【本の感想】『カット・イン/カット・アウト』松井玲奈|振付のない、フォーメーションダンス

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松井玲奈『カット・イン/カット・アウト』とチーズナン

ケイチャン

ケイチャン

【2025年76冊目】

今回ご紹介する一冊は、

松井玲奈 著

『カット・イン/カット・アウト』です。

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【本の感想】「振付のない、フォーメーションダンス」

芸能小説

私は誰のために演じているんだろう?
鳴かず飛ばずのベテラン女性俳優と
元子役のアイドルの2人を中心とする
芸能界に携わる人々の群像劇です

優雅に泳ぐ白鳥の、足たち

第1幕は50代の女優まち子さんの
演劇に生きるストイックな生活から
スタートします
あだ名はその体型から、マル子さん
・・誰も本当の名前で呼んでくれない

そんな彼女が代役でチャンスを掴む

ひとつ飛ばして第3幕
元国民的子役として活躍したものの
成長した今は人気いまひとつのアイドル
ももちゃんが悩み傷つき壊れてゆき
降板する様子が描かれます

運命が交差し、反転する2人
それぞれのステージが入れ替わった2人は
なにを思い、そして
どう生きていくんだろうか・・

「振付のない、フォーメーションダンス」

演技に対するスタンスが違う2人
それは芸能という世界に
どう入ったかという違いでもありました

自らの意思で選んだ、まち子さんと
ステージママに連れられた、ももちゃん

物語は、ももちゃんの降板で
代役として成功したまち子さんと
ひとつの躓きから立ち直れず
ズブズブ沈む、ももちゃんの姿が
対比されるように進みます

でも2人に共通するのは
自分の人生に対する、違和感です
この日々はわたしに合っているのか
この場所はわたしの居場所なのか?

そして運命は再び交差する

2度目の公演で再会する
まち子さんと、ももちゃん
しかし運命は変わらず
前回をなぞるように進んでしまう

居場所を変えようよ!

いくつもの試練を経て
自分の居場所を探す人たちの物語

ケイチャン

ケイチャン

また演技というシビアな世界の
厳しさと喜びも味わえました

ケイチャン

ケイチャン

演技する人たちを支える
人たちの活躍にも触れていて
TVで観るひとコマにも
多くの人たちの協力に
支えられているんだなって思いました

人生に振付なんてない
踊っていて隣の人とぶつかることもある

ケイチャン

ケイチャン

けど、その時はまた
支え合って再び踊りだせるといいですね

ケイチャン

ケイチャン

あなたは今の場所で
楽しく
踊れていますか?

作品紹介(出版社より)

あの日、演劇(フィクション)のような、人生が始まった。

著名な劇作家・野上が主宰する劇団の新作公演初日まで、残り3週間。
晴れてヒロインに選ばれた元国民的子役のアイドル・中野ももは、
野上の厳しい指導に応えることができず、徐々に追い詰められていた。
長年売れず、端役を手にすることしかできなかったとある中年の女優は、
中野ももが憔悴していく様子を気に掛ける。
そして、やってきた公演初日。
幕が上がった瞬間、二人の人生は大きく変わる!

俳優としても活躍する著者が3作目の舞台に選んだのは、「演劇」の世界。
二人の女性が織り成す関係は、ゆっくりと、繊細に、絡み合う。
現実にうちひしがれる絶望、強運を手にして舞い上がる歓び、突然やってくる予想外の衝撃。
幾つもの感情を抱えた先の終着点で、それぞれが決断した選択とは――。

「演じる」とは何かを問う、唯一無二の物語。

作品データ

タイトル:『カット・イン/カット・アウト』
著者:松井玲奈
出版社:小学館
発売日:2025/3/26

作家紹介

松井玲奈 (まつい・れな)

1991年7月27日生まれ。愛知県豊橋市出身。俳優・作家。
2019年『カモフラージュ』で作家デビュー。
小説に『累々』『カット・イン/カット・アウト』、エッセイに『ひみつのたべもの』『私だけの水槽』がある。

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松井玲奈の作品

『ひみつのたべもの』2021/4/20
『カモフラージュ』2019/4/5
『累々』2021/1/26
カット・イン/カット・アウト』2025/3/26

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