『けんぐゎい』浅倉かすみ あらすじと感想|どう生きるかは、人が決めること


【2026年117冊目】
今回ご紹介する一冊は、
浅倉かすみ 著
『けんぐゎい』です。
ルッキズムや家父長制、女性の生きづらさをテーマにした重厚な作品に関心がある人
あらすじと感想
江戸時代の子女には人権がなくて
当然なの??
生まれつき持つハンディキャップと
時代の空気に抗う女性の物語です
物語から発する熱量に、圧倒される
下町の長屋に住むシングルマザーの家庭から物語は始まります
美しいが惚れっぽく身勝手な、おっかあ(母親)と
スイッチが入ると勢いよくしゃべりだし止まらない
りよ(妹)と3人暮らしの女所帯です
痘痕面(あばたづら)という運命に生きる
ふゆ(主人公)は幼少の頃、疱瘡(天然痘ウイルス)にかかり
危ういところで一命をとりとめるも、酷い痘痕面となってしまった
・・わたしは結婚なんて、できない
運命を受け入れて、諦めて・・でもそれでいいのだろうか?
ふゆは手習いの師匠の手伝いに、りよは下女の奉公に出る
2人の姉妹はそこでそれぞれ、さらに過酷な運命と向き合うのだ
べらんめえ口調とでもいうのか、独特な語り調の文章に驚きました
江戸の下町で生きる庶民たちの息づかいや、生活臭が漂うようです
さて仕事に出た2人の姉妹ですが、そこの主人から当然のように
手籠め(レイプ)されてしまいます
泣きながら家に帰ってきた妹のりよに対して母親が
そんなこと気にするんじゃないよ!と一喝するシーンが、怖いよ
さらに妊娠した姉のふゆに対して主人は堕胎するように命令する
強制連行のごとく連れられた産院でふゆは、運命の出会いをする
・・あなたを待っていた、と女医師に言われたふゆは自分の運命に
抗うことを決意するのだ
誰にとっての『圏外』なのか?
タイトルの『けんぐゎい』とは圏外の意味です
あばたづらのふゆはそのルックスによって
人とはみなされないのだ
現代のルッキズムに通じるものがありました
そもそも人とみなされるのが、男だけ
女は男に従い隷属すべきものという
男尊女卑な時代の空気があります
今の時代でもちょっと残っていますよね
黒と白の、内面世界
ルッキズム、男尊女卑、女性というだけで生き辛い
ふゆの中での葛藤が描かれます
作中で『真白と真黒のふうちゃん』と書かれる
内面世界での自問自答が、作品を深くしている
女医の後を継いだふゆは、ここで『けんぐゎい』と
言われた女たちの生活拠点を作ることにする
後半はふゆたちの『国造り』の様子が描かれます
産院では出産にともなう生き死にがある
生きるか死ぬかは、神様が決めること
しかし、どう生きて死ぬかは、自分で決めるんだ・・
独特なべらんめえ調で描かれる
女性たちの建国記
差別に抗うことを選んだ
力強い物語でした

物語から発せられる女たちの熱量に圧倒されました
燃えるように生きるのって、スゴイですね!

あなたは熱量を発して、生きていますか?
作品紹介(出版社より)
第175回直木賞受賞作
利発だが酷い痘痕の姉ふゆ。逆上せ癖で縹緻よしの妹りよ。幼くして父を亡くし、ふゆは手習師匠の手伝いに、りよは船宿の下女奉公に出された。師匠の養子で禍々しいほどに歪んだ性癖をもつ宗三郎から手籠めにされたふゆは懐妊するが、現人神と崇められる女医者と出逢い、彼女の人生は大きく変わっていく。 自我に目覚めた主人公が、女の生と向き合う、時代小説の新しい扉!
作品データ
タイトル:『けんぐゎい』
著者:浅倉かすみ
出版社:光文社
発売日:2026/4/22
作家紹介
浅倉かすみ(あさくら・かすみ)
北海道生れ。
2003年に「コマドリさんのこと」で北海道新聞文学賞を、2004年に「肝、焼ける」で小説現代新人賞を受賞。
2005年、『肝、焼ける』で単行本デビュー。
2009年に『田村はまだか』で吉川英治文学新人賞を受賞した。
他に『ロコモーション』『夏目家順路』『声出していこう』『てらさふ』『地図とスイッチ』『恋に焦がれて吉田の上京』『静かにしなさい、でないと』『少しだけ、おともだち』『満潮』『遊佐家の四週間』『乙女の家』など著書多数。
浅倉かすみの作品
『肝、焼ける』2005/11/1
『田村はまだか』2008/2/21
『ロコモーション』2009/1/21
『静かにしなさい、でないと』2009/9/25
『ぜんぜんたいへんじゃないです。』2010/3/19
『声出していこう』2010/8/19
『夏目家順路』2010/10/14
『とうへんぼくで、ばかったれ』2012/5/22
『幸福な日々があります』2012/8/3
『少しだけ、おともだち』2012/10/25
『泥酔懺悔』2012/11/1
『てらさふ』2014/2/13
『遊佐家の四週間』2014/7/24
『わたしたちはその赤ん坊を応援することにした』2015/2/10
『乙女の家』2015/2/20
『植物たち』2015/12/8
『たそがれどきに見つけたもの』2016/2/23
『少女奇譚 あたしたちは無敵』2016/6/2
『ぼくは朝日』2018/11/5
『平場の月』2018/12/13
『にぎやかな落日』2021/4/21
『よむよむかたる』2024/9/19
『けんぐゎい』2026/4/22


