【感想】『ドラゴンズ・タン』宇佐美まこと|何度も生まれ変わるが、なかなか出会えない

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ドラゴンズ・タン|宇佐美まこと

ケイチャン

ケイチャン

【2022年143冊目】
今回ご紹介する一冊は、
宇佐美まこと 著
『ドラゴンズ・タン』です。

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【感想】「何度も生まれ変わるが、なかなか出会えない」

歴史転生ダークファンタジー

古代中国の漢帝国の時代
西域シルクロードの小王国で
引き裂かれた恋人たちが
幾度も転生を繰り返し
すれ違い又巡り合う物語です

2人を引き裂いたもの
それが『竜舌』ドラゴンズ・タンと呼ばれる
世と人の破滅を願う呪いです

僕は思春期のころに読んだ
鈴木光司の『楽園』が忘れられなく
輪廻転生の末に巡り合う男女の物語ってのが
大好きなんです
第1章を読み終えた時
あっコレ好きなヤツだわ~
と膝を打ちました

「何度も生まれ変わるが、なかなか出会えない」

メインテーマは『竜舌』破滅の呪いです
呪い見届け人として不老不死の悪者が登場しますが
こいつによって2人は何度も殺され
なかなか結ばれません

荒々しい古代から
因習に縛られた中世の唐・明の時代へ
さらに軍靴の音高鳴る近代の魔都上海に
そしてとうとう呪いが具現化する現代へと
物語は進みます

呪いに立ち向かい、そして破れ死ぬ
粛々と死を受け入れる生まれ変わり達は
一瞬の生を懸命に駆け抜けます
その小ささと儚さに目まいする思いです

これに相対する不老不死の虚無との対比が
死ぬべき運命の人の輝きを増す
生きて死ぬ定めの人を描いた
大河ドラマのような小説でした

あなたにも何度死んでも
また出会い直す
そんな運命の人がいたら
素敵ですよね

作品紹介(出版社より)

古の中国で、世界を滅ぼしたいという男の怨念から生まれた「竜舌」。古井戸に宿る奇異な生命体は漢、唐、明……と時代を経ながら歴史のはざまで姿を現しては暗躍し、人知れず不気味な存在へと変貌して行く。そして、時は満ちた――。愛と「禍」を描く、悠久の刻を越えたネオロマンスにして、因果の巡るホラーサスペンス!

作品データ

タイトル:『ドラゴンズ・タン』
著者:宇佐美まこと
出版社:新潮社
発売日:2022/9/15

作家紹介

宇佐美まこと(うさみ・まこと)

1957年愛媛県生まれ。
2006年「るんびにの子供」で第1回「幽」怪談文学賞短編部門を受賞しデビュー。
2017年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞長編および連作短編集部門を受賞。
著書に『入らずの森』『角の生えた帽子』『死はすぐそこの影の中』『熟れた月』『骨を弔う』など。

宇佐美まことの作品紹介

『るんびにの子供』(2007/5/1)
『虹色の童話』(2008/6)
『入らずの森』(2009/3)
『愚者の毒』(2016/11)
『角の生えた帽子』(2017/9/22)
『死はすぐそこの影の中』(201/10)
『熟れた月』(2018/2/15)
『骨を弔う』(2018/6/28)
『少女たちは夜歩く』(2018/10)
『聖者が街にやって来た』(2018/12/6)
『恋狂ひ』(2019/3)
『展望塔のラプンツェル』(2019/9/18)
『黒鳥の湖』(2019/12/11)
『ボニン浄土』(2020/6/16)
『夜の声を聴く』(2020/9)
『羊は安らかに草を食み』(2021/1/7)
『子供は怖い夢を見る』(2021/9/29)
月の光の届く距離』(2022/1/18)
『夢伝い』(2022年5月)
ドラゴンズ・タン』(2022年9月)