【感想】『偽装同盟』佐々木譲|占領下に刑事の矜持を貫けるか

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偽装同盟 |佐々木譲

ケイチャン

ケイチャン

【2022年40冊目】

今回ご紹介する一冊は、

佐々木譲 著

『偽装同盟』です。

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【感想】「占領下に刑事の矜持を貫けるか」

架空歴史警察小説

時は大正時代
日露戦争で負けて、ロシア帝国の属国となった
日本を描く前作『抵抗都市』の続編です

日露戦争で敗北
外交権と軍事権を失い
ロシアの占領下にある日本が舞台

ちょうどロシア軍の侵攻を受けている
ウクライナの状況が連想されます

主人公の新堂刑事は
退役軍人であり
戦争の記憶に苦しむこともあります

「占領下に刑事の矜持を貫けるか」

ロシアの帝都で革命の響きが高鳴るなか
日本に駐留しているロシア人たちの
緊張が高まります

そんな中おこった若い女性の殺害事件
下着にコートを羽織った姿で絞殺される
その陰には・・ロシア人の姿が
いったい彼女に何があったのか?

まずロシアの利益が優先され
新堂の捜査は難航します
横やりを入れてくるロシアに
うっぷんが溜まる捜査陣

殺害された女性、ミーリャこと三好真知子は
ロシアに憧れる若者として描かれています
ロシア語を勉強し、ロシア人の男性と交際したいと望む
占領者は強く豊かで心惹かれるのでしょう

いっぽうでやはり女性1人の生活は苦しい
語学もそれで食べてゆけるレベルになるのは難しく
仕事も安月給なうえ雑用ばかり・・
職業婦人として自立することは、かなわない

真知子殺害の犯人を追う、新堂の捜査を縦軸に
革命前夜のロシア本国の状況に緊迫する状況を絡めて
物語は進みます

長引く戦争でロシアの民衆は搾取され
帝室と政府への反発が高まってきました
ん・・
ウクライナ戦争と経済制裁でだんだん疲弊してきている
現在のロシアと被るものがありますね

ひょっとしたら僕らは第二次ロシア革命の
前夜にいるのかも知れません

さて、様々な制約を受けるも
刑事としての本分を貫こうと
新堂刑事は一心に捜査に向かいます

そして明かされる真犯人とは一体誰なのか?

ロシアのウクライナ侵攻で
民主主義の危機となっている今読みたい
占領下で生きる人々の物語です

作品紹介(出版社より)

「ナショナリズムの台頭、格差の拡大……
すぐれたエンターテインメント小説は時代の空気を反映する」
佐藤優氏(作家・元外務省主任分析官)推薦!

日露戦争に「負けた」日本。
ロシアの属国と化した地で、男は、警察官の矜持を貫けるのか。

日露戦争終結から12年たった大正6年。敗戦国の日本は外交権と軍事権を失い、ロシア軍の駐屯を許していた。3月、警視庁の新堂は連続強盗事件の容疑者を捕らえるが、身柄をロシアの日本統監府保安課に奪われてしまう。
新たに女性殺害事件の捜査に投入された新堂だったが、ロシア首都での大規模な騒擾が伝えられ……。
「もうひとつの大正」を描く、入魂の改変歴史警察小説、第二弾。

作品データ

タイトル:『偽装同盟』
著者:佐々木譲
出版社:集英社
発売日:2021/12/15

作家紹介

佐々木譲(ささき・じょう)


1950年北海道生まれ。
1979年「鉄騎兵、跳んだ」で第55回オール讀物新人賞を受賞。
1990年『エトロフ発緊急電』で第43回日本推理作家協会賞長編部門、第8回日本冒険小説協会大賞、第3回山本周五郎賞を受賞。
2002年『武揚伝』で第21回新田次郎文学賞、
2010年『廃墟に乞う』で第142回直木賞を受賞。
2016年に第20回日本ミステリー文学大賞を受賞。
『ベルリン飛行指令』『制服捜査』『警官の血』『警官の条件』『沈黙法廷』『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

佐々木譲の作品紹介

『鉄騎兵、跳んだ』(1980/08/01)
『夜を急ぐ者よ』(1986/08/01)
『南の風にモーニン』(1987/03/01)
『犬どもの栄光』(1987/08/01)
『ベルリン飛行指令 (新潮ミステリー倶楽部)』(1988/10/01)
『仮借なき明日』(1989/01/01)
『エトロフ発緊急電 (新潮ミステリー倶楽部)』(1989/10/01)
『五稜郭残党伝』(1991/01/01)
『愚か者の盟約』(1991/07/01)
『ハロウィンに消えた (エコノミステリー)』(1991/09/01)
『サンクスギビング・ママ (SWITCH LIBRARY)』(1992/01/01)
『夜にその名を呼べば (ハヤカワ・ミステリワールド)』(1992/03/01)
『真夜中の遠い彼方 (扶桑社エクセレント・コミックス)』(1992/04/01)
『振り返れば地平線』(1982/09/01)
『ネプチューンの迷宮』(1993/08/01)
『きょうも舗道にすれちがう』(1994/02/01)
『雪よ荒野よ』(1994/10/01)
『勇士は還らず』(1994/10/01)
『ストックホルムの密使 (新潮ミステリー倶楽部)』(1994/10/01)
『いつか風が見ていた』(1985/04/01)
『昭南島に蘭ありや』(1995/08/01)
『飛ぶ想い (J’S SHORT STORY)』(1995/11/01)
『北辰群盗録』(1996/11/26)
『総督と呼ばれた男』(1997/06/26)
『ワシントン封印工作 (新潮ミステリー倶楽部)』(1997/12/01)
『ステージドアに踏み出せば』(1998/05/22)
『牙のある時間』(1998/08/01)
『鷲と虎 (角川書店冒険・サスペンス書き下ろし)』(1998/10/01)
『屈折率』(1999/12/01)
『武揚伝〈上〉』(2001/07/25)
『武揚伝〈下〉』(2001/07/25)
『黒頭巾旋風録』(2002/08/01)
『冒険者カストロ』(2002/09/05)
『疾駆する夢』(2002/10/01)
『帰らざる荒野』(2003/04/25)
『くろふね』(2003/09/01)
『ユニット』(2003/10/08)
『天下城 (上)』(2004/03/30)
『天下城 (下)』(2004/03/30)
『うたう警官』(2004/12/01)
『駿女』(2005/11/01)
『制服捜査』(2006/03/23)
『警察庁から来た男』(2006/12/01)
『警官の血 上巻』(2007/09/26)
『警官の血 下巻』(2007/09/26)
『わが夕張わがエトロフ―ルポ・エッセイ集』(2008/09/01)
『警官の紋章』(2008/12/01)
『幻影シネマ館』(2008/12/18)
『廃墟に乞う』(2009/07/15)
『暴雪圏』(2009/02/01)
『巡査の休日』(2009/10/18)
『北帰行』(2010/01/29)
『カウントダウン』(2010/09/25)
『婢伝五稜郭』(2011/01/07)
『季刊メタポゾン 第2号 (2011年春)』(2011/05/23)
『密売人』(2011/08/01)
『警官の条件』(2011/09/01)
『地層捜査』(2012/02/24)
『回廊封鎖』(2012/08/03)
『人質』(2012/12/17)
『代官山コールドケース』(2013/08/29)
『獅子の城塞』(2013/10/22)
『憂いなき街』(2014/04/26)
『砂の街路図』(2015/07/29)
『犬の掟』(2015/09/18)
『決定版 – 武揚伝(上)』(2015/11/21)
『決定版 – 武揚伝(中)』(2015/11/21)
『決定版 – 武揚伝(下)』(2015/11/21)
『冒険の森へ 傑作小説大全 13 飛翔への夢 (冒険の森へ 傑作小説大全13)』(2016/02/05)
『沈黙法廷』(2016/11/22)
『真夏の雷管』(2017/07/13)
『英龍伝』(2018/01/12)
『抵抗都市』(2019/12/13)
『図書館の子』(2020/07/17)
『降るがいい』(2020/08/27)
『雪に撃つ』(2020/12/15)
『帝国の弔砲』(2021/02/25)
偽装同盟』(2021/12/15)

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