【感想】『裂けた明日』佐々木譲|全てを投げうっても守るべき人がいる

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裂けた明日|佐々木譲

ケイチャン

ケイチャン

【2022年141冊目】
今回ご紹介する一冊は、
佐々木譲 著
『裂けた明日』です。

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【感想】「全てを投げうっても守るべき人がいる」

逃亡小説

圧政から脱出せよ!
追われる母娘を守るために
老境の身に鞭を打ち
ひたすら・・逃げるのだ

主人公が70代のおじいちゃんということで
話に入って行けるかなあと心配しましたが
さすが大ベテラン、佐々木譲
リアリティあふれる展開でグッと引き込まれました

舞台は近未来の日本
無謀な侵略戦争を行ったのち敗北し
占領軍との内乱状態にあります
極めて厳しい状況ですね

定年退職後ほぼ隠居状態の沖本おじいちゃんのもとに
母娘が助けを求めて逃げてくる
匿えば破滅は必至しかし沖本は迷わなかった
なぜならその母親はかつて愛した女の娘であったのだ

「全てを投げうっても守るべき人がいる」

かくして沖本おじいちゃんと母娘の3人は
命がけの逃避行が始まる
しかしか弱い老人と女と子供
いったいどうやって逃げるのか?

地味に地道に
逃げるのです

逃亡小説につきもののアクションシーンは
あんまりありません
え!見せ場がないだろう、ですって?
そこがイイんですよ笑

頼るのは己の人生経験で培った判断力のみ
無理はあんまりしない
危ないこともあんまりしない
ギリギリの縁を歩くのだ

福島県から軍事境界線を越えて
封鎖都市東京へと向かう一行
地道に電車とバスで移動します

必死の思いで辿り着いた東京だが
ここも安息の地ではなかった
内乱は激化し事態は急速に悪化する
もはや猶予はない

ウクライナ戦争でも
傍観しているうちに
あれよあれよといううちに
戦闘が激しくなり脱出できなかった人が
たくさんいるのではないでしょうか

楽観は許されない
沖本が選んだ決断は
自分を見捨てることでした
母娘だけ逃がし
結果、自らは非情の銃弾に血濡れることになる

大切な人を守るために命を捨てる
これこそ最高の最後ではないでしょうか
語られない文章の間に
沖本の満足した気持ちが
描かれているようでした

作品紹介(出版社より)

定年後の嘱託も辞め、独り暮らしの沖本信也。そこに幼い少女を連れた女性が現れた。テロと銃撃が横行する日本で、信也は二人を守り抜くと決意。役所勤めの経験を生かし、意外なルートで軍事境界線を突破、あらゆる危機を回避していく。だが、なぜそこまで身を懸けるのか? 緊迫の頂点で、秘めた言葉が血と嗚咽とともに迸る!

作品データ

タイトル:『裂けた明日』
著者:佐々木譲
出版社:新潮社
発売日:2022/8/18

作家紹介

佐々木譲(ささき・じょう)


1950年北海道生まれ。
1979年「鉄騎兵、跳んだ」で第55回オール讀物新人賞を受賞。
1990年『エトロフ発緊急電』で第43回日本推理作家協会賞長編部門、第8回日本冒険小説協会大賞、第3回山本周五郎賞を受賞。
2002年『武揚伝』で第21回新田次郎文学賞、
2010年『廃墟に乞う』で第142回直木賞を受賞。
2016年に第20回日本ミステリー文学大賞を受賞。
『ベルリン飛行指令』『制服捜査』『警官の血』『警官の条件』『沈黙法廷』『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

佐々木譲の作品紹介

『鉄騎兵、跳んだ』(1980/08/01)
『夜を急ぐ者よ』(1986/08/01)
『南の風にモーニン』(1987/03/01)
『犬どもの栄光』(1987/08/01)
『ベルリン飛行指令 (新潮ミステリー倶楽部)』(1988/10/01)
『仮借なき明日』(1989/01/01)
『エトロフ発緊急電 (新潮ミステリー倶楽部)』(1989/10/01)
『五稜郭残党伝』(1991/01/01)
『愚か者の盟約』(1991/07/01)
『ハロウィンに消えた (エコノミステリー)』(1991/09/01)
『サンクスギビング・ママ (SWITCH LIBRARY)』(1992/01/01)
『夜にその名を呼べば (ハヤカワ・ミステリワールド)』(1992/03/01)
『真夜中の遠い彼方 (扶桑社エクセレント・コミックス)』(1992/04/01)
『振り返れば地平線』(1982/09/01)
『ネプチューンの迷宮』(1993/08/01)
『きょうも舗道にすれちがう』(1994/02/01)
『雪よ荒野よ』(1994/10/01)
『勇士は還らず』(1994/10/01)
『ストックホルムの密使 (新潮ミステリー倶楽部)』(1994/10/01)
『いつか風が見ていた』(1985/04/01)
『昭南島に蘭ありや』(1995/08/01)
『飛ぶ想い (J’S SHORT STORY)』(1995/11/01)
『北辰群盗録』(1996/11/26)
『総督と呼ばれた男』(1997/06/26)
『ワシントン封印工作 (新潮ミステリー倶楽部)』(1997/12/01)
『ステージドアに踏み出せば』(1998/05/22)
『牙のある時間』(1998/08/01)
『鷲と虎 (角川書店冒険・サスペンス書き下ろし)』(1998/10/01)
『屈折率』(1999/12/01)
『武揚伝〈上〉』(2001/07/25)
『武揚伝〈下〉』(2001/07/25)
『黒頭巾旋風録』(2002/08/01)
『冒険者カストロ』(2002/09/05)
『疾駆する夢』(2002/10/01)
『帰らざる荒野』(2003/04/25)
『くろふね』(2003/09/01)
『ユニット』(2003/10/08)
『天下城 (上)』(2004/03/30)
『天下城 (下)』(2004/03/30)
『うたう警官』(2004/12/01)
『駿女』(2005/11/01)
『制服捜査』(2006/03/23)
『警察庁から来た男』(2006/12/01)
『警官の血 上巻』(2007/09/26)
『警官の血 下巻』(2007/09/26)
『わが夕張わがエトロフ―ルポ・エッセイ集』(2008/09/01)
『警官の紋章』(2008/12/01)
『幻影シネマ館』(2008/12/18)
『廃墟に乞う』(2009/07/15)
『暴雪圏』(2009/02/01)
『巡査の休日』(2009/10/18)
『北帰行』(2010/01/29)
『カウントダウン』(2010/09/25)
『婢伝五稜郭』(2011/01/07)
『季刊メタポゾン 第2号 (2011年春)』(2011/05/23)
『密売人』(2011/08/01)
『警官の条件』(2011/09/01)
『地層捜査』(2012/02/24)
『回廊封鎖』(2012/08/03)
『人質』(2012/12/17)
『代官山コールドケース』(2013/08/29)
『獅子の城塞』(2013/10/22)
『憂いなき街』(2014/04/26)
『砂の街路図』(2015/07/29)
『犬の掟』(2015/09/18)
『決定版 – 武揚伝(上)』(2015/11/21)
『決定版 – 武揚伝(中)』(2015/11/21)
『決定版 – 武揚伝(下)』(2015/11/21)
『冒険の森へ 傑作小説大全 13 飛翔への夢 (冒険の森へ 傑作小説大全13)』(2016/02/05)
『沈黙法廷』(2016/11/22)
『真夏の雷管』(2017/07/13)
『英龍伝』(2018/01/12)
『抵抗都市』(2019/12/13)
『図書館の子』(2020/07/17)
『降るがいい』(2020/08/27)
『雪に撃つ』(2020/12/15)
『帝国の弔砲』(2021/02/25)
偽装同盟』(2021/12/15)
裂けた明日』(2022/08/18)
『闇の聖域』(2022/11/02)

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