【本の感想】『人生劇場』桜木紫乃|見たいものしか、見ない人生

99 views
桜木紫乃『人生劇場』とからあげ

ケイチャン

ケイチャン

【2025年75冊目】

今回ご紹介する一冊は、

桜木紫乃 著

『人生劇場』です。

PR

【感想】「見たいものしか、見ない人生」

太平洋戦争から令和まで
ひとりの男と家族の姿を描く
焦燥に焼かれるようなクロニクル
桜木紫乃版、百年の孤独です!

こんな酷い男なんて、別れてよくない??

太平洋戦争中の室蘭から
この長い物語はスタートします
4男3女という大家族の
次男、猛夫(たけお)くんは
今日も意地悪なお兄ちゃんにイジメられている

僕は邪魔者

なぜか母親に嫌われる、猛夫くん
そんな彼を実の子のように可愛がるのが
旅館や食堂を経営するやり手の伯母です
・・この子は私が育てます!

実の家族からひとり離れ
伯母の家で生活します
戦火で室蘭は壊滅状態となるが
運よく生き延びた猛夫は、この先
どのような人生を送るのでしょうか?

「見たいものしか、見ない人生」

実の親との縁が薄かったせいか
なかなか強情に育つ、猛夫くん
理容師に憧れて札幌に出るが
酷い挫折を味わい、叔母の元へ帰る

ケイチャン

ケイチャン

とても可哀相・・

しかし、可哀相な印象は
青年期まで
結婚し、子をもうけた猛夫は
恐ろしい暴君へと変貌します

ケイチャン

ケイチャン

いや、もう、ハチャメチャ

嫁を殴り
子に嫌われて
浮気、出奔するし
車やパチンコで金はない

ついには1憶の借金で人生をかけた
大ギャンブルを撃つのです

物語前半の印象が180度まわる
変貌ぶりです

ケイチャン

ケイチャン

僕の嫌いなタイプの主人公でした

しかし、彼を愛し、見捨てない女がいる
それが幼なじみの駒子(こまこ)さんと
妻の里美(さとみ)さんです

なんで別れないの?と疑問なのだが
この複雑怪奇で言葉にできない気持ちを
見事に心情描写するのが
桜木紫乃の真骨頂なのです!

駒子さんと里美さん
裏の主人公というべき
2人の女性の心を想像することで
この人生劇場は目まぐるしく回転します

人間ドラマが深すぎる

ケイチャン

ケイチャン

ずしりと重い読みごたえ
文章に書かれてない
登場人物たちの、うめき声が
伝わってくるようでした

ケイチャン

ケイチャン

しかし、エンディングは
嵐の航海を乗り切ったような感で
どんな人生も素晴らしい思える
軽やかなものでした

ベテラン作家の手腕が冴えわたる
まさに人生劇場の物語

ケイチャン

ケイチャン

圧巻の読みごたえで
しばらく余韻に浸っています・・

作品紹介(出版社より)

『ラブレス』『ホテルローヤル』等、家族の光と闇を描き続ける直木賞作家・桜木紫乃のルーツ!

夢に生き、夢に死ね――
昭和の北海道。
己の城を求め、男は見果てぬ夢を追う。

何もかもが赤く染まった鉄鉱の町・室蘭。
四人兄弟の次男に生まれた猛夫は、兄にいじめられ、母には冷たくあしらわれながら日々を過ごしていた。
心のよりどころは食堂と旅館を営む伯母のカツ。やがて猛夫はカツのもとで育てられることになる。
中学卒業後、理容師を目指し札幌に出た猛夫だが、挫折して室蘭に帰る。
常に劣等感を抱えるようになった猛夫は、いつか大きくなって皆を見返してやりたいと思うように。
理容師として独立、ラブホテル経営と、届かぬ夢だけを追い続けた男の行く末は。
自身の父親をモデルに、直木賞作家・桜木紫乃が北の大地で生きる家族の光と闇を描く。

【目次】
一章 鉄の町
二章 修業
三章 別れ
四章 長男
五章 夫婦
六章 闘い
七章 新天地
八章 落城

作品データ

タイトル:『人生劇場』
著者:桜木紫乃
出版社:徳間書店
発売日:2025/3/3

作家紹介

桜木 紫乃(さくらぎ・しの)


1965年、北海道釧路市生まれ。
2002年、「雪虫」でオール讀物新人賞を受賞し、2007年、同作を収録した単行本『氷平線』でデビュー。
2013年、『ラブレス』で島清恋愛文学賞受賞。
『ホテルローヤル』で直木賞を、2020年、『家族じまい』で中央公論文芸賞を受賞。
ほかの著書に『硝子の葦』『起終点駅(ターミナル)』『裸の華』『ふたりぐらし』など多数。『孤蝶の城』は『緋の河』の第二部にして完結篇である。

PR

桜木紫乃の作品紹介

『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)
ヒロイン』(2023/9/15)
谷から来た女『『風葬』(2008/10/09)
『恋肌』(2009/12/23)
『凍原』(2009/10/14)
『硝子の葦』(2010/09/01)
『ラブレス』(2011/08/26)
『ワン・モア』(2011/11/29)
『起終点駅(ターミナル)』(2012/04/01)
『ホテルローヤル』(2013/01/04)
『無垢の領域』(2013/07/31)
『蛇行する月』(2013/10/16)
『星々たち』(2014/06/04)
『ブルース』(2014/12/05)
『それを愛とは呼ばず』(2015/03/11)
『霧 ウラル』(2015/09/24)
『裸の華』(2016/06/24)
『氷の轍』(2016/09/27)
『砂上』(2017/09/29)
『氷平線』(2007/11/28)
『ふたりぐらし』(2018/07/31)
『光まで5分』(2018/12/13)
『緋の河 』(2019/06/27)
『家族じまい』 (2020/06/05)
俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』 (2021/02/26)
ブルースRed』(2021/09/24)
孤蝶の城』( 2022/05/18)
ヒロイン』(2023/9/15)
谷から来た女』2024/6/10
人生劇場』2025/3/3

関連記事