『ノスタルジア』島本理生 あらすじと感想|過去と対峙せねば、未来は訪れない

【2026年51冊目】
今回ご紹介する一冊は、
島本理生 著
『ノスタルジア』です。
大切な人との別れや喪失感を抱えている
あらすじと感想
親から与えられたのは愛でなく
呪いだったのか?
書くことが出来なくなった女性作家と
犯罪者の母をもつ青年の遍歴の物語です
親の十字架を、子は持たねばならないのか・・
同居人を待つ作家、紗文(さあや)さん
からこの鎮魂歌のような物語は始まります
その青年は母親が殺人事件を起こした
犯罪加害者家族であり、しかも母が信じた
新興宗教の宗教2世でもあるのだ
・・どうしてそんな人と暮らすの?
現れたのは、明るく軽やかな雰囲気の青年
創(そう)くんです
一見、コミュニケーション能力に長けて
屈託のないかんじだが
・・紗文は彼に何を感じたのか?
私は創くんと暮らします!
40歳手前の紗文と20歳半ばの創は
孤独な魂が惹かれ合うように
同居を始めるのだが、実は紗文は
忘れられない恋愛を引きずっていたんだ
これでもかという重いハンディキャップを
背負う主人公に最初は若干引き気味でしたが
創くんの明るい様子に助けられて
読み進めることが出来ました
年の差カップルの初々しさに、ニヤニヤ
あっという間に惹かれ合い
距離を縮める2人の様子に
ドキドキ(笑)
さすが恋愛小説の旗手、島本理生
恋愛パートの絶妙なやりとりには
グイグイとのめり込みます
さて物語が進む内に明らかとなるのが
紗文の生い立ちと、過去のこと
なんと犯罪者家族で宗教2世の創に
負けず劣らずの重い十字架を背負っていたのです

うわ~、シンドイ!!
不幸な2人の過去に、同情するしかありません
もう付き合って、幸せになっちゃえよ!と
願うばかりだが、そう簡単には行きません
最後の試練を乗り越えなければ・・
過去と向き合うことを決意する、紗文
そして2人はイギリスに旅立ち
それぞれのトラウマと対峙します
物語の各所で、この非現実的な
『呪い的なもの』を幻視する
緊迫のシーンがあります
これが物語を引き締めている
過去と向き合い、再び書くことが
出来るようになった紗文のもとへ
同じく過去を清算した創が戻って
来るシーンで物語は終わります

穏やかなハッピーエンドに温かい気持ちになりました
重い罪を背負った2人が
過去と向き合い未来に進む
孤独な魂が触れ合う
慈しみ深い再生の物語でした
作品紹介
書けなくなった作家の女と、5年前に消えた最愛の人。そして、殺人事件の加害者を家族にもつ青年。孤独な魂が惹かれあうとき、この世ならざる景色が見える――。直木賞作家の新境地!
「間違ったものに一度でも救われたら、それもすべて間違いだと思いますか?」
書けなくなった作家の女と、5年前に消えた最愛の人。そして、殺人事件の加害者を家族にもつ青年。孤独な魂が惹かれあうとき、この世ならざる景色が見える――。直木賞作家の新境地!五年ほど新しい作品を書けずにいる小説家の紗文は、知人の紹介で、東京に出てきたばかりの創という若者を家に泊めることになった。創は、殺人事件の加害者を母に持つ素性が周囲に知られ、住む場所も職場も失っていた。人当たりのいい創との共同生活は順調だったが、紗文の周りで常識を超えた不可思議な現象が起こり始めて――。
作品データ
タイトル:『ノスタルジア』
著者:島本理生
出版社:河出書房新社
発売日:2026/4/23
作家紹介
島本理生(しまもと・りお)
1983年東京生れ。
1998年「ヨル」で「鳩よ!」掌編小説コンクール第二期10月号当選(年間MVP受賞)。
2001年「シルエット」で群像新人文学賞優秀作を受賞。
2003年「リトル・バイ・リトル」で野間文芸新人賞を受賞。
2018年『ファーストラヴ』で直木賞を受賞。
著書に『シルエット』『リトル・バイ・リトル』『生まれる森』『ナラタージュ』『一千一秒の日々』『あなたの呼吸が止まるまで』『クローバー』『波打ち際の蛍』『君が降る日』『真綿荘の住人たち』『あられもない祈り』『アンダスタンド・メイビー』などがある。
島本理生の作品
『シルエット』(2001年10月)
『リトル・バイ・リトル』(2003年1月)
『生まれる森』(2004年1月)
『ナラタージュ』(2005年2月)
『一千一秒の日々』(2005年6月)
『大きな熊が来る前に、おやすみ。』(2007年3月)
『あなたの呼吸が止まるまで』(2007年8月)
『クローバー』(2007年11月)
『波打ち際の蛍』(2008年7月)
『君が降る日』(2009年3月)
『真綿荘の住人たち』(2010年2月)
『あられもない祈り』(2010年5月)
『アンダスタンド・メイビー』(2010年12月)
『七緒のために』(2012年10月)
『よだかの片想い』(2013年4月)
『週末は彼女たちのもの』(2013年8月)
『Red』(2014年9月)
『匿名者のためのスピカ』(2015年7月)
『夏の裁断』(2015年8月)
『イノセント』(2016年4月)
『わたしたちは銀のフォークと薬を手にして』(2017年6月)
『ファーストラヴ』(2018年5月)
『あなたの愛人の名前は』(2018年12月)
『夜 は お し ま い』(2019年10月)
『2020年の恋人たち』(2020年11月)
『星のように離れて雨のように散った』(2021年7月)
『憐憫』(2022年11月)
『天使は見えないから、描かない』2025/1/29
『一撃のお姫さま』2025/6/12
『ノスタルジア』2026/4/23


