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ケイチャン
【2024年130冊目】
今回ご紹介する一冊は、
坂崎かおる 著
『海岸通り』です。
もくじ
【感想】「あなたはわたしを知らない」
老人ホームで働く清掃員のわたし
センパイの後任は、・・え!
ウガンダ人?・・まあ、いいんじゃない♪
国境と価値観を超える友情の物語です
僕たちは日本人ですから
朝鮮や中国の人たちと一緒くたにされ
例えば『アジア人』なんて呼ばれたら
ちょっとムッとしちゃうでしょうね
ゆるい職場が気に入っている
マイペースな私こと、クズミさん
わりといい加減な先輩が辞めて
やってきたのがウガンダ人の
若い女性、マリアさんです
日本語、わかりますか?
だいたいわかりますと言うマリアさん
教わることをいちいちメモをとり
少しゆっくりめですが丁寧な仕事をする
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・・なかなか良い人が来たじゃん♪
やがて2人は仕事を越えて仲良くなり
マリアさんの勧めでクズミさんもアフリカ人
コミュニティにも参加するようになる
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ケイチャン
・・ちょっと距離感がわからないけどねw
だがコロナ禍で経営悪化になってしまった
人員削減で首を切られるのは
イメージの悪い方なのか?
その時はわたしは何を思えばいいの・・
さて主人公のクズミさんは
品行方正ではありません
自己中心的で手癖が悪い
正しくない主人公です
それに比べてマリアさんは
無垢で純真なイメージで
人員削減ではクズミさんが首になり
マリアさんが継続雇用となります
実はしたたかで欲もあるマリアさん
老人ホームの備品をちょろまかして
いたのも実は彼女の仕業と発覚します
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ケイチャン
・・けど、それがなんなのさ?
マリアさんが首になると聞き
なぜかブチ切れるクズミさん
アンタがマリアの何を知っている?
勝手なイメージを裏切られたからって
そもそも外国人を低賃金でいいように
使っているオマエらが偉そうに
何を言っているんだ!
ブチ切れたクズミさんが
雄叫びながら踊るシーンは
スカッとするカタルシスがある
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ケイチャン
でも感情が高ぶって踊ることは
普通ですよね
ちょっとズレた普通を持つクズミさんと
一見純真そうで、実は謎めいた深さを持つ
異邦人のマリアさんのコンビから
僕らが抱くフツーの感覚が
狭い世界のものだと気が付きます
入居者を騙すかのように置かれた
このバス停の存在が清潔に居心地
良くしつらえたこの老人ホームの
欺瞞を表しています
欺瞞だらけの世界で
生きているんですから
ちょっとくらい手癖が悪くても
みんなと上手くやれなくっても
いいですよね!
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それが普通でしょ
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ケイチャン
みんながみんなを
分かり合っているのが
前提条件のこの社会を
それっておかしくない?
と、問いかけるようでした
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ケイチャン
自分が首になるときに
キレてくれる同僚って
最高ですよね
そんな同僚があなたに
いますか?
作品紹介(出版社より)
第171回芥川賞候補作。
踊る、それがわたしたちの自由
海辺の老人ホームに集う女たちのゆるやかなつながり。
いま最も注目される新鋭の最新作。
「これってフツー?」
「わたしの中じゃね」
「クズミさんのフツー、ちょっとヘン」(本文より)
海辺の老人ホーム「雲母園」で派遣の清掃員として働くわたし、クズミ。
ウガンダから来た同僚マリアさん。
サボりぐせのある元同僚の神崎さん。
ニセモノのバス停で来ないバスを毎日待っている入居者のサトウさん。
さまざまな人物が、正しさとまちがい、本物とニセモノの境をこえて踊る、静かな物語。
作品データ
タイトル:『海岸通り』
著者:坂崎かおる
出版社:文藝春秋
発売日:2024/7/10
作家紹介
坂崎かおる(さかざき・かおる)
1984年、東京都生まれ。
2020年、「リモート」で第1回かぐやSFコンテスト審査員特別賞を受賞。
2022年、「噓つき姫」で第4回百合文芸小説大賞受賞、「あたう」で第28回三田文学新人賞佳作受賞。
坂崎かおるの作品紹介
『嘘つき姫』2024/3/27
『海岸通り』2024/7/10