『ソリティアおじさんがいた頃』村司侑 あらすじと感想|時間を止めていたのは、誰?


【2026年89冊目】
今回ご紹介する一冊は、
村司侑 著
『ソリティアおじさんがいた頃』です。
人生の現状維持にモヤモヤしている人
あらすじと感想
わたしはあの人のことを、どれだけ知っていたのか?
働かないおじさんが自分を映す鏡になる、人生岐路の物語です
やることないと、時間が長くないですか?
主人公の『わたし』はお味噌を作る会社で店頭販売を担当する30代の女性です
ある朝、出社すると会社はざわついています・・黒野田さん、亡くなったって!
火災事故で亡くなったのは定年退職した大先輩でした
そして彼はわたしがひそかに『ソリティアおじさん』と呼んでいた、働かないおじさんだったのです
それほど親しくなかったけど、ひょんな成り行きから黒野田さんのお通夜に行くことになったわたしは、これまたひょんな成り行きから喪主である娘と話すこととなります
聞かれるがままに答えるわたしに彼女は、同棲している彼と別れるように言うんだが・・わたしは一体どうすればいいんだろう?
方言(京都弁かな?)で書かれる本作は、なにかフワフワとしたとらえどころのない感じで独特な雰囲気があります
とらえどころがないのは主人公のわたし(瑠奈さん)も同じです
話が進むにつれ、同棲するニートな彼氏のこと、結婚のこと、出産のこと、そして今の仕事内容などに不満と不安を抱いているが、とりあえずペンディング状態で、惰性的なようすが明らかとなります
そんな時、お通夜にゆく
お通夜や葬儀の席で、故人を偲び・想い、その生き方を自分に重ね合わせて、自らの来し方を顧みることがあるでしょう
瑠奈はきっと、働かなくなった黒野田さんのことを思い返し、その理由を想像し、自分と彼氏に重ね合わせてみたことでしょう(僕の勝手な想像です)
さてお通夜でソリティアおじさんこと黒野田さんの娘とおしゃべりした瑠奈は、彼と別れることにする

きっぱりとした決断が、あっぱれです
自分の時を止めていたのは、自分自身
難しい決断の後の、新しい生活を予感させる、そんなラストシーンでした

あなたの会社には、ソリティアおじさんがいませんか?
作品紹介(出版社より)
人生を切りひらく決断と成長の一手
京都にある味噌製造会社につとめるわたし。ある冬の寒い朝、出勤すると社内のあちこちでささやかされる噂にになつかしい名前を聞く。
「亡くならはってん、黒野田さん」
かつてわたしが心のなかでこっそり「ソリティアおじさん」呼ばわりしていた人が死んだ。
「火事やってんて」
ひょんなことからソリティアおじさんの通夜に参列したわたしは、ずるずると交際の続く恋人、将来の見通しのたたない仕事、それぞれに踏ん切りをつけるためある決断を下す。
軽妙な京都弁で女性の内面を鮮やかに描き、誰にでもある変わらぬ日常におとずれる些細な変化こそが、人生の行き先を変える様を控えめに、けれど確かに物語る胸に染み入る傑作小説。第175回芥川賞候補作。
ソリティアのように無数の選択肢がある人生で、わたしが選んだ次の一手。クリアとなるか、手詰まりか。
作品データ
タイトル:『ソリティアおじさんがいた頃』
著者:村司侑
出版社:文藝春秋
発売日:2026/7/7
作家紹介
村司侑(むらし・ゆう)
1979年生まれ。九州大学文学部卒業。京都府在住。
村司侑の作品紹介
『ソリティアおじさんがいた頃』2026/7/7


