【感想】『タイムマシンに乗れないぼくたち』寺地はるな|僕らは生きる!この不確実な世界で

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タイムマシンに乗れないぼくたち|寺地はるな

ケイチャン

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【2022年46冊目】

今回ご紹介する一冊は、

寺地はるな

『タイムマシンに乗れないぼくたち』です。

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【感想】「僕らは生きる!この不確実な世界で」

日常に潜み、ふとした瞬間に現れる
やりきれなさ
生きづらさ
違和感
悲しみ
閉塞感
人間関係
逃げたくなる思い

ぼくらを苦しめる、こんな感情をテーマにした
7つの短編集です

「僕らは生きる!この不確実な世界で」

4編目の『夢の女』が印象に残る作品でした
亡くなった夫にパソコンに残された小説
それは自分が主人公で、ヒロインの女との
冒険活劇を描いた物語でした

仕事と言って、こんな愚にもつかないこと書いていたなんて!
あきれる妻だが、衝撃は拭えない
私との生活より、この夢物語のような人生を望んでいたなんて!
夫を2度亡くしたような悲しみが彼女を襲う

そして現れたのが、夫の小説にいた夢の女サエリ
自分だけが見える、幻想の女との生活が始まる・・

夫への深い悲しみと、自分でない女を望んだ怒り
ごちゃごちゃになった複雑な感情のあまり
心がフリーズしてしまう描写が、痛々しい

でも気付くのです、夢物語はそれで良いのだと
夢と現実はぜんぜん違う
夢と理想もまったく違う
夢見ることは、罪でないのだと
その時サエリは消えた・・

心と現実の境界線なんて、あいまいなものかも知れません
僕ら人間とは自分が思っている以上に不完全なものなのでしょう
日常に潜み、ふとした瞬間に僕らを襲う負の感情を
優しく掬い取ってくれるような、そんな作品たちでした

作品紹介(出版社より)

人知れず抱えている居心地の悪さや寂しさ。
そんな感情に寄り添い、ふと心が軽くなる瞬間を鮮やかに掬い取る。
注目の著者が放つ七篇。

「コードネームは保留」
楽器店で働く優香は、人知れず“殺し屋”の設定を生きることで、
味気ない日々をこなしていた。

「タイムマシンに乗れないぼくたち」
新しい街に馴染めない「ぼく」は、太古の生物が好きで、博物館が唯一落ち着く場所だった。
ある日、博物館で“現実逃避”をしているスーツ姿の男性と出会い――

「深く息を吸って、」
息をひそめるように日々を過ごすかつての「きみ」に、私は語りかける。

「対岸の叔父」
町いちばんの変わり者、それがぼくの叔父さんだった。

孤独と「戦う」わけではなく、また「乗り越える」でもなく、
仲良く手を繋いでとまではいかないけれども、
孤独とちょうどよい距離を保ちながらともに生きていこうとするような、
そういう人びとの物語を書きました。
――寺地はるな

作品データ

タイトル:『タイムマシンに乗れないぼくたち』
著者:寺地はるな
出版社:文藝春秋
発売日:2022/2/8

作家紹介

寺地はるな(てらち・はるな)

1977年佐賀県生まれ。 大阪府在住。
2014年『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞しデビュー。
他の著書に『わたしの良い子』、『大人は泣かないと思っていた』、『正しい愛と理想の息子』、『夜が暗いとはかぎらない』、『架空の犬と嘘をつく猫』などがある。

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寺地はるなの作品紹介

『ビオレタ』(2017年1月)
『今日のハチミツ、あしたの私』(2017年3月)
『みちづれはいても、ひとり』(2017年10月)
『架空の犬と嘘をつく猫』(2017年12月)
『大人は泣かないと思っていた』(2018年7月)
『正しい愛と理想の息子』(2018年11月)
『夜が暗いとはかぎらない』(2019年4月)
『わたしの良い子』(2019年9月)
『希望のゆくえ』(2020年3月)
『水を縫う』(2020年5月)
『やわらかい砂のうえ』(2020年7月)
『彼女が天使でなくなる日』(2020年9月)
『どうしてわたしはあの子じゃないの』(2020年11月)
『ほたるいしマジカルランド』(2021年2月)
『声の在りか』(2021年5月)
『雨夜の星たち』(2021年6月)
ガラスの海を渡る舟』(2021年9月)
タイムマシンに乗れないぼくたち』(2022年2月)
『カレーの時間』(2022年6月)

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