【本の感想】『鬼の哭く里』中山七里|ムラの空気が、思考を停止させる

142 views
鬼の哭(な)く里|中山七里

ケイチャン

ケイチャン

【2024年89冊目】

今回ご紹介する一冊は、

中山七里

鬼の哭く里です。

PR

【感想】「ムラの空気が、思考を停止させる」

伝奇ホラー&サスペンス

山に棲まう鬼が叫ぶとき
また1人、村人が祟り殺される
古い因習に縛られた村の
パニックを描く物語です

呪いの謎を解き明かせ!

戦後間もない混乱期に
大事件が起こるところから
この暗い物語が始まります

夏祭りのあとの夜、満月が照らす中を
鋭く研ぎ澄ました鎌と鍬(くわ)で
落ちぶれた大地主が村人6人を惨殺する
狂気に満ちた凄惨な描写が続く

山に逃げ込んだ男は
その後の山狩りでも発見されず
村人たちは彼が鬼になったと噂する
以後その山は鬼哭山と呼ばれます

その後、嵐の夜に鬼の叫びが聞こえると
人が死ぬようになる・・鬼伝説の始まりです

ケイチャン

ケイチャン

そして時は移り変わり、令和の現代へ

東京から移住者が訪れる
折しも時はコロナ禍の真っただ中
閉鎖的な村人たちはこの新しい住民を
冷ややかに迎えます

しばらくの後、嵐が来て
鬼が哭き、人が死に
さらに村中にコロナ感染がまん延する

プーくん

プーくん

・・きっと、奴のせいだ!

パニックに陥った村人たちは
ただよそ者だからという理由で
この不幸の原因を移住者である
麻宮(あさみや)の責任と断定する

物語は麻宮の隣家である
中学2年の裕也(ゆうや)くんの視点で
排他的で感情で動く村人と
都会的な理性で考える麻宮を対比しつつ
村を襲う脅威の謎を追っていく

「ムラの空気が、思考を停止させる」

暗く重い村を覆う空気が、しんどいです
・・こんな村から出てってやる!
と、密かに決心する裕也くんに
共感を覚えます

高圧的な父親とそれに盲従する母親
村人たちは同調圧力に抗うことなく
ただ批判されないように生きている
過疎地なのにマスクして農作業する姿が
彼らの思考停止の様子をよく表しています

そこに颯爽と現れたのが
真っ赤なスポーツカーに乗った
都会からの移住者ですから
裕也くんの心は村から離れてしまう

いっぽう移住者の麻宮にも
疑惑の影がチラつきます
彼はホントに無実なのか?
何か悪い目的があって村にやって来たのか?

次第に暴徒化してゆく村人たちに
狂気を覚えるころ
やってくるのが大型台風です
また鬼が叫び、人が死に
そして謎が解き明かされる・・

伝奇小説のおどろおぞましい雰囲気と
鬼伝説の謎解きのミステリー要素が
程よくミックスされた作品となっています

ケイチャン

ケイチャン

中山作品らしいスピード感で
一気読みは必至ですね

ケイチャン

ケイチャン

しっかりとどんでん返しも用意されて
座り心地のよいラストシーンに納得です

ケイチャン

ケイチャン

古い因習が漂う姫野村
あなたはこんな村に
移住してみたいと
思いますか?

作品紹介(出版社より)

殺人鬼の咆哮が轟き、村人がまた祟り殺された
岡山県姫野村。人口 300人にも満たないこの限界集落は、令和の現在も70余年前の呪縛を恐れていた。村人6人を惨殺した巌尾利兵衛の呪いにより、数年に一度、村にある鬼哭山から利兵衛の咆哮が轟き、村人を殺すというのだ――。
新型コロナ感染症でパニックに陥る最中、一人の男が東京から移住してきたことをきっかけに、呪いの犠牲者と思しき死者が出てしまい……。想像できない結末が読者を待つ本格伝奇推理!

作品データ

タイトル:『鬼の哭く里』
著者:中山七里
出版社:光文社
発売日:2024/5/15

作家紹介

中山 七里 (なかやま・しちり)

1961年、岐阜県生れ。
『さよならドビュッシー』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2010年にデビュー。
音楽を題材とした「岬洋介」シリーズほか、「御子柴礼司」シリーズ、「刑事犬養隼人」シリーズなど、著書多数。

PR

中山七里の作品紹介

『さよならドビュッシー』(2010年1月)
『おやすみラフマニノフ』(2010年10月)
『連続殺人鬼カエル男』(2011年2月)
『魔女は甦る』(2011年5月)
『さよならドビュッシー前奏曲– 要介護探偵の事件簿』(2011年10月)
『贖罪の奏鳴曲– 御子柴礼司』(2011年12月)
『静おばあちゃんにおまかせ』(2012年7月)
『ヒートアップ』(2012年9月)
『スタート!』(2012年11月)
『いつまでもショパン』(2013年1月)
『切り裂きジャックの告白– 刑事犬養隼人』(2013年4月)
『七色の毒– 刑事犬養隼人』(2013年7月)
『追憶の夜想曲– 御子柴礼司』(2013年11月)
『アポロンの嘲笑』(2014年9月)
『テミスの剣』(2014年10月)
『月光のスティグマ』(2014年12月)
『嗤う淑女』(2015年2月)
『ヒポクラテスの誓い』(2015年5月)
『総理にされた男』(2015年8月)
『闘う君の唄を』(2015年10月)
『ハーメルンの誘拐魔– 刑事犬養隼人』(2016年1月)
『恩讐の鎮魂曲– 御子柴礼司』(2016年3月)
『どこかでベートーヴェン』(2016年5月)
『作家刑事毒島』(2016年8月)
『ヒポクラテスの憂鬱』(2016年9月)
『セイレーンの懺悔』(2016年11月)
『翼がなくても』(2017年1月)
『秋山善吉工務店』(2017年3月)
『ドクター・デスの遺産– 刑事犬養隼人』(2017年5月)
『ネメシスの使者』(2017年7月)
『ワルツを踊ろう』(2017年9月)
『逃亡刑事』(2017年12月)
『護られなかった者たちへ– 宮城県警シリーズ』(2018年1月)
『悪徳の輪舞曲– 御子柴礼司』(2018年3月)
『連続殺人鬼カエル男ふたたび』(2018年5月)
『能面検事』(2018年7月)
『TAS特別師弟捜査員』(2018年9月)
『静おばあちゃんと要介護探偵』(2018年11月)
『ふたたび嗤う淑女』(2019年1月)
『もういちどベートーヴェン』(2019年3月)
『笑え、シャイロック』(2019年5月)
『死にゆく者の祈り』(2019年9月)
『人面瘡探偵』(2019年11月)
『騒がしい楽園』(2020年1月)
『帝都地下迷宮』(2020年2月)
『夜がどれほど暗くても』(2020年3月)
『合唱 岬洋介の帰還』(2020年4月)
『カインの傲慢– 刑事犬養隼人』(2020年5月)
『ヒポクラテスの試練』(2020年6月)
『毒島刑事最後の事件』(2020年7月)
『テロリストの家』(2020年8月)
『隣はシリアルキラー』(2020年9月)
『銀齢探偵社静おばあちゃんと要介護探偵2』(2020年10月)
『復讐の協奏曲– 御子柴礼司』(2020年11月)
『境界線– 宮城県警シリーズ』(2020年12月)
『ラスプーチンの庭』(2021年1月)
『ヒポクラテスの悔恨』(2021年5月)
『能面検事の奮迅』(2021年7月)
『嗤う淑女 二人』(2021年9月)
『おわかれはモーツァルト』(2021年12月)
鑑定人 氏家京太郎』(2022年1月)
『人面島』(2022年3月)
作家刑事 毒島の嘲笑』(2022年7月)
越境刑事』(2022年9月)
特殊清掃人』( 2022年11月)
祝祭のハングマン』(2023年1月)
殺戮の狂詩曲』 (2023年3月)
能面検事の死闘』(2023年5月)
『いまこそガーシュウィン』(2023年9月)
『こちら空港警察』(2023年11月)
『絡新婦の糸 警視庁サイバー犯罪対策課』(2023年11月)
『彷徨う者たち– 宮城県警シリーズ』(2024年1月)
有罪、とAIは告げた』(2024年2月)
『ヒポクラテスの悲嘆』(2024年3月)
『鬼の哭く里』(2024年5月)
『ドクター・デスの再臨』(2024年5月)
ヒポクラテスの悲嘆』2024/3/6
鬼の哭く里』2024/5/15

好きな端末で読書をはじめよう

ケイチャン

ケイチャン

小説もビジネス書も、200万冊以上自分の好きな端末でで読めるよ!

本を読みたいけれど、重くてかさばるから持ち運ぶのは…とお悩みの方にはAmazonの「Kindle Unlimited」がおすすめです。自分のスマホ・PC・タブレットで利用可能。特にスマホはいつでもどこでも、片手で読めるから便利ですよ!まずは30日間の無料体験からはじめてみてはいかがですか?

【Kindle Unlimited】200万冊以上が読み放題!30日間の無料体験はこちらから▼

オーディオブックで本を聴こう
ケイチャン

ケイチャン

小説もビジネス書も、12万以上の対象作品が聴き放題!

本を読みたいけれど、活字を読むのは少し苦手、忙しい中でのスキマ時間が活用できれば…とお悩みの方にはAmazonの「Audible」がおすすめです。Audibleはプロのナレーターが朗読した本をアプリで聞けるサービス。これなら移動中や作業中などいつでもどこでも読書ができます!今なら30日間の無料体験ができます!まずは無料体験のお試しからはじめてみてはいかがですか?

【Audible】12万以上の対象作品が聴き放題!30日間の無料体験はこちらから▼

PR
カテゴリー:
タグ:
関連記事