【感想】『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』窪美澄|私は知らないことばかりだったんだ!

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タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース|窪美澄

ケイチャン

ケイチャン

【2023年17冊目】

今回ご紹介する一冊は、

窪美澄 著

『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』です。

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【感想】「才能とは諸刃のナイフ、激しく振れば自分をも切り裂いてしまう」

限界団地での青春小説

たとえ古いボロボロの団地でも
ここが私の育った大切な場所なんだ!
都会で見捨てられた少女の
成長を描く瑞々しい物語です

かつて人々の憧れであった
ニュータウンの団地は
時を経て、今にも
朽ち果てようとしていた

そこで暮らす姉と
夜間高校に通う妹、みかげ
父は死に
母は5年前に男と出ていき
毎日を何とかやりくりする
限界すれすれの日々です

老人と引きこもりばかりの
限界団地での生活が
暗く沈むように描かれます
でも私はここでしか生きて行かれない・・

そんなみかげに転機が訪れる
それがみかげを強引に『団地警備員』
にしたおじいさんの、ぜんじろうと
夜間高校の2人の友達だった

まだ精神的に幼く
貧困で余裕ない日々を送る
みかげが
ぜんじろうに連れまわされることで
自分の周りに目を向け
初めて出来た友達と交流することで
人と交わる喜びを知る過程が描かれる

しかし知ることは
良い事ばかりでない

お姉ちゃん・・

毎夜遅くに疲れ切って帰ってくる
姉の七海(ななみ)
その過酷な仕事内容を知り
姉が自分のために
大きな犠牲を払っていることに
みかげは気が付きます
これではお姉ちゃんが壊れちゃう!

「私は知らないことばかりだったんだ!」

登場人物は
ネグレクトをうける子供
外国籍
吃音者
そして独居高齢者
社会からはじかれてしまった
人々です

社会の輪から出てしまった
あるいは強制退場させられた
社会的弱者の
苦悩が痛々しい

そこに真正面から立ち向かう
ぜんじろうさんに感化されて
みかげたち少年少女が
自分以外に目を向けて
成長してゆく姿に
心を打たれます

そしてこの物語の
ひとつの大きなテーマとして
『死』
が取り上げられています

社会の輪から弾き出されて選ぶ
自殺
孤独死

老朽化した団地に住む
やがて死にゆく高齢者たちと
みかげら若者を鮮やかに対比させて
死ぬがゆえに
生が映えることを
見事に描いています

まだ花咲く前の
硬いつぼみのような
みかげたちが
じょじょに色を付けて
膨らんでゆく・・
そんなイメージのラストシーンに
再生への希望が見えるようでした

作品紹介(出版社より)

都心の古ぼけた団地で、姉と二人つましく暮らすみかげ。時代の吹きだまりのような場所で、明るい未来が思い描けず「死」に惹かれる彼女の前に団地警備員を名乗る老人が現れ、日常は変わり始めていく―。

作品データ

タイトル:『タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』
著者:窪美澄
出版社:筑摩書房
発売日:2022/12/19

作家紹介

窪美澄(くぼ・みすみ)

1965年東京生まれ。
2009年「ミクマリ」で女による女のためのR-18文学賞大賞を受賞。
受賞作を収録した『ふがいない僕は空を見た』が、本の雑誌が選ぶ2010年度ベスト10第1位、2011年本屋大賞第2位に選ばれる。

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窪美澄の作品紹介

『ふがいない僕は空を見た』(2010年7月)
『晴天の迷いクジラ』(2012年2月)
『クラウドクラスターを愛する方法』(短編集)
『アニバーサリー』(2013年3月)
『雨のなまえ』(短編集)(2013年10月)
『よるのふくらみ』(短編集)(2014年2月)
『水やりはいつも深夜だけど』(短編集)(2014年11月)
『さよなら、ニルヴァーナ』(2015年5月)
『アカガミ』(2016年4月)
『すみなれたからだで』(短編集)(2016年10月)
『やめるときも、すこやかなるときも』(2017年3月)
『じっと手を見る』(2018年4月)
『トリニティ』(2019年3月)
『いるいないみらい』(短編集)(2019年6月)
『たおやかに輪をえがいて』(2020年2月)
『私は女になりたい』(2020年9月)
『ははのれんあい』(2021年1月)
『朔が満ちる』(2021年7月)
朱より赤く: 高岡智照尼の生涯』(2022年1月)
夜に星を放つ』(2022/5/2)
夏日狂想』(2022/9/29)
タイム・オブ・デス、デート・オブ・バース』(2022/12/19)

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