【感想】『ウクライナにいたら戦争が始まった』松岡圭祐|戦争が始まる?やめてよそんなの漫画やアニメの話でしょ笑笑

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ウクライナにいたら戦争が始まった|松岡圭祐

ケイチャン

ケイチャン

【2022年123冊目】
今回ご紹介する一冊は、
松岡圭祐 著
『ウクライナにいたら戦争が始まった』です。

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【感想】「戦争が始まる?やめてよそんなの漫画やアニメの話でしょ笑笑」

戦争小説

ウクライナで働く父のもとを訪れた家族
3ヵ月の短期留学を高校生らしい無関心を装いながら
琉唯(るい)は環境変化に少しわくわくとしていた
父が滞在する街のことを言う『田舎だがいいところだよ、
ブチャって街なんだ』

そこで戦争が始まったんだ

『高校事変』『JK』などの作品で女子高生ハードバイオレンス
とゆー新ジャンルを切り拓いた松岡圭祐ですが
本作はホントにフツーな女子高生がある日突然戦争に巻き込まれるという
リアリズム溢れるストーリーとなっています
しかも舞台は、あのブチャです

「戦争が始まる?やめてよそんなの漫画やアニメの話でしょ笑笑」

母と妹と共にウクライナへ来た琉唯
しかし父と母はケンカばかり
学校では友達もできず遊ぶ場所もない
時間と気持ちを持て余す日々
でもしょせん3ヵ月のことだしね~

いっぽうウクライナの政治状況は緊迫を増す
TVニュースやSNSは戦争が近いと警告を発するのだが
ブチャでの生活は平穏で退屈そのもの
最近ちょっと軍事車両が多いよね~

あぶない危ない!
これから起こる『ブチャの虐殺』を知る僕らは
とくに父の楽観的態度に、おいッ!とツッコミたくなる
そして状況は悪化の一途をたどるのです

日本政府から退避勧告が発令される
大慌てで空港へ行く琉唯一家
しかしそこで妹にコロナウイルスの陽性判定が出てしまい
飛行機に乗ることが出来なかったのです

家で待機するよう命じられ
すごすごとブチャに戻る琉唯一家
そこで始まるのが・・
ブチャの虐殺でした

ロシア軍の無差別攻撃を受けて
ブチャの街は地獄と化す
両親とはぐれた琉唯と妹は
惨劇の修羅場を、ただひたすら逃げる
生きるために!

仕事なんて放り出してとっとと逃げろよな~とか
待機指示なんて無視して脱出しろよな~とか
あなたも思うでしょう
しかしあなたにそれが出来ますか?

日常は堅固なものです
何も起こらなければ批判されることを
僕は出来ないかも知れません

いっぽうで日常は脆いもの
ウクライナ戦争がいつ始まるかなんて
あなたも予想出来なかったことでしょう

そう平和と戦争は別ものではない
日常とひと続きのもの
あるいは日常の一部分なのかも知れない

僕は以前パキスタンを旅行したことがあります
イスラマバードのホテルでクラブハウスサンドを食べながら
テレビニュースを観ていると銃撃戦の映像が流れていました
ホテルの人にこれってどこ?と聞くと
ああ、となりのブロックだよ。との答え

え、この街なの!俺のんきにメシ食ってて大丈夫?
大丈夫だったんです
戦闘がある、その時その場所に居なければ
普通の日常がある

この時、戦争の一旦に触れた気がしました
日常と戦争は同じ場所にあるんだと
決してはっきりと分かたれたものではないのだと

思いもよらない戦争に巻き込まれ
戦火をさまよう琉唯の姿は
明日のわが身かも知れない・・
そんなことを思いながら読みました

作品紹介(出版社より)

戦争なんて、遠い世界の話だと思っていた

単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。

作品データ

タイトル:『ウクライナにいたら戦争が始まった』
著者:松岡圭祐
出版社:KADOKAWA
発売日:2022/8/3

作家紹介

松岡 圭祐(まつおか・けいすけ)

1968年12月3日、愛知県生まれ。
1997年『催眠』で小説家としてデビュー、ミリオンセラーに。
「催眠」「千里眼」「万能鑑定士Q」の三大シリーズをコンスタントに発表し続け、いずれも大ヒットを記録。大藪春彦賞候補作『千里眼』シリーズは累計628万部を超える人気作となった。
2014年「万能鑑定士Q」シリーズでBOOK☆WALKER文芸賞を受賞。
2019年、『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』が全米で翻訳出版される。近著に『探偵の探偵』『水鏡推理』『ジェームズ・ボンドは来ない』『黄砂の籠城』『ヒトラーの試写室』「グアムの探偵」「高校事変」シリーズなどがある。

松岡 圭祐の作品紹介

■高校事変シリーズ
■ecriture 新人作家・杉浦李奈の推論シリーズ
■グアムの探偵シリーズ
■探偵の鑑定シリーズ
■水鏡推理シリーズ
■探偵の探偵シリーズ
■特等添乗員αシリーズ
■万能鑑定士Qシリーズ
■新・千里眼シリーズ
■蒼い瞳とニュアージュリーズ
■マジシャンシリーズ
■千里眼シリーズ
■催眠シリーズ

『水の通う回路 完全版 上(2009/9/20)
『被疑者04の神託 煙 完全版(2009/8/22)
『ミッキーマウスの憂鬱(2008/8/28)
『天使の守護のアリエッタ(2006/8/1)
『霊柩車No.4(2006/10/25)
『人造人間キカイダー The Novel(2013/7/25)
『ジェームズ・ボンドは来ない』(2015/11/25)
『黄砂の籠城 上』(2017/4/14)
『シャーロック・ホームズ対伊藤博文』(2017/6/15)
『八月十五日に吹く風』(2017/8/9)
『生きている理由』(2017/10/13)
『ヒトラーの試写室』(2017/12/21)
『黄砂の進撃』(2018/3/15)
『義和団の乱 黄砂の籠城・進撃 総集編 』(2018/3/17)
『瑕疵借り』(2018/5/15)
出身成分』(2022/1/21)
『ミッキーマウスの憂鬱ふたたび』(2021/9/29)
『アルセーヌ・ルパン対明智小五郎 黄金仮面の真実』(2021/11/20)
JK』(2022/5/24)
ウクライナにいたら戦争が始まった』(2022/8/3)

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