性器除去の手術を受けた
『カーニバル真子』こと秀男(ひでお)さん
術後の痛む体を引きずるように舞い降りたのは
帝国劇場の舞台です
ちんこをちょん切った元男という下世話な話題性に乗っかって
彼女の舞台は連日満員御礼なのです

ニューハーフとしての物珍しさに
有名人との男性関係、フランス人美男との結婚と
みずからゴシップの火に油を注ぎ
注目を集めて、仕事をとってくる秀男さん

芸名通りの狂乱のお祭りのような日々が続きます
酒と男と金をグルグルと回して
魑魅魍魎が蠢く夜の街と芸能界を
女のカラダを武器に駆け抜ける秀男さん

まるで泳ぐことを止めたら溺れてしまうというマグロのよう!

友人が事故死し
薄幸な後輩を外国に逃がし
不仲であった父が他界し
そして嫉妬にかられた女から、手ひどい罠にかけられる

ここまで苦労を重ねても、華やかな世界で生きて行きたいのか?

そう、華麗に生きる。快楽に生きる。今を生き切る
自分の欲望に忠実で刹那的ではあるが
どこか1本筋の通った秀男さんの生きざまには
抗いがたい魅力があるのです

前の人にならい、横の人と同じ行動を良しとする
いわゆるフツーの世界で生きることを強いられている僕には
眩しくも苦しい秀男さんの姿に
憧れずにはいられませんでした

みなさんの目には
カーニバル真子の姿が
どう映りましたか?

作品紹介(出版社より)

モロッコへ旅立ったカーニバル真子は日本で初めて「女の体」を手に入れた。帰国後、待ち構えていたのは雑誌のグラビア撮影と日劇での凱旋ショーの大喝采だった。が、「性転換お色気路線」だけでは芸能界で生き残れそうになく、歌手、地方興行などに打って出るものの追い詰められていく。小説でしか描けない実在の人物の孤独と苦悶に迫る大傑作。

作品データ

タイトル:『孤蝶の城』
著者:桜木紫乃
出版社:新潮社
発売日:2022/5/18

作家紹介

桜木 紫乃(さくらぎ・しの)


1965年、北海道釧路市生まれ。
2002年、「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、2007年、同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。
2013年、『ラブレス』で島清恋愛文学賞受賞。
『ホテルローヤル』で直木賞を、2020年、『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。
ほかの著書に『硝子の葦』『起終点駅(ターミナル)』『裸の華』『ふたりぐらし』など多数。『孤蝶の城』は『緋の河』の第二部にして完結篇である。

桜木紫乃の作品紹介

『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)

PR
カテゴリー:
関連記事