【感想】『我が手の太陽』石田夏穂|傲慢な自信が、命とり

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我が手の太陽|石田夏穂

ケイチャン

ケイチャン

【2023年106冊目】

今回ご紹介する一冊は、

石田夏穂 著

『我が手の太陽』です。

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【感想】「傲慢な自信が、命とり」

職人小説

第169回 芥川賞候補作

熟練の溶接工は悩む
なぜ俺の腕は落ちてしまったのか?
がむしゃらに働く
現代の職人の物語です

どうしてこんな失敗を
しちゃうんだろう?

ニッチな世界から
世の真理を付くのが
石田夏穂の特徴ですが
今回の舞台はなんと
『工事現場』です

金属の溶接・溶断の加工を行う
溶接工が主人公です
勤続20年のベテラン、伊東さん
自他ともに認める、エース職人です

ところがある検査員に
失敗を指摘されてから
調子が狂ってしまう
ミスが続くなか
とうとう大失態を犯し
大切な工事現場から
追い出されてしまうのだ!

いったい俺はどうしたんだ?

「傲慢な自信が、命とり」

はしばしから伺える
不遜さと傲慢さ
俺は仕事が出来る!
俺は偉いのさ!

職人気質が過ぎる伊東さん
その仕事への自信が鼻につく
嫌なヤツです
いやいや、工事現場は
みんなの協力で回ってるんだよね?

結果、不注意や思い込みで
ちょいちょい失敗を犯すのだが
どうも他人のせいにしたり
現場の不備を言い訳にしたりと
やっぱり嫌なヤツなのです

自分ひとりが
仕事しているわけじゃないんだよ

そして謎の検査員
伊東さんの失敗を予見し
混乱へと導く
存在が不確かな人物です

終わりになって
この検査員は
伊東が失敗を恐れるあまり
作り出した存在のように
思いました

不遜で傲慢なのは
人一倍失敗を恐れる心の
裏返しだったのかも知れません

だってこの仕事は危険だもん

高温の溶接機械を使用する
ちょっとしたミスが
大ケガに繋がる職業で
しかも溶接光で目を傷めたり
粉塵で肺を傷めたりします

仕事に誇りを持ついっぽう
心のどこかで
危険な仕事を恐れ
辞めたがっているようにも
僕は思えました

40代のベテラン職人をとおして
仕事の情熱、練度、責任感
そして中堅世代の悩みを描いた
お仕事小説

石田夏穂の持ち味である
コミカルさを排除したところも
ザ・職人の一本気!
といった感じでした

あなたも仕事熱心のあまり
天狗になっては
いませんか?

作品紹介(出版社より)

第169回芥川賞候補作。
鉄鋼を溶かす高温の火を扱う溶接作業はどの工事現場でも花形的存在。その中でも腕利きの伊東は自他ともに認める熟達した溶接工だ。そんな伊東が突然、スランプに陥った。日に日に失われる職能と自負。野球などプロスポーツ選手が陥るのと同じ、失った自信は訓練や練習では取り戻すことはできない。現場仕事をこなしたい、そんな思いに駆られ、伊東は……。

“「人の上に立つ」ことにまるで関心がなかった。
自分の手を実際に動かさないのなら、それは仕事ではなかった。”
”お前が一番、火を舐めてるんだよ”
”お前は自分の仕事を馬鹿にされるのを嫌う。
お前自身が、誰より馬鹿にしているというのに”

腕利きの溶接工が陥った突然のスランプ。
いま文学界が最も注目する才能が放つ異色の職人小説。

作品データ

タイトル:『我が手の太陽』
著者:石田夏穂
出版社:講談社
発売日:2023/7/13

作家紹介

石田夏穂(いしだ・かほ)

1991年埼玉県出身。東京工業大学工学部卒。
2021年「我が友、スミス」でデビュー、第45回すばる文学賞佳作。

石田夏穂の作品紹介

我が友、スミス』2022/1/19
ケチる貴方』2023/1/26
黄金比の縁』 2023/06/05
我が手の太陽』 2023/07/13

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