【感想】『##NAME##』児玉雨子|いやらしい視線で、私を晒さないで

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##NAME##|児玉雨子

ケイチャン

ケイチャン

【2023年107冊目】

今回ご紹介する一冊は、

児玉雨子 著

『##NAME##』です。

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【感想】「いやらしい視線で、私を晒さないで」

第169回 芥川賞候補作

子どもの私は
ポルノスターだったの?
ジュニアアイドルだった過去が
今も私を苛むんだ・・
癒えない心の傷を受け入れる
ひとりの女性の物語です

わたしはタレントになりたい!
母(子をタレントにしたい!)

テレビで雑誌で広告で
幸福そうに微笑み
美しい容姿で
人々の視線を誘う、タレントたち

現代の花形の職業でしょう
憧れてしまいますよね

もしスカウトされたら
子どもは、私ワンチャン行けるかも?
と思うし
親は、この子ひょっとしたら?
と期待することでしょう

でも
光り輝く場所は
闇もまた濃い

小学生高学年の雪那(せつな)ちゃんは
スクール水着での写真撮影に怯える
大きなカメラを持った大人が怖い
その視線が嫌なの!

着ているのはスクール水着だから
オーケー
でもアイスキャンデーを渡されて
舐めることは・・アウトじゃない?

ジュニアアイドルたちの闇
それは性的対象としての一面から
逃れられないこと
わたしをそんな目で見ないで!

「いやらしい視線で、私を晒さないで」

ジュニアアイドルの活動は大変
オーディションに行けば
かわいい子がうじゃうじゃいるから
落選が続き、ストレスが溜まる

けど大変だけじゃない
仲の良い友達が出来る
美砂乃だから、ミサって呼んで
雪那ちゃんのこと、ユキって呼ぶから

ジュニアアイドル時代は
雪那ちゃんにとって
悪いことばかりの
闇だけではなかったのです

子どもの性的被害を描く本作
ただ批判するのだけではなく
性的被害って何だろう?
と疑問も投げかけています

それが大人になった雪那さんの趣味
BLです
人気漫画の2次創作を愛する
でも2次元だから良くて
3次元のリアルだとダメってことで
いいのかな?

性的衝動はどこまで許されるのか?
そもそも我々人間は生物であり
繁殖が生命の目的なのだから
性的な事柄から切り離せるはずありません

何がどこまで良くて
どこからが悪いのか?
答えのない命題のようです

さて雪那さんは大人になっても
ジュニアアイドル時代の過去を晒されて
友達にハブられたり
バイトをクビになったりします

でもジュニアアイドル時代を
闇だけにしたくはない

そこで出てくるのが
改名です

雪那という名前を捨てるが
新しく選んだ名前は
かつての、そして今でも
大切な友達が呼んでくれた、名前でした

過去を捨てるのではなく
受け入れる
ひとりの女性の
成長の物語でもあります

人から見られて
どう思われるかが
気になりますよね
自然体で立っていられる
そんな風に僕はなりたいものです

作品紹介(出版社より)

光に照らされ君といたあの時間を、ひとは”闇”と呼ぶ――。かつてジュニアアイドルの活動をしていた雪那。少年漫画の夢小説にハマり、名前を空欄のまま読んでいる。第169回芥川賞候補作

作品データ

タイトル:『NAME』
著者:児玉雨子
出版社:河出書房新社
発売日:2023/7/14

作家紹介

児玉雨子(こだま・あめこ)

1993年神奈川県出身。

2011年静岡朝日テレビ「コピンクス!」主題歌「カリーナノッテ」で作詞家デビューを果たし、大学在学中もプロの作詞家として大きくキャリアを広げる。

2015年より雑誌「月間Newtype」などで小説連載を開始。提供アーティストはモーニング娘。アンジュルム、つばきファクトリー、近田春夫、斉藤壮馬など多数。

児玉雨子の作品紹介

『誰にも奪われたくない/凸撃』2023/7/14
##NAME##』2023/7/14

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