『月白』宇佐美まこと あらすじと感想|弱き者を守ることに、理由はいらない

【2026年26冊目】
今回ご紹介する一冊は、
宇佐美まこと 著
『月白(げっぱく)』 です。
歴史的背景のミステリーが好き、人間ドラマや心理描写が好き
あらすじと感想
彼女はどうして男5人も殺したのか?
戦後混乱期の連続殺人事件を巡る
守られなかった者たちを描く
慟哭の物語です
弱い者が守られない時代があった
この仕事をうけるべきなのか?
悩むのがライターの海老原さん
しかし父子家庭ではフルタイムで
働けずフリーになったばかりで
仕事を選り好みしている場合ではない
連続殺人鬼、北川フサ
戦後の混乱期の闇市を震撼させた
連続殺人事件を起こした女性です
4人を匕首(あいくち)でメッタ刺し
最後の1人は角材でボコ殴りで撲殺した
5人の男の命を奪った伝説の殺人犯です
・・1人だけ殺し方が違うのは、なぜ?
調査を進めるうちにたどり着いたのが
北川フサと行動を共にしていた
戦災孤児の靖男(やすお)くん
なんと彼はまだ在命していたんです
91歳となった靖男に取材を試みるも
あえなく失敗する海老原
だが、ひと言引き出すことが出来た
・・北川フサを動かしたもの
それは『憎しみ』である、と・・
もう1人の主人公である戦災孤児の靖男
ここから物語の軸は東京大空襲で家族の
大半を失い、姉と共に戦災孤児となった
靖男の地獄のようなサバイバルを描く
戦後混乱期が舞台となります
もっとも弱い者から死ぬ時代
誰も助けてくれない
国も見捨てた、いらない者
それが戦災孤児です
過酷過ぎる内容に心が引き裂かれる
子どもの次に弱いのが、女性です
親に売られる者、性的に狙われる者
彼女たちの運命を脅かし
意のままにするのが、男たちです
国も助けてくれない
特殊慰安婦施設協会(RAA)という
国の政策にも怒りを覚えます
アメリカに頼まれていないのに
進んで女性を差し出すなんて
愚かで屈辱じゃないか!
戦後混乱期のパートは
子供にとって、大人とは?
女性にとって、男性とは?
本来守ってくれるべき存在から
疎まれあるいは搾取される
厳しい時代の状況が描かれます
そして本作のもう1つのテーマが『憎しみと許し』です
全てを憎んでいた、北川フサ
自分を許せなかった、靖男
そんな2人の生きざまから
海老原が学んだことそれが・・
無条件の愛、でした

子供は愛されるべき存在ですよね
戦後混乱期に見捨てられた
弱き子供と女性たち
憎しみの昇華と許しの尊さを描く
不幸の先の物語でした

敗戦というのはとんでもない出来事だったんですね!
どうか2度とそんな事態が起こらないことを願っています
作品紹介(出版社より)
妻を亡くし、息子の夏樹を一人で育てるフリーライターの海老原。そんな彼に雑誌『月刊クリスタル』編集部から、戦後の殺人鬼が起こした事件をもう一度掘り下げて検証してほしいとの依頼が入った。殺人鬼の名前は北川フサ。彼女は戦後の混乱期に5人の男を立て続けに殺し、死刑となっているという。取材を始めた海老原は、フサが赤の他人である少年とともに行動していたことを知る。そして、その当時の少年は、今も存命だった。単なる週刊誌の連載のはずが、いつしか海老原は、フサに導かれるように、事件に没入していく……。
作品データ
タイトル:『月白』
著者:宇佐美まこと
出版社:朝日新聞出版
発売日:2026/1/7
作家紹介
宇佐美まこと(うさみ・まこと)
1957年愛媛県生まれ。
2006年「るんびにの子供」で第1回「幽」怪談文学賞短編部門を受賞しデビュー。
2017年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞。
著書に『入らずの森』『角の生えた帽子』『死はすぐそこの影の中』『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』 『月の光の届く距離』『夢伝い』『ドラゴンズ・タン』 『逆転のバラッド』などがある。
宇佐美まことの作品紹介
『るんびにの子供』(2007/5/1)
『虹色の童話』(2008/6)
『入らずの森』(2009/3)
『愚者の毒』(2016/11)
『角の生えた帽子』(2017/9/22)
『死はすぐそこの影の中』(201/10)
『熟れた月』(2018/2/15)
『骨を弔う』(2018/6/28)
『少女たちは夜歩く』(2018/10)
『聖者が街にやって来た』(2018/12/6)
『恋狂ひ』(2019/3)
『展望塔のラプンツェル』(2019/9/18)
『黒鳥の湖』(2019/12/11)
『ボニン浄土』(2020/6/16)
『夜の声を聴く』(2020/9)
『羊は安らかに草を食み』(2021/1/7)
『子供は怖い夢を見る』(2021/9/29)
『月の光の届く距離』(2022/1/18)
『夢伝い』(2022年5月)
『ドラゴンズ・タン』(2022年9月)
『逆転のバラッド』(2023/2/15)
『ボニン浄土』 2023/7/6
『鳥啼き魚の目は泪』2023/7/19
『誰かがジョーカーをひく』2023/11/29
『月白』2026/1/7


