ケイチャン
【2023年86冊目】
今回ご紹介する一冊は、
砂村かいり 著
『黒蝶貝のピアス』 です。
もくじ
【感想】「上手くいかないと、悲しくなるんだ」
かつて憧れた元アイドルの下で働く
ここでなら私はやっていけるかもしれない・・
前職でつまずき傷心した環(たまき)の
仕事と仲間と恋を描く物語です
職場は仕事だけで終わらない
会社には様々なタイプの
人間が集まりますね
それが若い女性となれば
仕事だけやってりゃいいとは
残念ながらなりません
男と女が集まれば
どうしたって仕事を超えた
恋愛的な問題が起こってしまう
人間関係を拗らせた環ちゃんは
逃げるように会社を辞めるのでした
人間関係は距離感が大切
目を疑うような求人に驚く環ちゃん
このデザイン会社の社長は？
幼い頃にピアスを貰った
サディスティックバタフライの
アゲハじゃないのか！
こうしてちっちゃなデザイン事務所で
２番目の仕事を始める環ちゃんだが
やはり悩みは仕事だけじゃなく
人間関係です
かつて憧れた元アイドルの社長・・
アイドルやってましたよね？
私、ファンでした！
なんて言って、引かれやしないのか・・
そして元アイドルの社長
デザイナーNARIこと菜里子(なりこ)も
人間関係に傷つき悩む
現代の働く女性なのでした
環ちゃんと菜里子さんの
パートが交互に進む物語は
それぞれに悩み苦しむ
女性の姿が綴られます
かつての挫折から
序盤は少しおとなしめな環ちゃんですが
徐々に仕事に慣れ自信をつける過程が
新入社員の活躍を見守るようです
がんばれ、環ちゃん！
一方で容姿に優れ
デザイナーとして活躍し
順風満帆のような菜里子さんだが
仕事と家族と恋人に
様々なトラブルを抱える
こちらも悩める人間でした
トラブルが次々と顕在化し
その度に右往左往し
傷つく・・
がんばれ、菜里子さん！
そんな破綻しそうな
菜里子さんの精神を
なんとか繋ぎとめるのは
恋人でも家族でもなく
ただの従業員である
環ちゃんでした
繊細な心情描写が
登場人物たちを
等身大の人のように
身近に感じさせます
ちっちゃなことでも
上手くいかないと
悲しくなっちゃうのが
僕たち人間でしょう
しかしそこで慰め支え合うのが
真の人間関係というものでしょう
そしてそれは家族や恋人に限らない
部下だっていいのだ
結ばれてゆく絆に
暖かい気持ちになれる物語でした
作品紹介（出版社より）
前職で人間関係につまずき、25歳を目前に再び就職活動をしていた環は、小さなデザイン会社の求人に惹かれるものがあり応募する。面接当日、そこにいた社長は、子どもの頃に見た地元のアイドルユニットで輝いていた、あの人だった──。
アイドルをやめ会社を起こした菜里子と、アイドル時代の彼女に憧れて芸能界を夢見ていた環。ふたりは不器用に、けれど真摯に向き合いながら、互いの過去やそれぞれを支えてくれる人々との関係性も見つめ直してゆく。年齢、立場、生まれ育った環境──全てを越えた先の物語。
作品データ
タイトル：『黒蝶貝のピアス』
著：砂村かいり
出版社：東京創元社
発売日：2023/4/19
作家紹介
砂村かいり（すなむら・かいり）
2020年、『炭酸水と犬』『アパートたまゆら』で、第5回カクヨムWeb小説コンテスト恋愛部門〈特別賞〉を二作同時受賞。翌年デビュー。
軽やかな筆致と丁寧に書き込まれた人物造形で織りなす人間ドラマが魅力の注目の新鋭。他の著作に『黒蝶貝のピアス』がある。
砂村かいりの作品紹介
『炭酸水と犬』 2021/03/18
『アパートたまゆら』 2021/03/18
『黒蝶貝のピアス』 2023/04/19