ケイチャン
【2022年166冊目】
今回ご紹介する一冊は、
寺地はるな 著
『川のほとりに立つ者は』です。
もくじ
【感想】「本当に大切なことは、後回しにしてはいけない」
たとえばあなたに恋人がいるとして
あなたは彼(彼女)のことを
どれだけ理解しているんだろう?
僕は妻とは小学3年生からの付き合いですが
いまだに『え!そんなふうに考えていたの?』
と思うことが多々あります
さて本作の主人公の清瀬(きよせ)ちゃんは
現在彼氏との交際が自然消滅の危機にあります
連絡が途絶えはや数か月・・
そんな時病院から彼氏が入院した
との連絡がありました
カフェの店長である清瀬
日々激務で余裕がない毎日です
使えない部下の扱いにも悩み
精神的にも追い詰められています
そこに彼氏が意識不明で入院中との連絡が
半分別れかけているのに・・
そう思いながら駆けつけるのですが
チューブに繋がれた彼氏の哀れな姿に
真面目な清瀬は自分がなんとかしなきゃと
世話を焼くことにする
些細なすれ違いが分かれの危機となっていた2人
しかし清瀬は彼氏の部屋で見つけたものから
自分が見ていた彼氏の姿が1面的なものと気が付く
彼氏のことを・・もっと知りたい!
そして清瀬は気が付いていく
自分が認識していた世界とは
私という限られた視点から見た
ごく狭いものであったと
本作では発達障害の登場人物が出てきます
ディスレクシア(識字障害)
ADHD(注意欠如・多動性障害)
彼らの困難な生活が描かれる
そして身勝手な嘘をついてしまう者も・・
私が普通に出来ることが
彼らには出来ない
私が普通だと思っていることが
彼女らには理解できない
私の普通は、私だけのものなんだ
人の心はモザイクのようなもの
様々な色合いがあるのに
ある目立つ一面だけで
分かったように思ってしまう
それは危険なことなんだ
ひとりの人間を理解する
難しさを描いた本作
でもいろんな面があるからこそ
ひとりの人と一緒にいて
楽しいんじゃないかとも思います
相手の様々な面を楽しむ
そんな懐の深い人間に
僕も成長したいものです
作品紹介(出版社より)
カフェの若き店長・原田清瀬は、ある日、恋人の松木が怪我をして意識が戻らないと病院から連絡を受ける。松木の部屋を訪れた清瀬は、彼が隠していたノートを見つけたことで、恋人が自分に隠していた秘密を少しずつ知ることに――。「当たり前」に埋もれた声を丁寧に紡ぎ、他者と交わる痛みとその先の希望を描いた物語。
作品データ
タイトル:『川のほとりに立つ者は』
著者:寺地はるな
出版社:双葉社
発売日:2022/6/8
作家紹介
寺地はるな(てらち・はるな)
1977年佐賀県生まれ。 大阪府在住。
2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。
他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。
寺地はるなの作品紹介
『ビオレタ』(2017年1月)
『今日のハチミツ、あしたの私』(2017年3月)
『みちづれはいても、ひとり』(2017年10月)
『架空の犬と嘘をつく猫』(2017年12月)
『大人は泣かないと思っていた』(2018年7月)
『正しい愛と理想の息子』(2018年11月)
『夜が暗いとはかぎらない』(2019年4月)
『わたしの良い子』(2019年9月)
『希望のゆくえ』(2020年3月)
『水を縫う』(2020年5月)
『やわらかい砂のうえ』(2020年7月)
『彼女が天使でなくなる日』(2020年9月)
『どうしてわたしはあの子じゃないの』(2020年11月)
『ほたるいしマジカルランド』(2021年2月)
『声の在りか』(2021年5月)
『雨夜の星たち』(2021年6月)
『ガラスの海を渡る舟』(2021年9月)
『タイムマシンに乗れないぼくたち』(2022年2月)
『カレーの時間』(2022年6月)
『川のほとりに立つ者は』(2022年10月)