『楽園』夕木春央 あらすじと感想|悪には悪の、理屈がある


【2026年87冊目】
今回ご紹介する一冊は、
夕木春央 著
『楽園』です。
スリリングなどんでん返しミステリーが好きな人
あらすじと感想
ここは○○○たちの楽園だから、退場する条件は殺人をすることです←ええッ!
前代未聞の『逆』デスゲームの顛末を描く、どんでん返しミステリーです
人は殺しちゃっても、いいんだよw
主人公の康之(やすゆき)くんは親が残した不動産賃借料で生活している不労所得者です
ある時、賃借人の高齢女性が失踪してしまい、遺品整理中に気になる場所を発見します
そこへ恋人の沙織(さおり)ちゃんと旅行がてら出かけるところから物語はスタートします
山中を行くと現れるのが四方を険しい崖に囲まれた空間と建物群
2人が恐る恐る調査するとそこは・・・
*注意!)以下、物語の重要なネタバレとなります
この閉じた箱庭のような場所に住むのは6人の指名手配中の殺人者たちだった
そう!ここは犯罪者が安心して住める『殺人犯たちの楽園』だったのです
そして失踪した高齢女性は殺人犯を多頭飼育するマーダラーブリーダーであったのだ
しまった!トンデモナイ所に来てしまったー!
さて秘密を知られた6人の殺人犯は考えます
失踪した女性に代わって我々の面倒を見てくれる者が必要だ
どうしたらその役目を2人に担ってもらえるだろうか?
そうだ我々6人のうち誰かを殺してもらおう!
そうしたら我々7人は秘密を共有する仲間だから、裏切ることはないだろう・・
えええ?ムチャクチャなことになってきたー!
かくして殺される側が納得済みのデスゲームがスタートする
しかしこんなトンデモルールがはたして上手くいくのだろうか・・
デスゲームは通常、主人公が狩られるか殺し合うかという被害者的な立場になるが、本作は捕食者の立場で描かれているのが目新しいです
しかしデスゲームは、なかなか始まらない…それは康之が『優柔不断な主人公』だからです
極限状態であるにもかかわらず、常識や倫理感・順法精神に囚われ、くよくよと何もしない出来ない主人公にモヤモヤが止まりません

・・オマエ、早く殺せよ!←え!?と思ってしまいました笑
そうこうするうちに、なんとひとりふたりと殺人犯が殺されてゆく
いったい誰が何の目的で殺すのだろうか?
想定外の事態に動揺する康之が疑うのは、恋人の沙織です

物語の中盤から誰を信じてよいのかわからない緊迫感が漂い、ゾクゾクします
*注意!)以下、物語の核心的なネタバレとなります
殺人犯を殺していたのはやはり沙織だった
彼女の告白を聞き、康之も殺人犯のひとりを殺します
しかしそれは彼女の罠だった
康之の犯行を録画した沙織は真の目的を告げ、この楽園に自分も住むからよろしくね、と
康之にマーダラーブリーダー役を押し付けるのでした

いや~、驚きましたね~
信じられる味方と思っていた恋人が、実は敵側に近い黒幕だったという構図に、僕は度肝を抜かれました
エンディングで語られる沙織ちゃんの自分勝手な理屈は必読です

あっぱれなクズっぷりに、僕は彼女に惚れてしまいそうでした笑
トンデモ設定に負けない『逆』デスゲームの構図が目新しい
緊迫の心理ゲームにもドキドキする新感覚の極限ミステリーでした

あなたは楽園で楽しく暮らせそうですか?笑
作品紹介(出版社より)
殺人犯にならなければ脱出できない。
『方舟』『十戒』の著者が仕掛ける“禁忌の驚き”
亡き両親から不動産を譲り受けた康之は、失踪した賃借人・海原の遺留品整理の際に、群馬の山奥の謎の物件の存在を知る。そこは、切り立った岩壁に囲まれた、「楽園」と呼ばれる奇妙な場所だった。恋人の沙織と一緒にそこを訪ね、探索をはじめた康之たちは、すぐに六人の“住人”に拿捕された。脱出のための条件はーー
「誰か一人を殺さなければならない」『方舟』
第19回オリコン上半期”本”ランキング 文庫ランキングTOP10 第1位
週刊文春ミステリーベスト10 第1位 (「週刊文春」2022年12月8日号)国内部門
MRC大賞2022 第1位『方舟』+『十戒』の累計発行部数が100万部突破。
――夕木春央が描く、極限のクローズド・サークル。
作品データ
タイトル:『楽園』
著者:夕木春央
出版社:講談社
発売日:2026/7/23
作家紹介
夕木 春央(ゆうき・はるお)
2019年「絞首商会の後継人」で第60回メフィスト賞を受賞。同年、改題した『絞首商會』でデビュー。
近著に『サーカスから来た執達吏』がある。
夕木 春央の作品紹介
『絞首商會 』(2019年09月)
『サーカスから来た執達吏 』(2021年09月)
『方舟』(2022年09月)
『十戒』 2023/08/09
『楽園』2026/7/23


