『ぬすびと』寺地はるな あらすじと感想|私の心を盗んで欲しい


【2026年90冊目】
今回ご紹介する一冊は、
寺地はるな 著
『ぬすびと』です。
あらすじと感想
『2度と会わない』と絶縁していた人から電話がきた・・
かつて心を通わせた人との時間が再び動き出す、弱い人たちの物語です
人間関係は1つのことで崩れてしまう
主人公の鳴海(なるみ)さんは40代の女性です
清掃員として働き収入が低いことに不満はあるが、穏やかな夫と2人暮らしは気楽なようす
けど彼女には気がかりなことがあるようです
あの人たちは今どうしているのだろうか?
そんな時、鳴海に懐かしくも気まずい相手から、20年ぶりに電話がかかってくるのだ
それはかつて家族のように親しくしていたのに、ある出来事を境に崩壊してしまった、大切な人
いったい過去に何があったのか?
そして彼女たちの未来は再び、交わるのだろうか?
物語は過去にさかのぼり、25歳の鳴海ちゃんがお菓子製造会社を経営する
『南雲家』で『子守り』をするところから動き出します
ここで気難しい少年の栄輝(えいき)くんと、美しい年上の奥様・彌栄子(やえこ)さんと出会う
問題ある家庭はギスギスしている
あっという間に栄輝と仲良くなった鳴海に、栄子は心を開きまるで友達のように接します
そしてじょじょに変わってゆくのだが、面白くなくかつ不安に思うのが彌栄子の夫です
妻が変わってしまった!
ただ受け身で従順であった彌栄子が変わり、あまつさえ自分に逆らうようになった
彌栄子の夫はその責任を鳴海せいにし、激昂した際に脳梗塞となり半身不随なる
このことが鳴海と彌栄子を別つ原因だったのです
彌栄子を守るためと言いながら、自由を奪う夫が、ズルい
ぬすびとはオマエだろう!と思ってしまう
弱い者にも、心がある
寺地はるなは人の弱さを描くのが上手い
その弱さを責めるのではなく、暖かく寄り添うように描写され、この弱さが強さになることを教えてくれます
さてタイトルとなっている『ぬすびと』ですが、物語の終盤では、こんがらがった人間関係を清算すべく、みんなで『墓どろぼう』をするとゆー、想像のナナメ上ゆく展開へと発展します

やってる登場人物たちは真面目なのに、どこかコミカルでわけのわからない展開に、僕はフフフと笑ってしまいました
心を盗み盗まれて、人は関わり合ってゆく
弱い人間たちの、再生の物語でした

あなたの心を盗んだ大切な人は誰ですか?
作品紹介(出版社より)
かつて喫茶店で働いていた鳴海は、菓子メーカーの創業一家・南雲家から子守役として雇われる。そこで出会ったのは、気難しい少年の栄輝と、美しい年上の奥様・彌栄子だった。次第に心を通わせていく三人だったが、ある出来事をきっかけに、彌栄子から「二度と会わない」と鳴海は突き放され、関係が途絶えてしまう。
それから二十年。大人になった栄輝から、ある日突然「母がそちらに行っていませんか」と電話が掛かってきて……。きっと、ページをめくるたび、あなたは力を取り戻していく。
傷も時間も刻んだ体で、どこまでも自由に踊り出すための物語。
作品データ
タイトル:『ぬすびと』
著者:寺地はるな
出版社:双葉社
発売日:2026/3/18
作家紹介
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。 大阪府在住。
2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。
他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。
寺地はるなの作品紹介
『ビオレタ』(2017年1月)
『今日のハチミツ、あしたの私』(2017年3月)
『みちづれはいても、ひとり』(2017年10月)
『架空の犬と嘘をつく猫』(2017年12月)
『大人は泣かないと思っていた』(2018年7月)
『正しい愛と理想の息子』(2018年11月)
『夜が暗いとはかぎらない』(2019年4月)
『わたしの良い子』(2019年9月)
『希望のゆくえ』(2020年3月)
『水を縫う』(2020年5月)
『やわらかい砂のうえ』(2020年7月)
『彼女が天使でなくなる日』(2020年9月)
『どうしてわたしはあの子じゃないの』(2020年11月)
『ほたるいしマジカルランド』(2021年2月)
『声の在りか』(2021年5月)
『雨夜の星たち』(2021年6月)
『ガラスの海を渡る舟』(2021年9月)
『タイムマシンに乗れないぼくたち』(2022年2月)
『カレーの時間』(2022年6月)
『川のほとりに立つ者は』(2022年10月)
『白ゆき紅ばら』(2023年2月)
『わたしたちに翼はいらない』2023/8/18
『こまどりたちが歌うなら』2024/3/26
『いつか月夜』2024/8/8
『雫』2024/11/6
『リボンちゃん』2025/7/10
『ぬすびと』2026/3/18


