ケイチャン
【2023年97冊目】
今回ご紹介する一冊は、
中山七里著
『能面検事の死闘』です。
もくじ
【感想】「復讐の刃は、なぜ弱者に向かうのか?」
能面検事シリーズ第3作目
あんな鬼畜が英雄なのか?
無差別殺人事件を起こしたのは
ロスジェネ世代の引きこもり無職
そんな彼を釈放せよと
今度は無差別爆破事件が起こるのだ
ロストジェネレーション世代の悲哀
バブル崩壊の余波を受けて
就職氷河期に世に出た世代
正規雇用に恵まれず
非正規雇用の方が多い
僕もこの世代に当たります
正社員になれず
実家に引きこもる
独身、無職で中年となり
この先、希望などありやしない
そんな『無敵の人』が起こしたのが
岸和田駅への襲撃です
通勤時間でごった返す駅へ
ワゴン車で突っ込み
ナイフを振るう
7名死傷の大惨事となる
ところがこんな彼を
見捨てられたロスジェネ世代の英雄!
と祭り上げる者たちがいる
彼を釈放せよ、と
今度は無差別爆破事件を起こすのだ
二番目の敵、ロスト・ルサンチマンとは?
検察に届けられた
郵便物が爆破する
同様にいくつもの爆破物が
検察や警察に届けられる
これは社会全体に対するテロだ!
社会に復讐するんだ!
と、言いつつも
犠牲者の多くは
老人、女性、子供という
弱者です
本気で復讐するのなら
霞が関とか
警視庁とか
社会の中心に攻め込むべきでは?
(行政へのテロを勧めているわけではない)
弱い者が、さらに弱い者を
痛めつけるところに
無差別殺人犯の
心の弱さと身勝手さが
透けて見えます
そんな彼が英雄だなんて
よく思えるもんだ
さて本書では
無差別殺人犯を出獄させようとする
ロスト・ルサンチマンに対して
能面検事こと、不破俊太郎は
違和感を覚えます
ロスト・ルサンチマンの
本当の目的は、何なのだ?
復讐するは、我にあり
悲劇がさらなる悲劇を呼ぶ
復讐のロンドに
不破検事の冷徹な視線が注がれる
全てを見通すその目が
写した風景とは、いかに?
凄惨な事件が現実にも起こっています
その度に殺人者が英雄と祭り上げられる
そんな風潮に
筆者は『NO!』と言っているようです
本当の英雄とは
日々コツコツと真面目に生きる
我々一般市民のことだと
僕は思いますね
ニセモノの英雄が
要らない時代が来ると
いいな
作品紹介(出版社より)
南海電鉄岸和田駅にて、無差別殺人事件が発生。7名を殺害し能面検事の死闘た笹清政市(32)は、自らを失うもののなにもない”無敵の人”と称する。ネット上で笹清をロスジェネ世代の被害者だと擁護する声があがるなか、大阪地検で郵送物が爆発、6名が重軽傷を負った。被疑者〈ロスト・ルサンチマン〉は笹清の釈放を求める犯行声明を出す。事件を担当する大阪地検の不破俊太郎一級検事は、調査中に次の爆発に巻き込まれ――
連続爆破事件は止められるのか? 〈ロスト・ルサンチマン〉の真の目的は何なのか?
作品データ
タイトル:『殺戮の狂詩曲』
著者:中山七里
出版社:光文社
発売日:2023/5/24
作家紹介
中山 七里 (なかやま・しちり)
1961年、岐阜県生れ。
『さよならドビュッシー』で『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2010年にデビュー。
音楽を題材とした「岬洋介」シリーズほか、「御子柴礼司」シリーズ、「刑事犬養隼人」シリーズなど、著書多数。
中山七里の作品
『さよならドビュッシー』(2010年1月)
『おやすみラフマニノフ』(2010年10月)
『連続殺人鬼カエル男』(2011年2月)
『魔女は甦る』(2011年5月)
『さよならドビュッシー前奏曲– 要介護探偵の事件簿』(2011年10月)
『贖罪の奏鳴曲– 御子柴礼司』(2011年12月)
『静おばあちゃんにおまかせ』(2012年7月)
『ヒートアップ』(2012年9月)
『スタート!』(2012年11月)
『いつまでもショパン』(2013年1月)
『切り裂きジャックの告白– 刑事犬養隼人』(2013年4月)
『七色の毒– 刑事犬養隼人』(2013年7月)
『追憶の夜想曲– 御子柴礼司』(2013年11月)
『アポロンの嘲笑』(2014年9月)
『テミスの剣』(2014年10月)
『月光のスティグマ』(2014年12月)
『嗤う淑女』(2015年2月)
『ヒポクラテスの誓い』(2015年5月)
『総理にされた男』(2015年8月)
『闘う君の唄を』(2015年10月)
『ハーメルンの誘拐魔– 刑事犬養隼人』(2016年1月)
『恩讐の鎮魂曲– 御子柴礼司』(2016年3月)
『どこかでベートーヴェン』(2016年5月)
『作家刑事毒島』(2016年8月)
『ヒポクラテスの憂鬱』(2016年9月)
『セイレーンの懺悔』(2016年11月)
『翼がなくても』(2017年1月)
『秋山善吉工務店』(2017年3月)
『ドクター・デスの遺産– 刑事犬養隼人』(2017年5月)
『ネメシスの使者』(2017年7月)
『ワルツを踊ろう』(2017年9月)
『逃亡刑事』(2017年12月)
『護られなかった者たちへ– 宮城県警シリーズ』(2018年1月)
『悪徳の輪舞曲– 御子柴礼司』(2018年3月)
『連続殺人鬼カエル男ふたたび』(2018年5月)
『能面検事』(2018年7月)
『TAS特別師弟捜査員』(2018年9月)
『静おばあちゃんと要介護探偵』(2018年11月)
『ふたたび嗤う淑女』(2019年1月)
『もういちどベートーヴェン』(2019年3月)
『笑え、シャイロック』(2019年5月)
『死にゆく者の祈り』(2019年9月)
『人面瘡探偵』(2019年11月)
『騒がしい楽園』(2020年1月)
『帝都地下迷宮』(2020年2月)
『夜がどれほど暗くても』(2020年3月)
『合唱 岬洋介の帰還』(2020年4月)
『カインの傲慢– 刑事犬養隼人』(2020年5月)
『ヒポクラテスの試練』(2020年6月)
『毒島刑事最後の事件』(2020年7月)
『テロリストの家』(2020年8月)
『隣はシリアルキラー』(2020年9月)
『銀齢探偵社静おばあちゃんと要介護探偵2』(2020年10月)
『復讐の協奏曲– 御子柴礼司』(2020年11月)
『境界線– 宮城県警シリーズ』(2020年12月)
『ラスプーチンの庭』(2021年1月)
『ヒポクラテスの悔恨』(2021年5月)
『能面検事の奮迅』(2021年7月)
『嗤う淑女 二人』(2021年9月)
『おわかれはモーツァルト』(2021年12月)
『鑑定人 氏家京太郎』(2022年1月)
『人面島』(2022年3月)
『作家刑事 毒島の嘲笑』(2022年7月)
『越境刑事』(2022年9月)
『特殊清掃人』( 2022年11月)
『祝祭のハングマン』(2023年1月)
『殺戮の狂詩曲』 (2023年3月)
『能面検事の死闘』(2023年5月)