ケイチャン
【2022年83冊目】
今回ご紹介する一冊は、
宇佐見りん 著
『くるまの娘』です。
もくじ
【感想】「誰も彼もが完璧な人に、なれる訳ないんだ」
家族が壊れてゆく・・
厳格でかんしゃく持ちの父と
脳梗塞後遺症で心身を患ってしまった母
兄は家族を見捨てて出て行ってしまったが
未だ未成年者のかんこは、ここに留まらずにはいられない
物語は家族間のストレスで、上手く学校生活を送れなくなった
かんこの描写から始まります
ふっと気が付くと、次の授業が始まってしまっている
クラスメイトに置いて行かれたかんこは
屋上から身を投げる夢想をする
僕も子を持つ親だから分かります
親だからって、立派な訳ない
悩み・失敗し・判断を誤る、ちっぽけな人間なんだと
思春期の頃、子供は親のそんな姿に気が付き
軽蔑したり、呆れたりして、やがて
一人の人間として受け入れるのですが
こじれてしまうと、上手くいけないことがある
親子関係の再生は難しいものです
親に愛されず、子に過剰に愛を注いだが故に
嫌われてしまう・・かんこの父です
物語は祖母の葬式に車で向かう一家が
過去を振り返り、現在を見つめ治して
この不完全でもろい家族の関係を
受け入れていく過程が語られます
本書のテーマのひとつが『自立』と『依存』です
自立していることを美徳と称え
依存していることが軽蔑される今の世の中に
いやいや自立って難しいことだよ、人間そんなに強くないんだよ
ぶつかり合ったってしかたない、これはひとつの愛のカタチなんだ
不完全であるが故に寄り添って生きてゆく家庭を
冷静に批判しつつも、全否定はしない
過剰で繊細な少女の視点から、壊れてかけた家族の在り方を描く
ひび割れたガラスのような物語でした
あなたの家の窓にはヒビが入っていませんか?
ヒビが入るほど長く使った窓を
いたわってあげたいですね
作品紹介(出版社より)
17歳のかんこたち一家は、久しぶりの車中泊の旅をする。思い出の景色が、家族のままならなさの根源にあるものを引きずりだす。50万部突破の『推し、燃ゆ』に続く奇跡とも呼ぶべき傑作。
作品データ
タイトル:『くるまの娘』
著者:宇佐見りん
出版社:河出書房新社
発売日:2022/5/11
作家紹介
宇佐見りん(うさみ・りん)
1999年5月16日生まれ、静岡県出身。
2019年「かか」で、『第56回文藝賞』、『第33回三島由紀夫賞』を受賞。
2021年1月「推し、燃ゆ」が『第164回芥川龍之介賞・直木三十五賞』芥川賞を受賞。50万部を超えるベストセラーとなる。