【感想】『滅私』羽田圭介|多様な価値観、何を選べばいい?

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羽田圭介『滅私』

ケイチャン

ケイチャン

【2022年20冊目】

今回ご紹介する一冊は、

羽田圭介 著

『滅私』です。

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【感想】「多様な価値観、何を選べばいい?」

現代文学

物欲に振り回される世界
様々なCMが僕らを誘惑する
流行の服
高級なブランド品
自動車、家
今よりももっと良いもの
新しく便利なもの
モノのレベルがアップすれば
僕らは幸せになれる・・と

本書は物欲へのアンチテーゼとともに
極端なこと、わかりやすいものへ
安易に飛びつく世相への
強烈な皮肉となっています

ミニマリスト
必要最低限の物だけで暮らす男
冴津(さえづ)が主人公です
無駄を嫌い、物を直ぐに捨ててしまう
目指すはシンプルな生活

一見素朴で心のゆとりがあるようですが
さにあらず、断捨離の強迫観念で
かえって生活が狭まっていくようすが
綴られていきます

そして現れるのは
冴津のかつての悪行を知る男
彼の登場により物語は不穏な
雰囲気が漂い始める

「多様な価値観、何を選べばいい?」

冴津くんは独善的で極端な性格です
しかし理性的でもある
自分の価値観に疑問を覚えて
度々これで良いのか?と振り返ります

モノに対する態度も少しづつ変化する
最初はとにかく捨ててしまう
美味しそうなメロンパンも
太るのは無駄なことと、開封せずポイ
返礼でいただいた高価な品も
あっても無駄じゃんと、箱ごとポイ
極端です。もはや呪いです

しかし交際相手との中国旅行で

気持ちに変化が訪れる
万里の長城はとてつもない無駄であるが
とてつもないがゆえに心を揺さぶるものがある
そして交際相手から貰ったささやかなプレゼントに
心を揺さぶられる・・彼女との結婚を意識する冴津

だがたとえ一緒にいても
違うことを考えているのが人間というもの
冴津が彼女との未来を真剣に考えていた時
交際相手は彼との別れを決断していた
だって一口食べただけの食べ物を
ポイっと捨てられる人と暮らしていけるわけないじゃん

彼女に振られて動揺する冴津
そう振られるということは
自分の人格を否定されるということ
その時彼のとった行動とは・・

わけのわからないモノを作ること

ここからストーリーは奇天烈な方向へと向かいます
究極の無駄な作業へ没頭する冴津
シンプルな生活を目指していたはずなのに
なんでこうなる?
もちろん無駄を楽しむのが人間だからです

おかしくなってきた冴津に
返って親近感が沸きます
おい!人間らしくなってきたじゃないか
と話しかけたくなるようになったその時

ドスンと訪れる予想外の結末
きっと何でこうなった?と思うことでしょう

あなたも断捨離生活を
始めてみますか?

作品紹介(出版社より)

必要最低限の物だけで暮らすライターの男。物だけでなく人間関係にも淡泊で、同志が集うサイトの運営と投資で生計を立て、裕福ではないが自由でスマートな生活を手に入れた。だがある日、その人生に影が差す。自分の昔の所業を知る人物が現れたのだ。過去は物ほど簡単には捨てられないのか。更新される煩悩の現在を鋭く描く。

作品データ

タイトル:『滅私』
著者:羽田圭介
出版社:新潮社
発売日:2021/11/30

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作家紹介

羽田圭介(はだ・けいすけ)

1985年、東京都生まれ。
2003年、高校在学中の17歲時に「黒冷水」で第40回文藝賞を受賞し、小説家デビュー。
明治大学商学部商学科卒。
2015年、「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞を受賞。
その他の著書に『走ル』『盗まれた顔』『メタモルフォシス』『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』『成功者K』『ポルシェ太郎』『Phantom』などがある。

羽田圭介の作品紹介

『黒冷水』(2005/11/1)
『不思議の国の男子』(2011/4/5)
『走ル』(2010/11/5)
『ミート・ザ・ビート』(2015/9/2)
『御不浄バトル』(2015/10/20)
『「ワタクシハ」』(2013/1/16)
『隠し事』(2016/2/8)
『盗まれた顔』(2014/10/9)
『メタモルフォシス』(2015/10/28)
『スクラップ・アンド・ビルド』(2018/5/10)
『コンテクスト・オブ・ザ・デッド』(2018/11/15)
『成功者K』(2017/3/9)
『5時過ぎランチ』(2018/4/20)
『ポルシェ太郎』(2019/4/12)
『Phantom』(2021/7/14)
滅私』(2021/11/30)

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